野田内閣の放射能汚染は国・東電が加害者であることを忘れた除染費用負担の迷走

2011-10-02 09:52:09 | Weblog

 野田内閣の迷走は朝霞公務員宿舎の建設凍結→凍結解除・建設再開→再凍結への動きだけではなかった。2009年11月行政刷新会議・事業仕分け朝霞公務員宿舎の建設凍結から2010年12月凍結解除、2011年9月1日105億円建設再開→野党猛反対→9月30日になって野田首相が現地視察、最終的な政治判断を下すとした再凍結示唆の一度で問題解決できない判断のブレを曝している。

 そして野田内閣は「緊急時避難準備区域」解除に伴って実施する放射能汚染の除染費用の負担問題でも迷走を演じている。

 9月28日、内閣府と環境省が福島市内で開いた福島県内の自治体への説明会で年間被爆線量5ミリシーベルト未満の地域については局所的に線量が高い側溝などを除いて財政支援は行わないとする方針を伝えた。

 いわば5ミリシーベルト以上の地域のみ、国がカネを出すと言うわけである。

 この方針を固めたのは1日前の9月27日だそうだ。

 その理由。《除染:被ばく年5ミリシーベルト超で対象に 環境省方針》毎日jp/2011年9月27日 23時34分)

 記事は、〈8月成立の除染や瓦礫処理に対処する特措法は著しい汚染地域を「除染特別地域」と環境相が指定、国が直轄で除染するとしているとしている。〉と書き、5ミリシーベルト以下は除外規定となることを伝えている。

 環境省「5ミリシーベルト以下なら、時間経過による減量や風雨による拡散で、政府目標の追加被ばく量の年間1ミリシーベルト以下になる」

 風は常に「5ミリシーベルト以下」の地域から発生して、「5ミリシーベルト以下」外の地域に向かって吹くと決めてかかっている。雨が降って流れるにしても、年間1ミリシーベルト以下の量に流れるまでの時間経過を待つ間、年間1ミリシーベルト以上の放射能に触れることになる。

 風は5ミリシーベルト以上の地域から「5ミリシーベルト以下」の地域に向かって決して吹かないと保証できるのだろうか。福島第一原発から放出された放射能物質は風に吹かれ、千葉県我孫子市にまで流れ流れて露地栽培のシイタケを国の暫定基準値を超す量の放射性セシウムで汚染しているし、神奈川県足柄地方にも辿り着き、同じく足柄茶を国の暫定基準値を超える汚染をもたらし、埼玉県の狭山茶も汚染、静岡の茶葉も汚染している。

 すべて風が仕業の汚染である。

 大体が福島原発事故は国の原子力安全委員会が1990年に策定した「発電用原子炉施設に関する安全設計審査指針」で、「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又(また)は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない」と、その備えを必要としない方針としたことが災いして起きたメルトダウンであったり、水素爆発であった。

 また地震学者等が東電に対して貞観地震時発生の大津波クラスの津波が襲う危険性の指摘とその備えの要請に対して東電は正確な規模、正確な周期が不明との理由で想定の対象外とし、聞く耳を持たなかったことが誘発した事故の拡大であり、放射能物質の漏洩でもあった。
 
 いわば国と東電が共々関わった原子炉対策不作為が招いた加害行為だったのである。国と東電は共に加害者の位置にある。そして菅前内閣も国の責任を認めていた。当然、野田内閣も認めているはずである。

 加害者である以上、自らの加害行為によって生じた被害に対しては全面的に責任を負うとしなければならないはずだ。被害が大きいものについては責任を負うが、被害が小さいものについては責任を負わないという分類は許されない。

 当然、国も加害者であるという責任意識を忘れた、年間被爆線量5ミリシーベルト未満の地域については局所的に線量が高い側溝などを除いて財政支援は行わないとする方針ということになる。

