共産党の赤嶺政賢議員が一昨日(2011年8月8日)衆院予算委で来年10月以降普天間基地に配備予定のオスプレについて追及した。
その質問の前に今回の沖縄の台風で糸満市の米須(こめす)土地改良区が地下ダムからの水で最大2メートルの冠水を受け、サトウキビやゴーヤハーブなどが大被害を受けた問題を取上げて、地下ダムの着工以来排水が悪くなった、大雨のたびに繰返される被害で人災だ、調査の上、補償問題等解決して欲しいと大畑国交相に要請した。
赤嶺議員「北沢防衛大臣は6月13日沖縄県を訪問し、米軍の垂直離着陸機オスプレを来年後半から普天間飛行上に配備する方針を伝えました。オスプレイは今米軍が従来のヘリの後継機として配備を進めている航空機であります。
通常のヘリのように飛行できるだけでなく、左右に取り付けられた回転翌を前方に傾けることによって、固定翼機のように飛行することもできると、このようにされています。
1981年に計画が始まって以来、開発過程で4回の墜落事故を引き起こし、30人の犠牲者を出しました。必要な量の試験飛行も行われず、飛行データーの改竄まで行われていたことが明らかになって、います。その上、高額な開発費で計画は何度も頓挫しかかりました。2005年にようやく量産開始に漕ぎつけたというのが経過であります。
先ず総理大臣に聞きますが、オスプレイが多くの問題を抱えてきたいわくつきの航空機であることをご存知でしょうか」
菅仮免「まあ、あの、おー、オスプレイに関して、えー、従来、色々な議論があったということは、あのー、多少は耳にしております。
今回、イー、そうした中で、改めて、えー、安全性や騒音等に対しても、おー、きちっと、オ、地元に、えー、説明をー、するということも含めて、えー、配備されるという発表が、あー、あったと、このように承知しています」
「配備されるという発表が、あー、あった」とは他人事に聞こえる。「発表」に対して、「色々な議論があった」中に含まれている危険性は解決できたとする言及は一切ないから、単に発表を発表のままに受け止めただけのことであることを証明した発言となっている。
この程度の「国民の安全・安心」意識であることの暴露でもあるはずだ。
このことは「まあ、あの、おー、オスプレイに関して、えー、従来、色々な議論があったということは、あのー、多少は耳にしております」の、「多少」と言う言葉に如実に現れている。
国民の生命と財産を預かる国政の責任者であり、国民の生命に影響を与えるかもしれない航空機の配備問題である以上、「多少」の知識、「多少」の情報授受であってはならないはずだが、「多少」で済ませているところに「国民の安全・安心」意識の程度を知ることができる。
この責任感の希薄さが赤嶺議員と北沢防衛大臣の遣り取りが繰返されると居眠りを仕向けることになったのだろう。NHKの中継を視聴した誰もが認めることができる。
赤嶺議員「あのー、地元への説明っていうのが、これまた酷いものなんですね。防衛大臣はオスプレイの安全性について開発段階で事故があったが、現在は米軍の主力となり、心配はない。このように述べておられます。2005年に量産開始を決定して以降は、事故は殆んど起きていないかのような説明でありますが、本当に事故は起きていないんでしょうか。
防衛省が把握しているのは2005年以降、量産体勢に入って以降の主なオスプレイに関わる事故の事例を明らかにしていただきたいと思います」
北沢防衛相「あのー、2005年以降の、おー、事故について極めて低いわけでありますけれども、数機であったと記憶しておりますが、今、質問はご提出の中には取上げておりませんから、今すぐ取上げさせて、このー、質疑の中でお答えしたいと思います」
実験段階から正式配備決定後に至る事故例の経緯とその把握は欠かせないはずだが、把握もしていない状態で7月8日の記者会見で、「詳細は承知していないが、問題はクリアされていると思う」と発言する責任感を見せている。
《オスプレイ:安全性「問題はクリア」 防衛相が見解/沖縄》(毎日jp/2011年7月10日)
