安倍晋三の政治資金規正法第22条を以って「知らなければ違法でない」とする卑しい政治的倫理観と金銭感覚

2015-03-01 09:43:13 | 政治

 
 2月27日(2015年)衆院予算委員会集中審議で望月義夫環境相と上川陽子法相のそれぞれが代表を務める政党支部が国の補助金を支給された企業から献金を受けていた問題での遣り取りがあった。次の記事からその遣り取りを見てみる。

 《献金 “法的問題ない 再発防止策検討を”》NHK NEWS WEB/2015年2月27日 19時08分)   

 江田維新の党代表「上川法務大臣と望月環境大臣が国の補助金を支給されている企業から献金を受けていたことも報道されており、安倍政権の構造的な問題ではないかという疑念を抱くような事態が起こっている」

 安倍晋三「補助金のことは献金の受け手は知り得ない立場で、知らなければ違法行為ではないということは法律に明記されており、違法行為ではないことは明らかだ。指摘された以上、献金を返したということで十分に説明がついていた。閣僚であろうと、与党であろうと、野党であろうと、そういう事態を防ぐためにどうしたらいいかは考えなければならない。『構造問題』という言葉を使われるのは極めて不愉快だ」

 江田代表は「安倍政権の構造的な問題ではないのか」と疑問を呈した。いわば金銭上の問題を各閣僚とも共通して抱えている安倍内閣ではないのかと、内閣の構造自体をを問題視した。

 閣僚全員が黒いカネにと言ったら言い過ぎになるかもしれないが、少なくとも如何わしいカネにまみれているのではないのかとの容疑を掛けたようなものだから、安倍晋三は「『構造問題』という言葉を使われるのは極めて不愉快だ」と反発した。

その根拠は国からの補助金を受けている企業・団体からの献金(=寄附)だとは知らなかったのだから、違法行為に当たるカネを受け取っているわけではない、否定的な意味で構造的な問題だと捉えるのは間違いだというわけである。

 ご存知のように政治資金規正法第22条の3は、〈国から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金の交付の決定を受けた会社その他の法人は、当該給付金の交付の決定の通知を受けた日から同日後一年を経過する日までの間、政治活動に関する寄附をしてはならない。〉と規定している。

 この規定は国から補助金等を受けた企業・団体に課したものである。

 そして政治資金規正法第22条の3の第5項・第6項は寄付を受ける側の国会議員に課した規定となっている。

 第5項〈何人も、第一項又は第二項の規定の適用を受ける者であることを知りながら、その者に対して、政治活動に関する寄附をすることを勧誘し、又は要求してはならない。 〉 

 第6項〈何人も、第一項又は第二項の規定に違反してされる寄附であることを知りながら、これを受けてはならない。〉

 要するに国から補助金等を受けた企業・団体であることを知りながら、そのような企業・団体に対して政治活動に関する寄附をすることを勧誘し、又は要求してはならないし、国から補助金等を受けた企業・団体であることを知りながら、そのような企業・団体から寄附を受けてはならないと禁止している。

 この両規定に対して安倍晋三は「知りながら」では違法となるが、「知らなければ」寄附の勧誘も要求も、更には寄附を受けることも「違法行為ではないということは法律に明記されている」と法律解釈を施しているというわけである。

 と言うことは、相手がどのような企業・団体であろうと無差別に寄附の勧誘や要求を行うことができ、勧誘や要求に応じた寄附は相手がどのような企業・団体であろうと無差別に受け取ることができることになる。あるいは企業・団体側から自主的に申し出た寄附は相手がどのような企業・団体であろうと無差別に受け取ることができることになる。

 もしそれらの寄附が政治資金規正法の禁止規定に触れると指摘を受けた場合に限って、知らなかったこととして寄附を返却すれば、違法行為にならないと判断されることになる。

 確かにそのように法律解釈できるが、政治資金規正法という法律を適正に運用するために寄附の勧誘や要求を行おうとする相手の企業・団体に対して、あるいは自分の方から寄附を申し出る企業・団体に対して禁止規定に触れていないかどうかを前以て確かめる国会議員としての責任は必要ないと言っていることにもなる。

 政治資金規正法適性運用に関わる国会議員の責任の放棄は許されるということである。

 もし確かめるか確かめないかは各国会議員の判断に任されているとするなら、一方は厳格に法律上の責任を履行することで国会議員としての身分上の責任を維持することになり、一方は厳格に遂行せずとも国会議員としての身分上の責任は維持できることになって、相互の立場に矛盾が生じることになる。

 例え矛盾が生じたとしても、それも各国会議員の判断に任せるということはできない。なぜなら、立場上の矛盾は政治的倫理観の違いに関係してくるからである。
 
 政治資金規正法が規定している寄附禁止事項に触れまいとして寄附の勧誘や要求を行い、それに応じて寄附を申し出る企業・団体に対して、あるいは自主的に寄附を申し出る企業・団体に対して前以て禁止事項を周知徹底させる政治的倫理観と、周知徹底させずに全ての寄附を受け取って、もし禁止している企業・団体からの寄附だとの指摘を受けたなら、知らなければ違法行為ではないのだから、知った時点で寄附金を返しさえすれば問題はないとする政治的倫理観は明らかに異なる。

 寄附という金銭に関わることだから、自ずから金銭感覚も異なることになる。

 後者を以って卑しい政治的倫理観と金銭感覚だと見ない者はどれ程いるだろうか。

 まさか全員が全員、政治献金に卑しくなっているために政治的倫理観と金銭感覚を意図的に麻痺させているわけではあるまい。もしそうであるなら、余りにも狡猾に立ち回っていることになって、国会議員でありながらのこの狡猾性も問題となる。

 安倍晋三は国会という公の場で後者の政治的倫理観と金銭感覚を擁護した。自身のそれは擁護したそれとは異なると主張することはできない。同じ穴のムジナの卑しい政治的倫理観と卑しい金銭感覚を体質としていると見ないわけにはいかない。

 こう見てくると、確かに政治資金規正法で寄附禁止規定に触れる企業・団体からの政治献金受領は「安倍政権の構造的な問題」ではないかもしれないが、閣僚たちの精神構造上の問題であると言うことはできる。

 国民の選択を受けて成り立たせている身分である。卑しい政治的倫理観と卑しい金銭感覚を体質としていながら有権者の支持を受けて当選できたということはそこに不条理の介在を見る。

 その不条理を有権者たちは目をつぶって許している。

 ましてや一国の首相が同じ体質だと言うのは日本の民度そのものに関わってくることになる。

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