大江健三郎さん:憲法語る 中高生と討論も 上京で講演、1000人耳傾ける /
京都 憲法や人権について考える集いが3日、上京区の同志社大寒梅館で開かれた。ノーベル賞作家の大江健三郎さんが、憲法や教育基本法の改正問題などについて「私らの憲法―本当に自分のものにするために」と題して講演し、現行憲法の価値について訴え、中高生らとも対話した。【小川信】
集いは京都弁護士会(浅岡美恵会長)主催で、36回目の今回のテーマは「つなぐ―次世代へのメッセージ」。約1000人が詰めかけた。 教育基本法(教基法)改正案が衆院を通過し、参院でも成立が近いとされる状況をふまえ、大江さんは「教基法は憲法にのっとって作られており、憲法改正の動きが強まる」と分析。
「議会レベルでは(護憲派は)敗れると思うが、(改憲手続きを定める)国民投票でひっくり返せると思う」として、反対活動を続ける意向を示した。
講演後、同会が府内在住・在学の中高生から募集した憲法・人権に関する作文で優秀作を書いた男女ら10人との討論も。大江さんは作文を紹介しながら議論した。 「憲法に法の下の平等が書かれているのに差別が横行している」という意見に対し、「条文は大変いいのに、現代は憲法が生きていない」と答え、「『勝ち組・負け組』に代表される格差は、金もうけなど一つの概念で基準を作って順位づけすることで差別を生む。上下関係でなく、同じ平面にあって違うものととらえ、それぞれの役割を得て活動することで社会が明るくなる」と訴えた。
毎日新聞12月4日朝刊