不法滞在に時効はないのか

2009-03-10 00:30:52 | Weblog

 埼玉県蕨市に住むカルデロン・アラン夫妻(夫は36歳の若さ)が15年以上前日本に不法入国、解体工事の現場等で働き、3年前に不法入国が発覚、国外退去の処分を受けたが、来日後に生まれ、現在中学1年生・13歳ののり子嬢(記事は「のり子さん」と書いてあるが、よそよそしい。友達は彼女をどんな愛称で呼んでいるのだろうか。「のりっぺ」、「のりっぴー」、あるいはお互いに呼び捨てで、「のりこぉー」なのだろうか)が日本語しか話せず、フィリピンに帰国しても生活できない等の理由で日本国内に在留する特別許可を求めたところ、今年(09年)1月、1ヶ月の滞在のみ認める決定が下され、その期限である2月13日に東京入国管理局に出頭、娘1人の在留は認めても、家族そろっての在留は認めないと伝えられたという。

 NHKインターネット記事を殆どなぞって書いたが、昨9日のNHKニュースが同じ9日の日に入国管理局から帰国を求められていた両親のうち父親1人が身柄を収容されたと伝えていた。

 家族の弁護士によると、今月13日までに両親、または家族全員の帰国を決断しなければ、国外退去に向けて母親とのり子嬢の2人も収容すると通告してきたという。

 民族的な使命感に燃えて水際で我が日本の単一民族性を維持し、その民族的優越性の数的優位性を絶対死守するために外国人を止むを得ず以外は入れたくない法務省入国管理局としたら国家に殉ずるための当然な措置であろう。

 だが、自国文化の創造的発展・躍動性の確保は他国文化との摩擦や凌ぎ合いの中から生まれてくるものだが、文化とはそれぞれの国の人間が血として持っているものだから、当然なこととして様々な外国の様々な外国人との触れ合いが、文化の創造的発展・躍動性確保の必須条件となる。

 我が国の日本民族優越論者たちはそれを遮断して、歴史に記録されている現在に役立たない過去の日本の文化の優越性を言い立てて、日本民族優越性の証明としている。現在に役立たないからこそ、「政治とカネ」だ、官僚の天下りだ、政治家の親分子分の関係だ、裏ガネだといった劣る文化の蔓延・跳梁跋扈を許していることとなっているのだろう。

 日本社会を逃れてアメリカに渡った日本人学者がその地の文化の刺激を受けて自らの血としている文化的創造性を発展・躍動させて優秀な研究を行い、ノーベル賞を取るといった事態も生じる。

 日本に残った学者の中でも優秀な研究を行ってノーベル賞を獲得する研究者もいるにはいるが、優秀な研究を成し遂げるその多くが暗記教育から外れた者であろう。暗記教育から外れるとは、日本社会の活動原理となっている権威主義性を文化とすること、自らの血とすることへの拒絶を意味する。

 知識であれ何であれ、暗記教育と同様に権威主義的に上の知識に従っていたのでは自らの知識・創造性を自分の手で抑制・去勢することとなって、学問・研究の発展的成果は望みようがない。発展させるためには暗記教育から外れることが第一条件となる。

 言葉を変えて言うなら、普通の日本人とはならないということである。そのためにこそ、外国人の持つ文化、血が必要となる。

 のり子嬢(のりっぴー?、それとものりっぺ?・・・)とこれまで触れ合い、これからも触れ合うことになる日本人の友達たちは彼女の不法滞在者の子として生まれ、13歳にまで成長した一般の日本人が持たない特殊な文化・環境の刺激を受けて自分たちが血としている一般的日本人の文化が意識しないままに微妙に変化を見る。素晴らしいことではないだろうか。

 彼女のまだ若い父母についても同じことが言える。父親の方は15年以上も不法滞在者として日本に暮らしていた。友人として触れ合う日本人がそのことに刺激的な何かを感じないとしたら、日本人同士の友人間では得難い何らかの文化性を失う。

 いや日本人が血として持っている日本の文化の創造的発展・躍動性の確保のためには一人二人の外国人の入国では不足である。多くの外国人が入ってくることによって「一文化、一文明、一民族、一言語の国は日本の他にはない」といった麻生太郎名言の一つである独善性は通用しなくなって、生活そのものとは無縁の歴史上の文化にすがって日本民族の優越性を言い立てる蒙昧から目を醒ますことができるようになる。
 
 ミャンマーの軍事政権の迫害を逃れて日本にやってきて難民としての受け入れを求めているミャンマー人、あるいは中国の官憲から政治犯として追われて日本にやってきたチベット人等も大歓迎で受け容れるべきだろう。
 
 例え出稼ぎで日本に不法滞在した外国人であっても、10年とか15年とかの時効を設けて、時効後出頭した者は日本に特別滞在を許可し、その後の生活態度を審査して日本国籍を与えるといった方法は採用できないものだろうか。

 殺人などの凶悪犯にとっては時効はあくまでも逮捕されない幸運に恵まれた結果獲得する法的措置だが、不法入国者に時効を設けた場合、時効を目的として不法入国するケースが増えるという懸念が生じて受け入れ難いという意見が大勢を占めるに違いない。

 だが、不法入国者が跡を絶たず、少なくない不法滞在者が生活に追い詰められて犯罪を犯す現状を考えた場合、時効を目的とした不法入国者は犯罪を犯して逮捕された場合、当初の目的が即破綻することになるから、自ら犯罪を犯さない生活を自らに強いることになるだろう。

 不法入国が同じ跡を絶たないなら、時効を目的とした不法入国を逆に誘導して、不法入国者の犯罪抑止に役立てたらどうだろうか。

 もし犯罪をそれが微罪であっても犯したなら、逮捕した場合、直ちに強制送還すればいい。彼らは彼らの目的を自分の手で壊すことになる。

 また金持ちニッポンを狙って犯罪が目的で入国する者もいるが、彼らはどこでどう指紋を採取されているか分からないから、時効を目的とはしまい。時効の有無に関係なしに不法入国を果たすだろう。

 殺人に時効は反対だが、不法滞在には時効を設けるべきだと思うが、独善的日本単一民族主義者には通用しない“戯言”なのだろうか。

 参考引用――
 

≪フィリピン人家族 父親を収容≫NHK/09年3月9日 14時13分)

 不法滞在のまま長年日本で暮らし、中学生の娘が日本語しか話せないなどとしてフィリピン人の家族3人が国内にとどまれるよう特別許可を求めていた問題で、入国管理局から帰国を求められていた両親のうち父親1人が9日、身柄を収容されました。母親は収容されませんでしたが、今月13日までに帰国を決断するよう通告されたということです。

 この問題は、不法滞在のまま15年以上日本で暮らしてきた埼玉県蕨市のカルデロン・アランさん(36)夫妻が、中学1年生ののり子さん(13)は日本語しか話せないとして家族全員が国内に在留できる特別許可を求めているものです。東京入国管理局は、娘1人を残して帰国するか、家族3人全員で帰国するか、9日までに決断しなければ国外退去に向けて身柄を収容すると通告していたため、両親が9日に出頭したところ、父親のアランさん1人が身柄を収容されたということです。

 また、母親のサラさん(38)は収容されませんでしたが、家族の弁護士によりますと、今月13日までに両親、または家族全員の帰国を決断しなければ、国外退去に向けてサラさんとのり子さんの2人も収容すると通告されたということです。

コメント (6)
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