米国防総省付属機関の専門家が2009年6月、下院公聴会で安全性に重大な問題があると指摘し、「(オスプレイは)兵士の命を軽視している」と証言していたことに関しての北沢防衛相の見解である。
記事は書いている。〈米下院の公聴会で証言したのは、国防分析研究所(IDA)で1992年6月から2009年3月まで17年間オスプレイの技術評価を担当した元主任分析官レックス・リボロ氏。「重要な問題点」として「オートローテーション(自動回転)機能の欠如」を挙げ「飛行中にエンジンが停止した場合の緊急着陸機能が欠如している。人命軽視の軍用機だ」と証言した。(琉球新報)〉――
赤嶺議員が立ち上がって発言しかかると、事務官が資料を届ける。
北沢防衛相「お答え申し上げます。えーと、2010年、えー、4月、訓練用のオスプレイがアフガニスタン南部に於いて墜落し、4名が死亡いたしました。
同年12月米軍の事故調査委員会は事故原因を明確にできなかった。敵の攻撃による墜落の可能性は否定されたが、気象状況、パイロットの操縦ミス等の人的要因、機体不良、その他の可能性があり、明確にできなかった旨の発表が、あー、ございました。以上です」
たった1年4ヶ月前の2010年4月の墜落事故でありながら、その情報さえ自ら把握せずにオスプレイは安全だと説明しようとしている。
もし事故が操縦ミスであったなら、操縦士の能力の問題となるが、原因を特定することができない間は他の要因も疑って、機体点検やどのような気象状況にも耐え得る耐性テストを行って、あらゆる危険性の排除が確認できた時点で検証内容を公表し、納得を得るべきで、それが検証途中であるということなら、その旨の了承を取るべきだが、そういったことの発言もない。
赤嶺議員「この間のアフガンの事故だけを取上げられました。私も2005年以降のオスプレイの事故について報道記事をすべて追っかけて見ました。
2005年11月にはカリフォルニア州の空軍基地に向けて飛行中、雷雨に遭い、雲の中を通過した際、エンジン内の凍結が発生し、緊急着陸した。
さらに2006年3月にはノースカロライナ州のニューリバー基地で、整備中に突然離陸し、地上に落下事故を起こした。
2007年10月にはイラクに向けて飛行中に機材の故障が置き、隣国ヨルダンに不時着した。
そして先程の2010年4月にはアフガニスタンで戦闘地域で初めての墜落事故を起こし、4人の犠牲者を出した。
えー、ざっと見ただけでも、こういう事故が繰返されております。防衛大臣、こういう事故が繰返し起こっている。そういうこと、どう認識しておられますか」
北沢防衛相「今、事例を述べられて繰り返しと、こういうふうに言われましたが、米軍の、おー、回転翼機による回数というものは膨大なものでございまして、そういう中から、米軍が調査したもの、それをまたさらにやられ、防衛省が検証した中では事故は、あのー、他の機種に比べて最も低いというふうに認識しております」
事故は他の機種と比較して最も少ないという基準で配備決定されたならたまらない。配備決定の根拠とはならないはずだ。敵の攻撃を受けたのではない、通常の飛行では一度の墜落も許されない性能の確保を前提とし、専門家の誰からもその保証を得て初めて配備の根拠を備えるはずだからだ。
北沢にはそういった認識がない。
赤嶺議員「この、事故率が低いとおっしゃいましたけども、開発途中に、えー、3回の、オスプレイの事故は計算に入れていないわけですね。40人の方が死亡しました。これを入れないで、事故率は低いと言っている。
先程大臣自らおっしゃった、アフガニスタンでの墜落事故も、これも海兵隊じゃない、空軍のものだと言って、えー、空軍のオスプレイだと言って、事故率に計算に入れておりません。
先程事故報告書を、事故原因が特定できないとこういう話がありました。私、調べてみたんです。2010年12月にアフガニスタンの墜落事故の事故調査報告書が公表されております。事故原因は特定できなかったものの、事故につながった要因の一つにエンジン出力の低下を挙げております。
つまりオスプレイの機体そのものが持つ特性が事故につながった可能性も十分考えられると思います。これでも事故率は低いんですか。なぜ起きた事故を除外して事故率は低い、安全だと、こういうことをおっしゃるんですか」
