石原慎太郎東京都知事がアメリカを訪問、現地時間4月16日(2012年)午後、ワシントン市内で講演し、東京都が尖閣諸島を購入する構想を明らかにした。地権者サイドとも交渉し、合意を得たとしているという。 《都の尖閣購入計画】「東京が尖閣を守る」石原知事講演発言要旨》(MSN産経/2012.4.17 22:39)
尖閣諸島4島のうち、1島は国有地、残る民有地の3島を購入対象としているらしいが、この3島は日本政府が2002年から借り上げ、中国と摩擦を起こしたくない事勿れ主義から上陸を禁じている。
尤も土地購入は本人の意向だけで実現するわけではない。一定規模以上の土地を購入する場合、都議会の議決が必要ということで、猪瀬副知事は寄付を募って、予算歳出を減らす考えをテレビで示していた。
石原都知事がアメリカでどう発言したのか、次の記事を参考引用する。
石原慎太郎東京都知事の講演の要旨を次の通り
◇
中国は尖閣諸島を日本が実効支配しているのに、ぶっ壊すためにあそこでもっと過激な運動に走り出した。日本の固有の領土ってのは、沖縄を返還するときに、あそこの島は全部帰ってきたんだ。その尖閣に(中国が)「俺たちのもん」だって。とんでもない話だ。東京都はあの尖閣諸島、買います。買うことにしました。私が留守の間に実務者が決めてるでしょう。東京が尖閣諸島を守ります。
ほんとは国が買い上げたらいいと思う。国が買い上げると支那が怒るからね。なんか外務省がビクビクして。あそこは立派な漁場になりますしね。沖ノ鳥島だって中国や台湾の人が乱獲して、守らせるために国や地方が頑張っている。
日本人が日本の国土を守るために島を取得するのは、何か文句ありますか。ないでしょう。やることを着実にやらないと政治は信頼を失う。まさか、東京が尖閣諸島を買うってことでアメリカが反対するってことはないでしょう。
第一印象は馬鹿げたアイデアに過ぎないのではないか、であった。買い上げたことで、中国が領有権主張から手を引くだろうか。
以下、「ウイキペディ」から引用。
尖閣諸島を日本領に編入したのは日清戦争中の1895年1月14日。
1968年になって10月12日から11月29日まで、日本、中華民国、大韓民国の海洋専門家が国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の協力の下に海底調査実施。
調査結果は「東シナ海大陸棚に於ける石油資源埋蔵可能性」の確認。
〈現在では尖閣諸島周辺にはイラクの原油の推定埋蔵量の1,125億バレルに匹敵する、1,000億バレル以上の埋蔵量があることがほぼ確実とされている。〉との記述がある。
1971年、中国も台湾も指をくわえて眺めているわけにはいかないと欲を出したのか、両国揃って尖閣諸島の領有権を主張し始めた。
海底調査以来、43年が経過している。尖閣諸島を巡る領有権問題は外交関係の根底に於いて常に潜在し続けたが、最近では2010年9月7日の尖閣沖中国漁船衝突事件を発端に日中間に荒々しく顕在化することになった。
日本の菅政府の中国に対する対応は事勿れ主義と従属主義に終始したものだった。このことは周知の事実となっていることだが、公務執行妨害で逮捕した船長を国内法に則って粛々と処分すると言いながら、中国の報復的な圧力に屈して処分保留のまま釈放した処置に事勿れ主義と従属主義が如実なまでに現れている。
「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土だ」と口では言っても、口で言うとおりの実効性ある証明を中国に対して行わずに逆に「尖閣諸島には領土問題は存在しない」を口実に中国の領有権主張をも抹消可能としようとしたのだから、「領土問題は存在せず」を水戸黄門の印籠にして逃げまわっていたのである。
現実的にも抹消可能とすることはできなかった「尖閣諸島には領土問題は存在しない」の口実であり続けている。
大体が「国際法上も歴史的にも日本固有の領土」だと主張しても、その主張が毛程も通じず、中国の領土だと言う相手に東京都が尖閣諸島の私有地を購入して、公有化を以って日本の領土だと証明しようとしたとしても、とてものこと通じる相手ではないことは目に見えている。
早速中国が反発した。《“尖閣購入” 中国政府「無効だ」》(NHK NEWS WEB/2012年4月17日 19時55分)
劉為民中国外務省報道官談話「中国の固有の領土で争いの余地がない中国の主権だ。
日本側のいかなる一方的な措置も無効だ。中国の領土だという事実を変えることはできない」
そう、中国側は尖閣諸島は中国領土だということを自らの「事実」としている。その事実は東京都が土地を購入することを以てしても変えることはできない。当然の成り行きであろう。
尖閣諸島は中国領土だという中国側の「事実」に対抗するにはその事実以上に尖閣諸島は日本固有の領土であることを「事実」とする方法以外にないはずだ。
島の地権者の一人は売った土地を自然公園などとして活用することを希望していると「MSN産経」が伝えているが、その程度の「事実」では中国の「事実」に対抗する日本側の「事実」とはなり得まい。
同じ実効支配強化に努めるにしても、日本は資源小国である。1968年の石油資源埋蔵可能性確認の海底調査以来43年が経過、その間イラク原油の推定埋蔵量の1,125億バレルに匹敵する1,000億バレル以上の埋蔵量がほぼ確実視されていながら、開発して資源小国から脱出、国民の利益とする方策を無策にも何ら採らずにきた。
中国は日本が排他的経済水域を主張する日中中間線からはわずか4キロメートル中国側に内側の地点で白樺ガス田を開発、2006年には生産を開始している(Wikipedia)ということだが、海底を通じて日本の排他的経済水域を超えて日本の領海内に侵入しているという噂まである。
法的にも歴史的にも日本固有の領土である尖閣諸島周辺で資源開発・商業生産開始を行なってどこに不都合があるだろうか。
また中国の「事実」に対抗するこのような資源開発・商業生産開始に優る実効支配の「事実」、尖閣諸島は日本固有の領土であるとする「事実」はないはずだ。
勿論、中国側は反発して、中国漁船船長逮捕時に優る経済面での、さらに外交面での様々な圧力や妨害に出るのは目に見えている。だが、ある一定限度を超えると、中国の経済や政治にもダメージを与えることになる経済的にも政治的にも相互関係に日中はある。
中国人船長逮捕時には中国人の日本観光客が姿を消し、日本の観光地が打撃を受けたが、中国向けの日本人観光客も激減して中国観光業に打撃を与えた。
日中双方とも、ダメージが長期に亘ることは耐えられない。どちらが先に折れるか、我慢のしどころであろう。
日本に必要なのは尖閣諸島は中国領土だとする中国側の「事実」に対抗する、尖閣諸島は日本固有の領土であるとする「事実」を明確な形で具体化して実効支配の既成事実とする覚悟であり、そのことに対する中国の反発に毅然として耐える覚悟であろう。
中国人船長逮捕時には経済的・政治的圧力を加えてきた中国に対して菅政権はその覚悟を示すことができなかった。“柳腰外交”と称して事勿れ主義と従属主義に走った。