安倍晋三「総理のご意向」=“加計ありき”の証明となる記事を8月6日付「朝日デジタル」が報道している

2017-08-07 11:51:10 | 政治

 一部有料記事で無料では最後まで読めないが、2017年8月6日付「朝日デジタル」が2015年6月の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)で獣医学部の新設提案について愛媛県と同県今治市からヒアリングした際、学校法人加計学園の幹部が出席していて、学園の教員確保の見通しを巡る質疑等が行われたが、議事要旨には出席していた幹部の名前や発言の記載がないものの、その事実関係を政府側、提案者側双方の出席者が朝日新聞の取材に認めたと報じている。    

 加計学園側の出席者は加計学園系列の千葉科学大の吉川泰弘教授(現・加計学園新学部設置準備室長)などと伝えている。

 〈複数の出席者によると、吉川氏はヒアリングの場で、既存の大学の獣医学教育では、獣医師の新たなニーズを満たしていないなどと述べたという。政府側の委員からは教員確保の見通しなどの質問があり、吉川氏が答えたという。〉・・・・・・

 要するに出席者の中から朝日新聞にリークがあったということなのだろう。リークは秘密裏に加計学園に決められていく安倍晋三の政治的便宜によって行政が歪められることに我慢がならなかったといったことが理由として考えられる。

 無料記事の最後の方に、〈特区WGのヒアリングは非公開で、議事内容はまず、会合後速やかに作られる「議事要旨」で公表される。議事要旨は概要版で、すべてのやりとりが記載されたものではない。議事の詳細が分かる「議事録」の公表はヒアリングから4年後と決められている。〉との解説があるが、「議事要旨」に加計学園側の出席者名とその発言が秘密に付されていたなら、4年後に公表される「議事録」も同じく秘密に付されることになるだろう。

 「議事要旨」に記載されていない出席者とその発言が「議事録」で記載されていたら、前後が矛盾することになるからだ。

 但し問題は記事内容の真偽である。

 朝日デジタル記事が紹介している2015年6月のWGは6月5日と6月8日、なぜか2回開催されている。

 先ず6月5日の「国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング(議事要旨)から見てみる。

 内閣府の役人と獣医学部新設の提案者として愛媛県と今治市の役人が名前を連ねているが、加計学園の吉川泰弘とその関係者の出席は記されていないし、教員確保の見通しを巡る議論も記されていない。

 獣医学部に関する主な議事を抜き出してみる。

 議事は「国際水準の獣医学教育特区」に関して。愛媛県の役人が「添付資料」を示して獣医学教育空白地域である「四国」に国際水準の大学獣医学部を新設の必要性をかなり長い時間、様々に訴えている。 

 山下愛媛県地域振興局長「獣医師養成系大学でございますけれども、現在、全国で16大学、定員は930名となっておりますが、文部科学省告示の大学設置認可基準におきまして、定員増となる大学の設置等は一切認められないことになっておりまして、これまで約50年以上、新設されておりません。

 今回、特区指定を受けることにより、地域を限定して規制を解除し、新たな設置を認めていただきたいという提案でございます」

 そして国際的な防疫体制の強化や時代の要求に沿った国際対応が可能な獣医師の育成の必要性などを訴えている。

 愛媛県の役人が新設する獣医学部の事業内容を詳しく説明していながら、新設を予定している獣医学部の事業主体がどこの誰かは一言も触れていないし、他の誰もが一言も触れていない。

 八田達夫座長「それから、ここの獣医学部新設ということですが、これは大学そのものの新設ですか」

 山下地域振興局長「今のところ、大学新設と学部の新設も考えております」

 八田達夫座長「わかりました。どうもありがとうございました。

 それでは、委員の方から御質問をお願いします」――

 これ以外には次の遣り取りがある。

 阿曽沼委員(医療法人社団滉志会瀬田クリニックグループ代表)「3点ほど確認、質問させて下さい。まず最初に、今回の獣医学部の開設は、公設民営でやられるのですか、それとも私立大学として設置されるということでよろしいですか」