 この加害者であることを忘れた国の除染方針に福島県市長会長が猛反発した。当然の動きだろう。。《【放射能漏れ事故】「除染費用支援なし」国方針に市長会抗議 福島、5ミリシーベルト未満地域》MSN産経/2011.9.29 21:34)

 〈福島県市長会長の瀬戸孝則・福島市長が9月29日、国の復興対策本部の吉田泉現地本部長を訪ね、「県民の心情を全く理解していない」と撤回を求める抗議文を手渡した。〉―― 
 
 瀬戸市長(吉田泉現地本部長に対して)「国の支援なくして各市の除染計画は進まない。とてものめるものではない。県内の除染費用は東京電力と国策で原発を推進してきた国が負担すべきだ」

 瀬戸市長(会談後、記者団に)「国と戦いたいという心情だ」

 吉田本部長「方針は除染の優先順位を示したものだと思う。国に伝えたい」

 要するに被曝線量の高い地域の除染を先ず優先させて、段階的に低い地域の除染に向かう方針であって、国の費用負担に変わりはないと言っているが、相手を宥(なだ)めるための事勿れな誤魔化しに過ぎない。

 なぜ市長会はもっと強い態度で、「国は東電と共に放射能事故の加害者であることを忘れないで貰いたい」と抗議しなかったのだろう。

 「被害の大小・多少に関わらず、国は東電共々、被害救済の全面賠償を行うべきだ」と。

 国も加害者であるとする強い意思表示を示さなかったとしても、市長会の抗議が効いたのか、同じ9月29日に1~5ミリシーベルト地域の除染費用の国負担を明らかにしている。

 《放射性物質除染:1~5ミリシーベルトでも国負担》毎日jp/2011年9月29日 22時34分)

 〈東京電力福島第1原発事故による放射性物質の除染について、細野豪志環境・原発事故担当相は29日、国が対象として指定しない場所についても、年間追加被ばく量が1~5ミリシーベルトの場所で自治体が除染を実施した場合は、国が予算を負担する考えを示した。〉

 記事は1~5ミリシーベルト地域の財政支援の方針を決めたのは9月27日で、9月29日に福島県市長会から、この方針撤回の抗議を受けた経緯を伝えた後で、さらに、〈同省(環境省)によると、局所的に線量が高い地域の除染費用は、政府が除染に使用することを決めた、11年度第2次補正予算の予備費から52億円を充てることを決めている。年1~5ミリシーベルトの場所は、11年度第3次補正予算で百数十億円を計上する予定だ。〉と書いている。

 要するに11年度第3次補正予算で年1~5ミリシーベルト地域の除染費用を計上する予定でいたのだから、国全額負担の方針に変わりはない、自治体に負担を肩代わりするようなことはしないということなのだろう。

 だが、これは誤魔化し以外の何ものでもない。これが誤魔化してある以上、細野が言っていることも誤魔化しとなる。
 
 細野環境・原発事故担当相「市町村が適切と思う形でやっていただき、なるべく要望に沿う形で予算を執行していきたい」

 地域の要望に沿う形で予算を執行していきますよ、国が全額負担ですよと言っている。

 局所的に線量が高い地域の除染費用は政府が除染に使用することを決めた11年度第2次補正予算の予備費から52億円を充てるとしている。この52億円を11年度第3次補正予算が国会を通過するまでに全部使い切るわけではあるまい。52億円を局所的に線量が高い地域の除染費用の充当と併行させて年1~5ミリシーベルト地域の除染費用に充ててもいいわけである。

 そして不足見込み額を11年度第3次補正予算に計上すれば、何も問題はないはずである。自治体が少ない予算の中から除染費用を捻出して、あとから国から支給されるという手間も省ける。

 手間の省けるこういった方法を採らずに2次補正予算と3次補正予算に分けたのは一旦は決めた年1~5ミリシーベルト地域の除染費用自治体負担を体裁よく撤回するための誤魔化し以外の何ものでもあるまい。

 国が東電共々加害者であることを忘れた、「被災者に寄り添う」のスローガンをウソとする除染費用負担の迷走としか思えない。


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