明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

一日  


女将さんに焼酎を注いでもらうと焼酎グラスが表面張力で膨らんだ状態までためてからジョッキに注いでくれる。これは素人がやろうとすると、こぼすことを恐れて上手くいかない。私は陶芸家を目指していたころ、様々なものをこぼさないようしていたせいか、上手く注げる方である。しかし女将さんは目が悪い。なのに何故あの芸当が可能なのか。ひょっとしたら、焼酎に当たる光たけを照準にしているのではないか。店内の電灯がまだ点かない時刻。手元は暗く焼酎の表面はみえない状態で注いだことがある。焼酎にあたる光の形によって、張力で膨らむほど入ったかどうか判った。対象部分に光が2点あることによって、グラスが水平を保っているかどうかも判断できた。ということかもしれない。いずれにしてもこの見事な手技をようやく撮影できた。さらに炭酸二本を同時に注ぐ姿も撮影。データを現像してみたら、背後で嬉しそうに拍手している人がいた。よくここまで回復された、と私も同様の気持ちである。ただそれも時間的にはまだ短く、満杯のお客を相手するには、まだ当分かかるだろう。もともと写真嫌いな女将さん。当初レンズを向けるとけげんな顔をしていたが、ここの所はまったく意識しない、良い表情が撮れている。写真の主役は被写体であろう、と改めて。

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