 山下地域振興局長「現状では、民設民営で考えております」

 2008年6月に今治市と愛媛県が構造改革特区に加計学園を事業主体として獣医学部の新設を提案しておきながら、加計学園に触れていないし、加計学園でなくても、事業主体として想定している大学名を一切口にしていない。

 余りにも不自然過ぎる。議論の全体は愛媛県側からの説明とそれに対する僅かな疑問の提示となっていて、何かを決めたということは何もない。

 だが、8月5日のブログで一度取り上げたが、WGのヒアリングに備えて2015年6月4日に内閣府に提出した「今治市国家戦略特別区域提案書」の中の「具体的な事業の実施内容」に書いてある次の説明は新設する獣医学部の事業内容そのもとなっていて、事業主体を想定していなければ、これだけの詳しいことは書くことはできないはずだ。  

 「国際水準の大学獣医学部の新設」

 「これまでの国立大学の研究者養成、私立大学の臨床獣医師養成と異なる公共獣医事を担う第三極の国際水準の大学獣医学部を空白地域の四国に新設する」
 「越境感染症や人獣共通感染症、国際的食の安全、バイオテロ等への危機管理と国際対応の資質を持った人材を育成する」
 「国際貿易自由化に伴う食品流通等で獣医学的支援の必要な水産、畜産、生物資源利用分野等との連携」
 「創薬研究での医獣連携など分野横断型応用ライフサイエンスの研究・教育と人材育成」

 もしこれが愛媛県や今治市が考えた事業内容であるならば、この事業内容に添うことのできる獣医学部を先ず募集しなければならない。だが、そういった手続きを取らずに内閣府が公募した事業主体に加計学園が応募し、採用されるという手続きを採ったのみである。

 要するに上記事業内容は加計学園が事業主体として提案したものであったから、提案書にこれだけの説明ができたのであり、このような事業内容に添う事業主体を募集する手続きも必要なかった。

 但し「提案書」に書いてある事業内容はあくまでも骨格であって、事業に関わる細部を問われた場合、役人では答えることができないはずで、加計学園関係者が出席しないことには間に合わなかったはずである。

 にも関わらず、加計学園関係者は出席していない。朝日デジタルの報道をまるきりのガセネタとすることのできない根拠がここにある。

 もう一つの根拠が2015年6月8日に開かれた関係省庁から聞き取りをするWGヒアリングであり、その「国家戦略特区ワーキンググループ(WG)議事要旨」から見てみる。ここで文科省は今治市への獣医学部新設に反対している。理由は新設の構想自体が“既存並み”であることを挙げている。

 出席者はWG委員3人と内閣府と文科省と農水省の役人合わせて9人。先ず内閣府の役人の発言から。

 2 議事 国際水準の獣医学教育特区(愛媛県・今治市)

 藤原豊内閣府地方創生推進室次長「それでは、始めさせていただきます。『国際水準の獣医学教育特区』ということで、愛媛県・今治市のほうから御提案をいただきまして、かねてから構造特区でもさまざまな提案をいただいていたのですけれども、今回かなりバージョンアップされて提案をいただいたこともありまして、既に成長戦略の成果ということでワーキンググループの先生方の御指示もいただきながら文科省のほうに案文を投げさせていただいているわけでございますけれども、ぜひその方向での議論を深めていただければと思っております」

 内閣府の藤原豊は「今回かなりバージョンアップされて提案をいただいた」と言っている。愛媛県や今治市が「バージョンアップ」できることは資金の提供額や奨学金提供人数やその額の拡大、アクセスの利便性の強化と言ったところで、肝心要の事業内容に関わる「バージョンアップ」は新設を計画している獣医学部の事業主体でなければできないはずで、前者だけの「バージョンアップ」だけで許されるはずはなく、後者の「バージョンアップ」を伴って初めて、より十分な形を取ることになるはずである。

