96年ジャズやブルースをモチーフにした写真を発表した時に、被写体が目の前に並んでいるのに、写真作品は人間の実写と勘違いされた。そんなつもりで作った訳ではない。以来、廃れた古典技法を手がけてみたり、まことを写す、という写真に、長い間あらがい続けることになった。 そして長い旅路の果てに、写真から陰影を廃したことにより、夜の夢こそまことな私もついに終着点に至った。そう思ってきた。ところが陰影が描かれることがなかった鎌倉、室町時代がモチーフならば、むしろ陰影を与えるべきではないか?これがここ数日の話である。 待てよ?写真など存在しない鎌倉、室町時代の人物であれば、実写と間違われたところで問題などなく、むしろあり得ない分面白い、という話ではないか?熱いお茶でも飲んで一旦落ち着くことにしよう。