達磨大師を包む法衣はほとんど指で制作した。なので蘭渓道隆の仕上げもそうしてみた。そう違いが出る訳ではないけれど。ちょっとでも良い思いをすれば試していく。久しぶりに目の前の円覚寺開山、無学祖元の仕上げ。こちら円覚寺の木像を元にした。頂相彫刻の傑作といわれるだけある。作りたかったのは、ただの座像ではなく、来日前、蒙古兵に刀を向けられながら微動だにせず、という来日前の名場面が、おそらく可視化されていないことだった。円覚寺は元寇との戦いによる敵味方双方犠牲者を祀る目的で建造され、無学祖元は開山として招かれることになる。しかしなんだか良く判らない蒙古兵を作ることになるとは思わなかった。蘭渓道隆は肖像を正面を向かせることに意義があるが、人物により作りどころは様々である。頂相あるいは頂相彫刻は、縁ある特定の寺に収蔵される物で、今に至れば、手付かずのモチーフが無尽蔵にある。肝心なのは仏像と違い、あくまで人間を描きたいというのは相変わらずである。
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