橋下徹の自分は別れずに他人に別れを勧めるご都合主義な政界再編

2014-05-23 08:46:43 | Weblog




      生活の党PR

       《5月19日(月) 小沢一郎生活の党代表 定例記者会見要旨》

      『政府の自衛権に対する見解、不可解な議論と言葉が横行している』

      【質疑要旨】
      ・集団的自衛権について
      ・日本維新の会とみんなの党、「自主憲法研究会」立ち上げについて
   
      《青木愛幹事長代理「地方教育行政法改正案」賛成討論 》

 日本維新の会と結いの党が合流に向け、基本政策に関する詰めの協議を行っているという。

 但し憲法改正を巡って石原慎太郎と橋下徹両共同代表の間に意見の違いがあり、2013年3月30日制定の日本維新の会綱領で石原慎太郎の主張を採り入れた憲法改正を謳っているのだから、意見の違いがあること自体がおかしなことだが、結の党と石原慎太郎の憲法観にも違いがあって、結の党から見て石原慎太郎が合流の阻害要因――邪魔者となっているようだ。

 愛人が男に向かって、「私を取るの、奥さんを取るの」と迫るような場面がいつかは出てきそうだ。

 石原慎太郎はかねてから自主憲法制定論者である。自主憲法論とは、「日本国憲法を無効もしくは、成立過程において不備があったために、日本独自で新しく憲法論議をし、前憲法破棄、新憲法を制定しようとする考え方」と「Weblio辞書」)に書いてある。

 日本維新の会綱領は第一番に次のように掲げている。

 「日本を孤立と軽蔑の対象に貶め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶である占領憲法を大幅に改正し、国家、民族を真の自立に導き、国家を蘇生させる。」

 これが石原慎太郎の主張を取り入れた日本維新の会の憲法改正政策であり、当然、この政策は自主憲法制定の文脈で書き入れてあることになる。

 だからこそ、「日本を孤立と軽蔑の対象に貶め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶」だと、現日本国憲法をミソクソにやっつけることができる。ミソクソにやっつけながら、日本国憲法を土台とした新憲法と言うことなら、矛盾も矛盾、まるきり矛盾することになる。

 もし日本国憲法がこのような「元凶」だったとすると、絶対平和は唱えただけで向こうからやってくるものではなく、政治と国民の努力によって自らが構築するものだから、戦後の政治と国民の努力は存在しないが如く無効であったことになる。そしてこのような無効の結果、日本は「孤立と軽蔑の対象に貶め」られたということになる。

 何のことはない、自分たちが悪かったということではないか。

 5月19日、日本維新の会が国会内で開催した野党再編に関する両院議員懇談会で、石原慎太郎は結の党との合流に反対している。

 石原慎太郎「ちまちました再編などやるべきではな い。極端なことを言えば、憲法改正を進めるため、自民党と連立を組む選択肢もありだ。

 結いの党とは政策も理念も異なり、合流には断固反対だ」(NHK NEWS WEB

 石原慎太郎の合流断固反対表明を受けてのことなのだろう、2日後の5月21日、橋下徹と石原慎太郎の両巨頭会談が行われた。

 会談で石原慎太郎は自身が求める自主憲法制定の趣旨が基本政策に盛り込まれるなら、合流に反対しない考えを示したのに対して橋下徹が、その趣旨を基本政策に盛り込む考えを伝えたと、5月22日付け「NHK NEWS WEB」記事が関係者の話として報道している。

 石原慎太郎(橋下徹の提案を前提に)「結いの党と憲法観は異なるが、自民党の『一強多弱』の状況を打破する必要性は理解できる」

 対して結の党の反応。5月22日の党代議士会。

 柿沢結の党政策調査会長「石原、橋下両氏の会談で話し合われたことは、維新の会の中の話だ。『自主憲法』という文言が入っている以上、認められない」(NHK NEWS WEB/5月22日付け)

 結の党の石原式、あくまでも石原式である、自主憲法制定論に対する拒絶反応は強い。日本国憲法を「日本を孤立と軽蔑の対象に貶め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶」などと絶対否定的に価値づける憲法論は石原慎太郎とその一派、いわば旧太陽の党の面々独特のものであろう。

 そもそもからして橋下徹と石原慎太郎は政策に違いがあった。

 2012年4月14日、当時都知事の石原慎太郎が訪米、ワシントンで記者会見している。この当時、野田政権が大飯原発再稼働要請に踏み切る決断をしていた。

 石原慎太郎「(経済に於ける)原発の比重を考えず、反対と言っても自分の首を絞めるようなものだ。原発を全廃した途端に、生活が貧乏になっていいのかという話だ」(スポニチ

 対して当時の橋下徹大阪市長は大飯原発再稼働に反対していた。2012年4月24日の橋下大阪市長と藤村官房長官の会談

 橋下市長 「科学者や原子力安全委員会のコメントがないなかで、安全性の問題を政治が判 断するのはいかがなものか。政権が安全宣言したのは絶対におかしく、福島の事故前の平時の再稼働の手続きで進めるのは納得いかない」――