北沢防衛相「エー、先ずですね、開発途中の事故を、おー、一般的な運用の中に入れて、事故率を計算するちゅうのは、これは、あのー、考え方かもしれませんが、私は正確なものではないと。
開発途中のいくつかの試行錯誤の中で改良してきて、運用ができるようになって、あのー、大量生産を政府が許可したと。そういう経緯から見ても、それを開発途中、いわゆる研究段階を含めてのものを入れると、むしろ誤解を招くだろうというふうに思っております。
そして今ご指摘のアフガンの問題は、あー、先程申し上げましたように、えー、特定されていない、原因がこういうことであります。それから、空軍のものを入れていないじゃないかと、こういう話ですが、あくまでも沖縄の海兵隊に配備されると、いう状況の中で、あのー、それを申し上げてきたはずです」
「開発途中の事故」が実際運用局面に於いてもつながっている可能性の有無が問題となるはずだが、そういった認識がない。政治の公約と同じである。選挙中はバラ色の約束と思わせることができても、実際の政治運用場面に於いて財源がないだのと生かすことができなければ、バラ色は色褪せ、カラ約束で終わる。
配備後の事故は、それが一度や二度でなければ、大量生産を許可した根拠となる優れた性能を実際運用局面に於いて生かすことができていない証明であって、開発途中、あるいは研究段階の事故が開発途中、あるいは研究段階で終わっていないこと、要するに解決できていないことの証明としかならない。
また空軍の事故を事故例に入れていないのは沖縄の海兵隊に配備されるオスプレイだからと意味不明なことを言っているが、ある旅客機が外国で重大な事故、あるいは重大な事故につながりかねない事故を起こした場合でも、国内で使用している同種の旅客機のすべての点検を命じる。決して外国で起こした事故だから、国内の航空機の点検は必要はないとは言わない。
北沢防衛相は最初に配備ありで、現実に事故を起こしている危険性に対する認識を殆んど欠いている。この欠如は「国民の安心・安全」意識の欠如に対応する欠如であろう。
赤嶺議員「これで事故率が低いという説明に、えー、してですね、県民が納得できませんよ。
先程のアフガンの調査報告の問題、繰返し防衛大臣は取上げられておりますけれどもね、この事故調査過程でも、報告書の改竄が、改竄の危険が問題になっているんです。エンジンの問題が主な事故原因だとした事故調査委員会の調査委員長が報告書を纏めた後に上官から乗組員の過ちで事故が起きたのだと、報告書を書き直すよう圧力を受けています。
委員長は応じず、結果的にはエンジン出力の低下が明記されることになりました。しかし、報告書の公表にあわせ、調査結果を否定する上官の見解も併せて公表されることになったわけであります。
オスプレイの安全性を巡って、議論の再燃されるのを恐れた可能性が極めて高いと言わなければなりません。これがアフガニスタンで墜落したオスプレイの事故調査報告書の経緯であります。低く見せよう、安全に見せよう、といっても説得力を持つものではありません。
で、オスプレイはですね、事故が繰返されてきただけではありません。致命的な構造上の欠陥が言われてきました。オートローテーション機能の欠如であります。オートローテーションとはすべてのヘリコプターについている機能でありますが、ヘリコプターが飛行中にエンジンが停止しても、機体が降下するときの空気の流れから揚力を得て、安全に着陸する機能のことであります。
ところがオスプレイは、独自の機能を持つことから、開発過程でこの機能を持たせることができなかったと、指摘されております。
防衛大臣に聞きますけども、オートローテーションの機能の欠如という問題は解決されたんですか。解決されたのであれば、いつどのような対策が取られましたか」
北沢防衛相「あのー、今お話の、あのー、この安全性についてですね、日本政府が、あるいは防衛省がですね、如何にも米軍が偽りを以って、えー、情報を提供して、それを騙(かた)っているというような論調で申し上げ、あのー、おっしゃっておられますが、我々にも、おー、沖縄の県民のみなさん、あるいは米軍の生命に関わる、そういう問題について色々な検証を疎かにするなんていうことは決してないわけでありまして、もし本当にですね、細かいことを列挙されて、米軍の言っていること、米側の実績違うと、こういうことを指摘されるんなら、具体的な議論を是非していただきたいと。
