誰もが考えることだと思うが、現実には順序が逆に進んでいる。菅仮免が創造的判断能力、あるいは創造的計画性を欠いているからだろうか。
《再生エネルギー 価格など検討へ》(NHK NEWS WEB/2011年7月15日 5時43分)
太陽光や風力などの自然エネルギー電力を電力会社に買い取ることを義務づける再生エネルギー特別措置法案(再生可能エネルギー買い取り法案) の国会審議は7月14日(2011年)から始まっている。
法案の目的は電力会社への買い取り義務づけによって火力や原子力等と比べて割高な自然エネルギー発電の採算を保証し、普及を図ることにある。これには地球温暖化ガス削減の目的も含まれている。
法案成立後に政府が方針としている制度スタート来年度の買い取り予定価格は――
住宅用の太陽光発電の場合 ――1キロワットアワー当たり30円台後半
その他の自然エネルギーの場合――1キロワットアワー当たり20円近くの水準
検討買い取り期間――
住宅用の太陽光発電の場合 ――10年
その他の自然エネルギーの場合――15年
電力会社の買い取り費用は電気料金に上乗せされる。当然、企業が反対の声を上げた。電力料金の上昇分、製品単価に跳ね返ることになる。日本製品の国際競争力弱体化の要因につながりかねないし、国内需要にまでブレーキをかけかねない。
消費を控える誘因の可能性である。
この再生可能エネルギー特別措置法案は現在国会で修正議論が行われている。大企業の反対が功を奏したのか、企業の強い味方経産省の抵抗が実を結んだのか、背後で描いたシナリオ通りの筋書きなのかどうか分からないが、7月14日(2011年)衆院本会議の海江田経産相の答弁。
海江田経産相「(転嫁は)1キロワット時当たり0・5円(標準家庭で月額150円の負担増に相当)を超えないように運用する」(毎日jp)
この案が有力となっているという。
1キロワット時当たり0・5円で標準家庭の上乗せ分が月額150円ということなら、当初の政府案である太陽光とその他の自然エネルギーの買い取り価格の平均金額を25円と少なく見積もって計算したとしても、その300倍、標準家庭で7500円の値上げ計算となっていたことになる。
大口需要家である大企業は相当な負担となる値上げとなったはずである。
但し1キロワット時当たり0・5円の上乗せだと、経産省の試算では総発電量に占める自然エネルギーの割合は2020年までに4~5%しか増えないそうで、この増加率で全発電量の13%程度の導入量ということである。
菅仮免は5月(2011年)のフランスで開催されたG8サミットで、「自然エネルギーによる発電の比率を2020年代のできるだけ早い時期に20%にする」と世界公約しているが、追いつかない数字となる。
追いつかないのが相場となっている菅仮免の公約でもある。
太陽光の発電コストは1キロワット時当たり49円、風力は10~14円、液化天然ガス(LNG)火力が7~8円だそうだが、1キロワット時当たり0・5円の買取り価格ではそれが売電目的の事業なら採算が合わないことになるから、当然の普及率ということになる。
今後液化天然ガスが需要と供給の関係で現在以上に高騰した場合は風力の発電コストと逆転する可能性は否定できないが、太陽光発電の普及が買い取り価格の小額によって全体的な足を引っ張ることになるということなのだろう。
日本の電気料金がアメリカや韓国と比較して2倍程度高いのは電力会社の一地域一社独占体制であることと発送電一体が原因だと言われている。
このことに関して当ブログ記事――《菅仮免の政治家は単に理想を話せば済むわけではない相変わらず単細胞な再生可能エネルギー全面化論 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之
》に取上げた。
だったら、なぜ最初に電力会社一地域一社独占体制廃止と発送電分離の法律の作成を先行させて電力市場に競争原理を取り入れ、電力料金を下げてから、自然エネルギー買取り法を成立させる、逆の手順を踏まないのだろうか。
現在でさえここのところの液化天然ガスや石油の輸入価格高騰による電力料金の値上げに低所得層は苦しい家計を強いられている。買い取り法案で例え1キロワット時0.5円、標準家庭以下でそれが月額100円の値上げてあっても、低所得層の家計をなお一層窮屈にすることになる。
先ずは本体の電気料金を下げる努力が先であるように思えてならない。
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