 いわば事業主体が決まっていなければ、全体としての「バージョンアップ」の提案はできない。

 この「バージョンアップ」だけで足りなかったから、大学認可を与る文科省が2016年11月8日に加計学園に対して獣医学部の「構想の現状」について聴取したが、それでは不十分だからと、十分とすべき様々な注意点を箇条書きで書き連ねた「加計学園への伝達事項」なる文書を作成しなければならなかった。

 次の遣り取りを見ると、文科省が獣医学部新設に反対していることが分かる。

 北山浩士文部科学省高等教育局専門教育課長文部科学省専門教育課長の北山でございます。よろしくお願いいたします。

 この獣医系大学の新設についてでございますけれども、昨年夏以来、国家戦略特区ワーキンググループ、このワーキンググループで累次にわたって御説明を申し上げてきたかと存じます。構造改革特区の26次提案の対応方針で文部科学省から回答させていただいておりますが、具体的には、既存の獣医者の需要については、農林水産省さんに確認をしたところ、現時点では獣医師の需給に大きな支障が生じるとは考えにくいとのことでございました。

 このため、愛媛県・今治市が獣医系大学を新設したいということであれば、その既存の獣医師でない構想を具体化していただき、ライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要を明らかにしていただく必要があると考えております。

 文部科学省といたしましては、愛媛県・今治市より、既存の獣医師養成でない構想が明らかになり、そのライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになった場合には、近年の獣医師の需要の動向を考慮しつつ、特定地域の問題としてではなく、全国的見地から検討を行う必要があると考えています。

 この件につきましては、愛媛県・今治市に文部科学省から累次にわたってお伝えするとともに、直接御相談もいただいているところでございます。先日は、下村大臣のところに要望に来られました愛媛県知事に対して、下村大臣からこの旨をお伝えしているところでございます。

 まず提案者のほうで既存の獣医師養成なり構想を具体化していただく必要があって、下村大臣からもそのようにするようにということで指示をいただいているところでございます」

 要するに「既存の獣医者の需要については、農林水産省さんに確認をしたところ、現時点では獣医師の需給に大きな支障が生じるとは考えにくいとのこと」だから「既存の獣医師養成でない構想」、いわば“既存並み”を脱した構想を具体化してから提案して貰いたいと主張、現時点の“既存並み”の構想の獣医学部新設に反対している。

 愛媛県や今治市が構想の骨格に関しては相談に乗ることはできても、構想したことを実際の事業で具体化していくのは獣医学部新設の事業主体なのだから、具体化可能な細部は事業主体が存在しなければデザインできない。

 事業主体が存在しなければ、少なくともこの時点では文科省の要求に対して話は前に進まないことになる。前に進まないことを前に進めるために「総理のご意向」が文科省に対しても発令されることになったとも考えることができる。

 いずれにしても、誰もが「事業主体」と言う言葉も「加計学園」という言葉も一言も発していないが、文科省は事業主体の存在を前提としていなければ、「既存の獣医師養成でない構想」の要求はできないし、内閣府も農水省も事業主体の存在を暗黙の前提としていなければ、文科省のこの要求に対して話を合わせることはできない。

 北山浩士文部科学省高等教育局専門教育課長が「この件につきましては、愛媛県・今治市に文部科学省から累次にわたってお伝えするとともに、直接御相談もいただいているところでございます。先日は、下村大臣のところに要望に来られました愛媛県知事に対して、下村大臣からこの旨をお伝えしているところでございます」と発言したことに内閣府の藤原豊が、その遣り取りは承知していないから、具体的に説明してもらいたいと求めると、北山浩士は次のように発言している。

 北山浩士「公共獣医事を担う第三極の国際水準の大学獣医学部ということで、色々なことをやるということが言われております。例えば動物由来新興感染症の統御ということ、あるいは越境感染症の貿易ということでございますが、国、県において危機管理対応を行う人材の養成というものについては、獣医学教育のモデルコアカリキュラムというものをつくっておりまして、その中で既存の各大学で人獣共通感染症学であるとか、動物感染症学に関する教育研究というものを実施しているところでございます」