そこで、沖縄知事にはですね、29項目に亘るものを出してこられました。私共は、あー、真摯に受け止めて、えー、米側に対して、これを、おー、説明を求めて、えー、参議院の委員会でもご答弁申し上げましたけども、おー、米軍の、おー、回答書がさみだれ的に出てきておりますんで、その辺を、中間報告するかどうかということを今取り纏めをしながら、今検討をしているところでありまして、あのー、委員がこの問題について真剣にご懸念を持っていることは大変重要なことだと思いますが、いたずらに、そのー、懸念を増幅するということのないような、実質的な議論を是非お願いしたいと、このように思っているところであります。
それから、あのー、オートローテーションについてはですね、それは今お話がありましたように、あの、回転翼航空機が運動中、その揚力を受け持つ回転翼が完全に空力のみによって、えー、駆動される飛行状態というものですと、いうふうに規定されておりますが、あー、この、オスプレイは、オートローテーションの機能は、あー、十分にあるというふうにえー、承知をいたしております。
なお、この、オスプレイは二つのエンジンを付けておりまして、片方のエンジンが故障しても、一つのエンジンのみで二つのローターを回転させることができるというふうに承知をいたしております。
さらにこの二つのエンジンは離れた場所に位置していることなどから、二つが同時に損壊する危険性が極めて少なくて、えー、これまでオスプレイの飛行中にオートローテーションが、あー、必要な状況になったということは米側からはその事実はないと、こういうふうに報告を受けております」――
北沢はオートローテーション機能とは無関係であることが証明できる事故ごとの原因究明の説明と、それをどう解決したのかの検証説明もなく、いわば北沢自身が必要とされる「実質的な議論」を省いてパンフレットに書いてあるようなオスプレイの飛行機能をただ単に読み上げているのと変わらない説明を行って、安全だ、問題はないと言っているに過ぎない。
飛行中にオートローテーション機能が必要になった状況はなかったとする米側からの報告にしても、現実に事故が起きていることの納得のいく説明とはなり得ない。
もし赤嶺議員が「いたずらに懸念を増幅」しているとしたら、北沢はいたずらに安心を振り回しているに過ぎないと言える。
赤嶺議員「大臣ね、オスプレイについては沖縄県民がどんな恐怖心を抱いているか、そして危機感を持っているか、その危機感が噴き出しているのは、あなた方に責任があるんですよ。十何年前からオスプレイが沖縄に配備されるということを、米軍が明らかにしているにも関わらず、あなたを含めてですよ、『アメリカから何の公式の連絡もありません。配備されるかどうか知りません』。こんなことをやってきたのはあなた方でしょう。
そういうねえ、説明をしてこなかった。そういうことさえ振り返らずに私がアメリカで議論されている色々な議論を取上げて聞いた。危機を煽ってるなんてねえ、こんなためにするような、姿勢は直してください。そこから先ず出直ししてください。
オートローテーションのお話がありました。実はですね、アメリカで大量増産が始まって、そしていよいよイラクにオスプレイを配備するというときに、アメリカの雑誌がオスプレイ特集を組みました。2007年10月8日号であります。
タイムはその中でですね、米軍の内部文書を引用しながら、米軍がオスプレイにオートローテーション機能を持たせることを諦めた経過が書かれているわけであります。99年の報告書では、オートローテーション機能の欠如をオスプレイの懸念として挙げておりました。
ところが2002年なりましたら、その報告書の中で最早公式な必要条件とはしないと述べ、量産決定の条件から削除してしまったわけであります。
