明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



深川図書館にハンコを持って特別貸し出しの手続きに行く。ここへ来るたび、私より年下のはずの松尾芭蕉の老人像の前を通り、ムカツクわけである。今日は“つけよう火災報知機”というタスキをかけていた。  借りられるのは館長の許可をもらって、週末にはということであった。前回来た時、どういう手続きすればいいのか職員に訊いたのに、何も答えようとしないから日にちが経ってしまった。たまたま知り合いの江東区の職員が電話で押してくれたから、特別貸し出しという方法がある、といことが判ったのだが、それだって随分経って返事が着た。 せっかくきたので閲覧室で、Dの写真帖と二度目の対面。今日は首を持ってきている。手刷りのコロタイプは諧調も表現されていて、立体感が把握できる。比べてみたら、幸い修正は思ったほどせずに済むことが判った。この写真帖は当時、方々からかき集めた肖像写真を400カット近く収めた決定版である。中でも真横を向いたカットは1カットだけであった。これで正確な鼻の形と額のカーブが判る。 Dには、すでにどんな格好をさせるか決めている。特徴を表現でき、本来神経を使わなければならない、歴史的決まりごとに触れないで済む、という実に名案を思いついた。この決まりごとのせいで早々に資料を読み漁り、知れば知るほど悩んでいたのである。自分が提案したので、人のせいにもできないし。しかしこれで写真帖はウチに来るし、気分も晴れ々である。 子供の頃、泣いていた子が泣き止んで立ち直ると、“さっき泣いたカラスが、もう笑った♪”と必ずいわれたものである。

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一日  


小津安二郎像収蔵の件で、古石場文化センターに行くと、小津の展示をしていて、例の小津の帽子の実物を展示していた。汗を抑えるためのもので、沢山持っていたそうだが、未だにポマードの匂いがするらしい。深川図書館の貸し出し不可の資料に関して、職員のNさんに聞いて貰っていたのだが、手続きさえすれば、貸し出し許可が出そうだという。もう首が完成だ、という今頃になって、という話である。某大学から借りられたのは、結局オリジナルではなく、縮小版で、写真は小さく、ディテールも再現されていなかった。それにしても首の完成を目の前にして、新資料が出てくるというのは、複雑な気分である。おかげで完成直前のはずが台無しに、ということが充分あり得るからである。とはいえ耳の形など、何を見ても、よく判らなかったので有り難い。
帰りに蕎麦屋に寄り、蕎麦焼酎の蕎麦湯割で温まりながら、出掛けに郵便受けに届いていた本と、図書館で借りた本を読む。Dの制作のため、さる業界のことは興味深々で、何を読んでも面白い。  作るとなれば、蛇蝎の如くに嫌っていた人物でも、良い所が見えてくるし、なかなか面白いじゃないか、と熱中もするが、完成してしまうと『そうはいっても、心中してテメエだけが助かるなんて、やっぱり嫌な野郎ではある』と醒めたりする。制作中のDは、私が気になっていて提案した人物なので、そんなことは無いだろう。だいたいそんなことになったら、壁にダラリと下った、D直筆の滝の掛け軸が哀しいことになる。

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首がおおよそ出来上がる。背景の撮影場所は決まっているが、どんな格好をさせて配するかが、なかなか決まらない。特殊なコスチュームの人物なのだが、そこをいいかげんに作るわけにはいかず、調べる時間が必要なので、制作開始を早めた。 始めに思いついたのは、Dが某所の屋根の上に上って大暴れしている所だった。これは面白い、と思っていたのだが、表紙は特集場所を背景に、主役を見せ、なおかつ文字を置くスペースがないといけない。そう考えると、少々無理があるように思われたし、こちらは面白いと思っても、関係各位にけしからん、と怒られるかもしれない。感心されるくらいなら呆れられたい私としては、悩みどころである。 首をポケットにK本に行き、常連に披露。「ほんとに長い顔だ」。明治座の舞台が終ったらしい今拓也さんも久しぶりに。そういえば以前TVで、このDの後援者をやってたではないですか。いつもよりホッピーの瓶を並べている、タクシー運転手のMさんに摑まり、再婚して十数年のかみさんののろけを聞かされる。機嫌がいいと思ったら、娘が都立高に受かったという。それじゃお祝いじゃないですか。こんなところで飲んでないで、と追い出す。その後みんなでT屋へ流れる。私は本日二度目である。主人のHさんにDの首を見せると、「朝見たじゃん」「良く見ろよ、朝とは完成度が全然違うだろ」。私も見せる相手を選ばなければいけない。 みんなが帰った後、コピーライターのKさんと私で客は二人。例によってKさんとHさんが明け方近所の川で、川鵜が極太のウナギを丸呑みしたのを見た、という話になる。だから前にもいったけどさ、私だけじゃなくて、他の人が居る時に、この話をしてみろっていってんだよ。酔っ払いのそんな話だれが信じるかよ。

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