 今治市が提案している「食品貿易の安全確保、食料の安定供給、養殖産業振興」に関しても、既存の獣医学部が「モデルコアカリキュラムで食品衛生学あるいは食品衛生学実習というものを実施しておりまして、現在の食品衛生管理者や食品衛生監視員などに卒業生が就職しているところでございます」と、“既存並み”の構想だと排している。

 「ライフサイエンス分野における連携、研究、教育」、あるいはその他についても、「モデルコアカリキュラム」(国立高専のすべての学生に到達させることを目標とする最低限の能力水準・修得内容)として実施していることを理由に“既存並み”の構想に過ぎないと説明している。

 文科省の北山浩士のこのような反論も、今治市や愛媛県の先に事業主体を置いていなければ、このように具体的には説明できない。

 朝日デジタルの記事と安倍晋三や山本幸三の説明のどちらに信憑性を置くかと言ったら、前者に置くしかない。要するに「総理のご意向」=“加計ありき”を隠蔽するために議事録まで操作したと見るべきだろう。

 これまで何度か当ブログに、国家戦略特区諮問会議や国家戦略特区ワーキンググループが獣医学部新設に関しては今治市への新設という体裁でのみ議論し、事業主体がどこであるかは一言も触れていないのは安倍晋三の政治的関与によって加計学園に決めていくプロセスを隠蔽するためだといったことを確信に近い思いで推量してきたが、その政治的関与は確実に介在していたのだろう。

 但し安倍晋三も特区担当の山本幸三も否定するだろうし、リークした側も公に顔を出して証言する保証はない。逃げようとすれば逃げることができるが、「構造改革特区」では
今治市と愛媛県が共同で提出した「構造改革特区提案申請説明資料」には事業主体(当該規制の特例措置の適用を受けようとする者)として学校法人加計学園を挙げておきながら、国家戦略特区では加計学園に一言も触れずに今治市への獣医学部新設の議論のみで進めて、結果的に加計学園に決まったイキサツは余りにも不自然過ぎて、常識外となっている。    

 上記「朝日デジタル」の記事にあるように2015年6月5日の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)で加計学園新学部設置準備室長の吉川泰弘が既存の大学の獣医学教育では獣医師の新たなニーズを満たしていないなどと述べ、政府側の委員からは教員確保の見通しなどの質問を受けたということは、京都府が新設獣医学部の事業主体を京都産業大学と決めて内閣府に対して獣医学部新設の資料を提出したように、あるいは構造改革特区での認定を受けるために今治市と愛媛県が内閣府に対して加計学園を事業主体として獣医学部新設の資料を提出したのと同じように国家戦略特区での獣医学部新設を申請するについても今治市は事業主体をどこと決めて、事業の規模や教員の人数、募集定員、獣医学教育の内容等を説明した獣医学部の事業内容の資料を内閣府に前以って提出していたことを示すが、先に挙げた「添付資料」には事業主体という言葉も、加計学園という文言は何一つ記していないにも関わらず、大学獣医学部を新設の必要性を訴えていて、明らかに一般の手続きに反している。

 このことは国家戦略特区諮問会議が今治市への獣医学部新設を決めてから、内閣府が今治市への新設獣医学部の事業主体の公募に対して加計学園のみが応募、応募書類に初めて事業内容が記されている一般の手続きに反していることと符合する。

 万が一不合格となった場合、遣り直さなければならないことになる。遣り直しの失敗を避けるために一般的にはどこがどのような事業内容の獣医学部を今治市に新設を計画しているのか、その事業内容を議論して、その可否を決定するという手順を踏むはずだが、逆の手順を踏んで決定することができたのはやはり加計学園と決まっていたからだろう。

 決まっていたから、そのことを隠蔽するために国家戦略特区諮問会議でもワーキンググループでも事業主体には一言も触れずに今治市への獣医学部新設の議論だけとする議事録を作成することになった。

 そういうことでなければ、全ての辻褄が合わない。

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