『タイム』だけではありません。アメリカの国防総省内の研究機関で、オスプレイの主席分析官として開発に加わったレックス・リボロ氏は2003年の報告書で、オスプレイによるオートローテーションの試験は無残に失敗したと指摘し、警鐘を鳴らしました。
リボロ氏は2009年3月に退官し、その直後6月に開かれたアメリカ議会の公聴会でも、そのことを証言しております。このオスプレイの構造上の欠陥は、解決されないまま、配備が進められているのじゃありませんか」
北沢防衛相「あのー、私もですね、その今のお話のありました、その、いたずらに、安全だ、安全だということを、あの、米側からの、あの、資料に基づいて沖縄に押し付けていこうなんていう気持はサラサラないんでありまして、このー、米軍が、あー、返還をしようとしていることは安全で、尚且つ、性能の高い物を配備して、むしろ老朽化した機材を、新しくして、危険性を除去するという、そういう意図のもとにやっていると、いうことを私は理解しております。
そいう中で沖縄のみなさんに様々なご懸念があるとすれば、これは私の責任に於いて払拭していかなければいかん。そういうわけで、先程申し上げた29の、おー、知事、県民を代表する知事からのご質問に対して真摯にお答えしているということを今申し上げて、おるわけでありまして。
あのー、また今、あー、他の雑誌のこともお話になりましたけれども、しかし統計的に言えばですね、2002年5月以降、7万、あのー、飛行時間の中で、死亡事故はなかったとか、あるいは事故率は先程申し上げましたようにCH46の事故率が1.37に対して、1.28であると、いうようなデータを米軍側から取り寄せております。
そのことに対する検証もしっかりしながら、沖縄のみな様方に真摯に対応してまいりたい、このように思っております」
照屋社民党議員が7月9日(2011年)に提出したオスプレイの欠陥に関わる質問主意書に対する7月19日の政府答弁書はレックス・リボロ氏の2009年6月米議会公聴会の証言に関して、「政府として、個人の発言内容について説明する立場になく、また、米国議会における議事内容について見解を述べることは差し控えたい」として、自ら検証する姿勢を示していない。米側と共にオスプレイを配備する側に立つ日本政府として都合の悪い内容となっているからだろう。
問題はこの情報を詳細な内容と共に把握していながら、不都合な情報として問題外としていたのか、照屋議員から質問を受けてから情報収集して初めて知った情報だったかであるが、北沢の答弁が米軍側から取り寄せたデータをしっかり検証したいと言いながら、実質は米側からの報告をその内容どおりに説明しているに過ぎない言葉の羅列となっている受動性、あるいは従属性から判断すると、米側が提供する情報のみに頼って政府自らは情報収集に動かない姿勢しか見えないことから、米側が率先して提供するはずもない不都合な情報と言うことになって、後者の質問を受けてから情報収集して初めて知った情報だと疑うこともできる。
タイム誌が特集記事として取上げた米軍の内部文書に関する情報も情報外としていたと疑うことができるが、少なくとも北沢が赤嶺議員に要求した「実質的な議論」を避け、事故率の低さに代えてオスプレイ配備を正当化する誤魔化しを働いている。
危機管理上、機械の故障による墜落はあり得ないとすることはできない。万が一墜落した場合は「国民の安全・安心」に関わってくるケースも生じる。危険性として想定内としていなければならない墜落を可能な限り回避するためには機械全体・機能全体に亘って万全であることの証明が必要となる。
その証明がなければ、事故率のみを絶対とすることはできないはずだ。
また機体が制御困難になったとしても、どうにかバランスを保って最小限の機体損傷と乗組員の身体損傷に抑えて着陸可能とする余地を残した構造となっているかどうかということも問題となる。一旦制御困難となると、直ちに制御の余地を失い、制御不能となって地上に激突するといった制御に関する機能を欠く特徴を備えていた場合も事故率だけで安全かどうかを論じることはできなくなる。
