民進党代表選:世論調査の結果を国民の最大公約数の声とし、野党共闘の場合の政策・理念とすることも一方法

2017-08-22 11:50:54 | 政治
 
 8月21日(2017年)次期代表選に立候補した前原誠司と枝野幸男が共同記者会見ログミー/2017年8月21日)を行った。今回は野党共闘に関して考えたことを記事にしてみたいと思う。

 前原誠司「政治家、政党の命は理念・政策です。とくに次の選挙は衆議院選挙でありますので、政権選択の選挙です。この政権選択をする選挙で理念・政策が合わないところと協力するということは、私はおかしいと思います。理念・政策と合うところとなら幅広く協力する。そういったスタンスで臨ませていただきたいと思っております。

 前政権で結ばれた4党の合意事項でありますけれども、4党が協力していろんな取り組みをされてきた。また協力をされてきた。そういった重みというものをしっかりと受け取めながら、是非についても見直しをさせていただきたいというふうに思っております。

 とにかく理念・政策、民進党が掲げる、私が掲げるAll for All、こういった考え方。内政については北朝鮮の脅威、そして中国の拡大路線。こういったものにどうしっかりと日本が対処していくか。その意味では現実路線、これにしっかりと考え方の合う政党との協力というものを目指してまいりたいと考えております。

 枝野幸男「野党間で我が党の主体性を持ちながら、できることを最大限やる。できないことはできない。そのメリハリをしっかりつけていくことが重要だと思っています。

 私は昨年の参議院選挙、幹事長として対応に当たりました。野党共闘とか選挙協力という言葉は、あのときも使っていませんしそういう意識ではありません。あのとき現実に実行できたのは、幅広い市民のみなさんとの連携の中で野党の候補者を1本化する。そのことはできました。

 そしてそれは成果を上げることが一定程度できたと思っています。それはそれぞれの党の理念・政策が違う中で、しかし自民党の暴走を止めて欲しいという市民のみなさんの声を受けて、できることできないこと、その範囲の中でギリギリの着地点を努力したからだと思っています。

 政権選択の衆議院選挙は一層困難が大きいと思っています。しかし一方で、地域でがんばっている仲間たちを1人でも多く当選させる。そのことによって今の政治の暴走に少しでも歯止めをかける。これも私たちの大きな責任だと思っています。

 理念・政策・主体性をしっかりと守った中で、できないことはできない、しかしできることはできる。それがどこなのか最大限の努力をしたいと思っています。

 前原誠司は理念・政策と合わない政党とは協力できない。枝野幸男は民進党の理念・政策・主体性を守りながら、取捨選択していく。

 どうも枝野幸男の野党共闘は抽象的で理解しにくい。前原誠司の方が明快である。

 但し選挙が理念・政策の選択であるとは限らない。なぜなら、断るまでもなく、国民の最大の利害は経済(=生活)だからだ。「テロ等準備罪」は自民党、公明党、日本維新の会を支持する国民は賛成の立場を取り、野党支持の国民は反対の立場を取るという二分した賛否を占めることになったが、2013年12月6日に成立、2014年12月10日に施行した特定秘密保護法にしても、2015年9月成立の安保関連法制にしても、多くの国民は反対の立場を取ったが、選挙ではいずれも自民党が大勝、安倍内閣支持という結果を出したのも、選挙が理念・政策の選択であるとは限らないことと、経済(=生活)に直結しない理念・政策の場合は、国民は左程問題にしないことのの証明となる。

 安倍晋三は国民の最大の利害は経済(=生活)だということを十分に弁えていて、憲法改正やその他、国家主義的な自身の政策は争点隠しを行い、国民の経済(=生活)に最も直結する消費税増税先送りも味方につけてアベノミクスを争点の前面に掲げることで経済(=国民の生活)で勝負、成功した。

 だからと言って、民進党が理念・政策の異なる野党と連携したり、連立を組んだりすると、自民党、公明党、日本維新の会から野合と批判されて、支持失点の一大要素となる。

 だが、厳密に言うと、自民党にしても民進党にしても、各政党のすべての議員が理念・政策を一致させているわけではない。自民党内には右から左まで、幅広い勢力を混在させているし、民進党にしても、同じ混在勢力となっている。