 2012年11月29日発表の日本維新の会衆院選公約と同時に公表した「政策実例」

 「原発政策のメカニズム、ルールの変更。既設の原子炉による原子力発電は2030年代までにフェードアウトする」 

 翌日2012年11月30日石原慎太郎記者会見。

 石原慎太郎「今から30年代に原発をなくすなんて非常に暴論に近い。(公約を)直させる。橋下徹代表代行とも合意している。

 経済をシミュレーションした先に原発を考えなかったら、私はやっていられないし、代表を辞める」(TOKYO Web

 核についての橋下徹と石原慎太郎の政策の違い。
 
 石原慎太郎月刊「文芸春秋」2012年11月号発言。

 石原慎太郎(尖閣諸島を巡り緊張が高まる中国に対抗するために)「最低限核兵器のシミュレーションが必要だと考える。強い抑止力として働くはずだ」

 この記事発言を受けて、11月8日、大阪市役所での記者会見。

 橋下徹「考えることは大いに結構だ。核を日本が持つかどうかを前提とするのではなく、安全保障で核の役割を考えるのは政治家としてやらなければいけない。

 日本が置かれた状況下で、核保有を目指すと公言することは日本維新の会では、あってはならない}(以上、YOMIURI ONLINE)――
 
 橋下徹が認めたのはあくまでも安全保障上の核の役割の議論であって、核保有ではない。

 だが、石原慎太郎は、「最低限核兵器のシミュレーションが必要だ」と言っているが、限りなく核保有衝動を抱えている。

 石原慎太郎、2012年11月20日東京・有楽町日本外国特派員協会での講演。

 記者「石原氏はナショナリストだと思われている。軍事力を強化するより外交を追求した方がいいのではないか」

 石原慎太郎「軍事的な抑止力を強く持たないと、外交の発言力はない。今の世界の中で核を持っていない国は外交的に圧倒的に弱い。核を持っていないと発言力は圧倒的にない。防衛費は増やさないといけない。私は、核兵器に関するシミュレーションぐらいやったらいいと思う。これは一つの抑止力になる。持つ持たないは先の話だけど。(これは)個人(意見)です」 asahi.com) ――

 石原慎太郎「核を持っていないと発言権が圧倒的にない。北朝鮮は核開発しているから、米国もハラハラする」(毎日jp)――

 「シミュレーション」という言葉を挟んでいるが、日本は核を持てと言っているのと変わらない趣旨の発言となっている。

 かくかように二人の国の行方を左右する重要政策に違いがある。

 だが、橋下徹は太陽の党を率いていた水と油程も政策の違う石原慎太郎を日本維新の会に受入れ、代表者の地位に据えた。

 201211月18日のテレビ番組。

 橋下徹 「一国民として石原首相を見たい。石原首相と僕に任せてほしい」(TOKYO Web

 この熱の入れようである。男が女性に寄生するヒモ的存在を正体としていることに気づかずに女性の方が一方的に熱を入れている関係に似ていないこともない。

 もし結の党が日本維新の会との合流を実現させるために石原慎太郎の自主憲法制定を両党合流の基本政策に盛り込むことを認めたなら、結の党は主体性を失うことになるだろう。他の野党から、頭数を増やすための野合の批判を受ける恐れもある。少なくとも結の党議員の側は後ろめたさを抱えることになり、それがトラウマとなって、尾を引かない保証はない。

 核政策についても、石原慎太郎の核保有衝動がいついかなるとき問題を孕むことになったとしても、不思議はない。

 橋下徹は2013年12月10日、様々な勢力で一つの党を成り立たせている民主党に対して分党のススメを説いている。

 橋下徹「民主党の中は完全に政治的な価値観で両極端になっている。そこまで決定的に考え方が合わないなら、別れた方が国のためだ」(MSN産経)――

 日本維新の会の中が「完全に政治的な価値観で両極端になっている」ことは棚に上げて、他党のことをあれこれ言う。ご都合主義以外の何ものでもない。

 このご都合主義は松井日本維新の会幹事長の発言にも現れている。5月21日夜、石原、橋下、松井と名古屋市内で会談。翌5月22日午後、記者団に発言。

 松井幹事長「憲法改正は国民が1票1票を投じて自主的に決めるものなので、憲法改正をして自主憲法をつくるという言葉の使い方に間違いはない。憲法の破棄は一切ない」(NHK NEWS WEB)――

 国民が「自主的に決める」ことと、「自主憲法」とは似て非なるものであるにも関わらず、「言葉の使い方に間違いはない」と、それを同列に扱うご都合主義な薄汚いゴマカシを働かせている。石原慎太郎の自主憲法論は繰返しになるが、日本国憲法を「日本を孤立と軽蔑の対象に貶め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶」として全否定した上で、新たに憲法をつくることを本質的な構造としている。

 もし日本維新の会が自らの憲法政策を石原慎太郎の自主憲法制定論で統一するというなら、結の党との合流は野合となる恐れから断念すべきだし、自民党と対決するためにどうしても結の党との合流が必要だというなら、例え一時的に頭数を少なくするとしても、旧太陽の党、そして似たり寄ったりの日本創新党と袂を分かつ以外に道はないはずだ。

 結の党が頭数の一致に拒絶反応を示している以上、主体性という点で、その拒絶反応を今さら捨てる姿勢を示すことができないだろうから、政策で一致させる以外に選択の余地はないはずだ。

 日本維新の会衆議院議員53名の勢力の内、旧太陽の党12名と日本創新党2。参議院9名のうち旧太陽の党3名の合計17名。

 衆議院結いの党9議席と参議院結いの党5議席の14議席。3議席減らすことになるが、政策一致を政界再編の厳格な基本姿勢とすることになって、他の野党議員の個々の合流にしても、党全体の合流にしても、合流後の党運営と政策運営はよりスムーズになるはずだ。

 石原慎太郎一派追放後の日本維新の会にしても、政策一致を旗印に掲げることによって他の議員に対する吸着力を増すはずだ。

 橋下徹はご都合主義を性格としているにしても、石原慎太郎のためのご都合主義はもうやめるべきだろう。

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