当然政府は米軍の情報に頼るのではなく、自らも動いて万全であると証明できるありとあらゆる情報を収集しなければならない。レックス・リボロ氏の証言も自ら否定すべくありとあらゆる情報収集とその検証に務めなければならないはずだ。そのために官僚は存在する。
だが、政府の姿勢はそうなっていない。にも関わらず、いわば「国民の安全・安心」に関わる危機管理意識を欠いていながら、「県民を代表する知事からのご質問に対して真摯にお答えしている」とか、「沖縄のみな様方に真摯に対応してまいりたい」などと言っている。如何に口先だけの言葉か証明して余りある。
赤嶺議員「あのー、事故率は起きた事故さえ計算に入れないから、低くなるのは当たり前です。それが真摯な態度だとは思えません。
だから県知事も宜野湾市長も29項目の質問書を出している。あなた方はアメリカに言われたら、これをそのまま沖縄に返している。今だって、オートーローテーションの問題について、アメリカでは大きな議論となっているのに、そして専門の分析官が議会で答弁しているのに、こういう構造上の欠陥を持っているんじゃないかという私の質問に答えていないじゃないですか。答えてください」
北沢防衛相「あのー、今29項目の質問について、えー、米側と遣り取りをしています。確かに米側からはですね、この項目に当てはまらないようなものもあります。それからまた焦点がぼやけているものもあります。そういうものについては我々は、あー、あー、米側に対して、えー、再度、おー、資料の提出を求める、そういう姿勢でやっておるわけでありまして、あれは考えていないのじゃないか、これは隠しているのじゃないか。
如何にもですね。米側の、あのー、代弁者のような決めつけ方は当らないと思っております。我々は日本国民の命の問題として、考えておるわけでありまして、ましてや米軍の基地をたくさん抱えておる沖縄のみなさん方に、えー、そういう意味で、ご納得いただく努力は人後に落ちないつもりである」
「我々は日本国民の命の問題として、考えておる」と言いながら、その言葉に反する米側からの情報頼り一辺倒の受動性、従属性は如何ともし難い。
松本外相「なおー、オートローテーション機能については、私も米国とは、エ、話をいたしておりまして、えー、今、先生のご議論の中にも、おー、オートローテーション機能が欠如してるんじゃないかと。
他方米国の議会ではあったけど効果はなかったということで、色々な議論があると言うような話でありますけども、私共の方にも例えば、オスプレイのパイロットはシュミレーションを用いて、二つのエンジンがもし同時に停止をした、先程北沢大臣の話があった同時に停止したというシナリオに基づくオートローテーション訓練を定期的に行っているということでありまして、私共としては、あのー、米側の当局から、同盟国である我が国に対する説明でありますから、確認をしつつ信頼してまいりたいとこのように思っております」
これは外交では許されないはずの、少なくとも危機管理上許されない性善説に則った無条件の米側信頼となっている。
またシュミレーションにしても二つのエンジン同時停止訓練は可能でも、エンジンは動いているものの相互に極端に出力低下を来たしてその出力に食い違いが生じた場合、食い違いの程度はその場その場で異なるだろうから、オートローテーション機能の全体的な狂い、左右エンジンのバランスの相違を想定したシナリオは可能だろうか。
例えば滅多にないだろうが、完全にないとは否定できない、車のエンジンが出力したとおりの回転を左右の車輪に均等に伝えることができずに左右別々に異なる回転数を与えたといった故障が生じた場合の制御に譬えることができる。
道路事情や運転能力によって制御が影響を受けるようにヘリの場合も気象条件やパイロットの操縦能力も関係してくる。いわばシュミレーション訓練ですべてが解決できるとすることはできないように思える。
赤嶺議員「米側当局、海兵隊当局がオスプレイは安全だ、安全だと言うに決まってるじゃありませんか。原発が安全だと言ってきたこの『安全神話』は日本の政治が見直さなければいけないときに、オスプレイだって同じですよ。
アメリカ国内では民間でも議会でも、この危険性が大議論になっているのにあなた方は、あー、大使館が発表したから、領事館が発表したから、エンジンを二つ持っているから、エンジン二つが壊れることなんかありませんと。
