私も蛙如きに何をびびってるという話だが、気持ち悪いのは仕方がない。中国の故事に登場する三本脚のカエルの詳細が判明するにつけさらに悩む。 拙著『貝の穴に河童の居る事』で原作者の泉鏡花の独特の表現にビジュアル化に手こずり、極端な潔癖症でばい菌恐怖症である鏡花にお返ししてやろうと、河童の三郎に鏡花が恐れる蠅を三匹止まらせ、ついでに鼻水まで垂らしてやった。 それはともかく。舞台となった神社が勝浦にあったこともあり、親戚の南房総市の別荘を拠点に背景を撮影した。海辺と山深い雰囲気が極近場で撮影が出来ると踏んだ訳だが、ある滝で撮影していて、一匹のガマガエルを見付けた。私と違って子供の頃蛙に悪さしなかったのか、一緒に行った友人は平気で触っていたが、そのガマガエルが、身体の両サイドに、毒々しい太い朱色のラインがあった。しかし今、ガマガエルだヒキガエルだ、と検索しても、そんなカエルがまったく出て来ないのが不思議である。またある時。「カワウソだ!」の声にベランダを見ると、1メートくらいの物がパッと現れ消えた。ベランダにはアマガエルが沢山いたから、それでも食べようとしていたのか。私が見たのは1秒も無かったろう。確かに黒っぽい姿はカワウソそのものであったが、東京に帰って一週間程で、ニホンカワウソ絶滅の報を耳にした。まあそんなこともあるだろう、という程度の話ではある。