明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



しばらく休んでいた松尾芭蕉だが、首が出来ていて、そこから乾燥までが、一番面白く、また早い。足も隠れているし手も殆ど出さなければその分また完成は早いだろう。 さらに放ったらかしになっていたのが葛飾北斎である。背景に考えていた場所が閉鎖中で北斎の新作写真出品は断念となったせいでやる気が失せていたが、人形だけでも新作を出品しよう、と明日より再開する。 北斎は画室で絵を描いているところを思いついて一年は経っているだろう。当初窓から富士山が見える、というのを考えていたが、どうもつまらない。撮影すらしてない作品の構想を披露するのもおしゃべりが過ぎるが、どうせ結果は想像と違うだろうからひとつ披露してみよう。 前のめりになり、何やら目の前にある物を凝視している北斎。ただ何を描いているかは障子に隠れているが、蠟燭の灯りに照らされその影が障子に映り、何やらただならぬ事が繰り広げられてる気配である。妖し気な声も漏れ聴こえる。障子からはみ出して見えるのは、女の白い脛。その硬直してそり返った足に目を凝らしてみると、そこには蛸脚がしっかり絡み食い込んでいるではないか。椿説弓張月までこなしてしまうと、私の頭程度に浮かぶ物はすべて画にできるだろう。 考えて見ると、三島以外の作品は13点である。すでに蛸絡みの作品が2点ある。3点では多過ぎである。感心されるくらいなら呆れられた方がマシだなんていっているからこんなことになる。明日は芭蕉も乾燥に入り、北斎の仕上げ、太宰の履く下駄を作らなければならない。






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