そんなことは絶対に安全の証明にはならないということを申し上げておきたいと思います。
2004年8月に現在の普天間基地所属機であるCH53Dヘリが沖縄国際大学に墜落いたしました。これを受けて日米政府はこの3年後に普天間飛行上の見直しを公表いたしました。
ここにもですね、ヘリは緊急の際にもオートローテーションによって飛行場内に帰還を図ることが可能だ、だから普天間飛行場は安全だと、このように述べました。
もうその説明自体がですね、現にオートローテーション機能を持つはずのヘリが、あー、墜落した以上、全く説得力を持つものではありませんでした。
しかし今回、その機能さえ持たないオスプレイが普天間飛行場に配備されることになります。住宅地上を飛び交うオスプレイにエンジンの停止などが起これば、機体は落下し、墜落する危険が繰返されるだけではありませんか」
松本外相「あのー、まさに普天間の、危険性を除去するために、私共といたしまして考え得る方向として、今、沖縄のみな様にも、今我々が進めている道をご理解いただきたいと、このように思っているわけです。
オートローテーション機能については、先生は欠如しているというふうにおっしゃいましたけれども、私共としてはそのように理解していないということを改めて申し上げたいと思います。
また、北沢防衛大臣も話をさせていただきましたが、わが国としては同盟国である米国の説明をしっかりと聞きますが、わが国としては確認をして、当然沖縄の方々にお話をする立場にあるということを改めて申し上げたいと思います」
質問者に指名されたわけではないのに自分からわざわざ答弁に立って、何の役にも立たないことを発言する。オスプレイが敵攻撃による撃墜というケースを除いて安全飛行可能な機体上の機能を有しているかどうか、質問者はその証明を求めているのだから、正面からそのことを論ずるべきなのに論じないということはオスプレイの安全性を証明できないからに他ならない。
赤嶺議員「同盟国の、おー、当局の主張を大きく、その主張を聞いてきて、えー、オスプレイ配備が沖縄に行われるのはもう10年以上も明らかになっているのに、一回(も)説明して、なかった、
えー、そして今、さらなる真摯な説明が求められるのに、アメリカ当局が発表していることこういうことですと、いうことしかおっしゃらない。非常に残念であります。
そこで総理に聞きますけども、普天間飛行場の住民は、米軍に土地を奪われ、基地を取り囲むように生活を余儀なくされてきました。危険な基地に危険なオスプレイを配備するのは本当に危険極まりないものであります。オスプレイ配備にはきっぱりと反対すべきだと思います。
同時に現在普天間飛行場に配備されているCH46やCH53が、ベトナム戦争の頃に配備された老朽機であります。これも到底受入れられるものではありません。沖縄県民に残された選択肢は一つしかありません。普天間基地を直ちに閉鎖・撤去をすることです。
民主党政権が発足してから、来月で2年になりますが、県外での移設先探しは破綻しました。6月に開かれた日米の外務・防衛閣僚による2+2の会合で、名護市への海を埋めたV字型の滑走路を建設する従来の案に完全に戻りました。
しかし沖縄県民がこの案を受入れる余地は全くありません。この2年間で県内にも県外にも普天間基地を受入れる場所などないことははっきりしたのではありませんか。総理如何ですか」
NHK中継が常に菅首相の顔を捉えていたわけではない。主に赤嶺議員と北沢防衛相の議論に移ってから時折カメラが捉えた菅首相は呆けた顔で居眠りしていた。居眠りしているからこそカメラで捉えた居眠りの姿であろう。
普天間飛行場へのオスプレイ配備の反対は内外の少なくない識者が訴えている危険だとの指摘に基づいていて、単に感情的な反対からではない。日本政府がいくら安全だとの立場を取ったとしても、「国民の安全・安心」に関係する問題である以上、日本政府は「国民の安全・安心」意識に立ってオスプレイの安全性を証明する義務と責任を有する。
