背景でも、滝があったり奇岩がそそり立つ『虎渓三笑図』より、単なる洞窟である『慧可断臂図』をまずやってみた。元々雪舟の断臂図を見て刺激されたのだが、雪舟も中国に似たような構図の、腕こそ切断していないが、洞窟内の達磨大師に向かい、大師は背を向けているのは同様で、二人が真横に並行に並んでいるのも一緒である。しかし立体として作っている私は、二人登場させていながら真横に並行に並んでいる、なんていうのは耐えられない。あくまで達磨大師に教えを乞い、覚悟を示すために己の左腕を切り落とした慧可を手前に前を向かせ、達磨にはその覚悟に気付いてもらい振り向かせた。これはジャズシリーズの時代から、たまに取り入れて来たマックス・ローチの『ウイ・インシスト』のレコードジャケットの影響である。『貝の穴に河童の居る事』の裏表紙でも、河童に振り向かせている。 達磨大師は、ちょっと平らになった岩の上に座っているように、なんとか見えるのではないか。