また、「国民の安全・安心」意識に立つとは、「国民の安全・安心」意識に添うということに他ならない。もし真剣な気持で添おうとしていたなら、居眠りするような心の油断は生じないはずだ。
疲れていたなどといった言い訳は通用しない。
松本外相「是非赤嶺先生。普天間の危険性除去というスタートラインが一致をいたしましたので、これからの方策についても先生と一致できると大変・・・・(聞き取れない)ではないかと思います」
オスプレイは安全なヘリだという誰もが納得できる証明そのものがオスプレイ配備に於ける危険性除去に相当するのであって、その証明がなければ、危険性除去とはならない。除去どころか、新たな危険性の付加となる。松本外相は単細胞にも政府の危険性除去と赤嶺議員が望む危険性除去が似て非なるものであることを無視できる判断能力を示したに過ぎない。
赤嶺議員「総理、答えてください」
菅仮免「私も、おー、総理になってから、あー、この普天間の、固定化と、おー、何とか、あー、固定化しないで、できるだけ早い時点で、えー…、その方針としては、ま、辺野古でありますけれども、おー、移転できないかということで、えー、ご理解をいただけるよう努力をしてまいりました。
えー…、今、ア、おっしゃるように、えー、厳しいご意見があることは、ア、よく承知をいたしております。同時に、今の辺野古は普天間と比べれば、えー、地域も、おー…、つまりは密集地域でもありませんし、また、もし、普天間返還されることになれば、えー、嘉手納以南のかなりの基地も、えー、返還されると、その点でトータルな意味で言えば、えー、まさに、イー…、大きな、沖縄の、おー、負担が、あのー…、このー…、普天間の返還と、確かに辺野古には新たな、あー、基地が建設というご負担をいただくことになりますが、トータルして考えれば、、私は、あー、沖縄の、負担が軽減することにつながると、このように考えて、イー、お伺いしたときも、そういう趣旨を含めて、えー、ご理解をいただけるよう、おー、申し上げたところであります。
まあ、状況が厳しいことは、あのー、よ、よく、承知をしておりますが、えー、普天間の固定化をしないで、そして、えー、そう、えー…、長い、期間、これまでの長い期間が経過する、経過しましたので、これ以上の期間が経過することなく、ジケン、実現するための、方策として、えー、何とか、あー、沖縄のみなさんにも理解をいただけないかというのが、あー、私、あるいは、えー、政府の考え方であります」
居眠りの成果が出た答弁となっている。赤嶺議員はオスプレイ配備反対と普天間基地の閉鎖・撤去を求めた。だが、菅仮免は普天間から辺野古への移転の理解は求めたが、オスプレイに関する安全性の証明にも配備反対の要求に関しても一言も触れていない。
「厳しいご意見があることは、ア、よく承知をいたしております」は基地問題に関してであり、オスプレーの配備に関する厳強い状況についての言及ではあるまい。
もしオスプレイに関して承知している「厳しいご意見」であったなら、辺野古が普天間と比較して密集地域でないことを以ってして移転の理由の一つとすることはできなくなる。オスプレイの墜落が大勢の人命ではなくても、たった一人の人命を奪う可能性は否定できないからだ。
居眠りにも現れている希薄な「国民の安全・安心」意識でもあるが、オスプレイの安全性の証明がないままに密集地帯如何を基地移設の基準の一つとするところにも現れている希薄な「国民の安全・安心」意識と言える。
赤嶺議員「あのー、普天間基地が危険だから、人の少ない辺野古に移そうと言うのは、一番最初にまさにアメリカ政府が言い出したことなんです。その方が沖縄にとって有利だろうと。
先程からの答弁を聞いておりますと、すべてアメリカ当局のオウム返し、そんなことをしているつもりはないと防衛大臣言いますが、まさに総理大臣の最後の答弁でもはっきりいたしました。
辺野古は絶対に造れませんし普天間は撤去する以外にないことを申し上げ、質問を終わります」
参考までに、《菅仮免の原発問題とオスプレイ配備問題に見る「国民の安心と安全」の二重基準 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》 |