 今回の代表選にしても、前原保守vs枝野リベラルと表現されている。だが、自民党にしても民進党にしても一応は統一した体裁を保っている。

 総裁選、あるいは代表選で最大の支持を得てそれぞれの地位に就いた総裁・代表の理念・政策がその任期中、各党の理念・政策をリードすることは当然であるが(総裁選・代表選にしても、理念・政策のみで総裁・代表を選択するわけではない)、いわゆる総裁派閥・代表派閥の理念・政策のみを党全体の方針とすることは、いわば総裁選・代表選に敗北した、理念・政策のみが基準となっているわけではないにしても、同じ国民の選択を受けた勢力の理念・政策を無視することになって、党内少数派無視の驕りをそこに介在させることになる。

 もしこのことが許さるなら、政権党を支持する国民の利益に適う首相の理念・政策から出た方針のみを推し進めて、政権党を支持しない国民の利益を無視する驕りにしても許されることになる。

 民進党が野党の中では国民の大多数の支持を得ているから、民進党の理念・政策のみを優先させるということも、一種の思い上がりであって、同じ構図を取ることになる。安部政権が選挙で国民の大多数の支持を得たのは自身の政権だからと言って、自身の理念・政策のみを推し進めたとしたら、明らかにゴリ押しとなって、そのこととさして変わらない。

 少数野党を支持する少数の国民も日本国民である以上、その国民が支持する少数野党の政策もそれなりに尊重されるべきであって、その尊重は少数派の国民の生存への尊重そのものとなって反映していくことになる。

 勿論、尊重できるかできないかの線引きに関しては限度というものがある。安倍晋三のような国家主義を理念・政策としている政治家、そして安倍晋三を国家主義の点で、その理念・政策を支持している国民を尊重しろと言われても、同じ日本国民としての基本的人権とその他の権利は同等に持つが、尊重という点では埒外の限度を設ける以外ない。

 民進党の長島昭久が今年の4月に「共産党との選挙共闘という党方針は、私にとって受け入れがたい。保守政治家として譲れない一線を示す」との理由で離党したが、民進党内の保守派は共産党に対する拒絶反応には強いものがある。共産党の理念・政策を支持する国民が少数派と言えども存在する以上、尊重しろと言われても、そこに限度を設けざるを得ないだろうが、次の総選挙で政権交代はとても無理であっても、安部政権に反対する野党全体でその政権運営に最低限ブレーキをかけるだけの勢力伸長が望めるならいいが、各野党が各選挙区に個々に立候補者を立てたなら、あるいは共産党が全選挙区に候補屋を立てたなら、野党同士が足の引っ張り合いを演ずることになって、これまでの選挙と同様に逆に安部政権を利することになり、却ってその延命に手を貸すことになるのは目に見えている。

 安部政権にブレーキをかけるためには共産党の力が必要であることも現実問題として横たわっている。

 現実を選んで安部政権に対して少しでもブレーキをかける方策を選ぶか、理念・政策を優先して、却って安部政権の延命に手を貸す逆説を選択するか、明確に分ける方法もあるが、選挙区によっては当選するためには理念・政策は別にして共産党の力を借りたいという候補者も存在するに違いないから、現実はなかなか複雑である。

 前者・後者の中間を取るという方法がないではない。理念・政策の異なる点に関しては世論調査の結果を国民の最大公約数の声として、その調査結果を政策として掲げるという方法である。

 このことを憲法に関わる世論調査を例に取って話す都合上、その前に二人の憲法政策を見てくる。

 憲法改正

 前原誠司「安倍政権の下での憲法改正は反対だというのは、私は国民の理解を得られないと思います。野党第一党として、そして政権を目指す政党として、しっかりと国のもといである憲法の議論は行っていく。そういうリードをしていく代表でありたいと、こう考えております。

 他方で、2つのことを申し上げたいと思います。安倍さんが当初おっしゃっていました、「今年中に憲法改正の草案をまとめて、来年国会で発議する」。こんな性急な拙速な話はありません。

 なぜ国民投票を行うかというと、ほかの法律と違い、憲法というのは権力者を縛る、そういうものであるからであります。

 1章1章、1条1条、国民のみなさま方にご理解をいただき、そして国民の総意として、どこが憲法として変えるべきなのか、残すべきなのか、という議論は年単位で私はかかると思っておりますので、拙速な憲法改正のスケジュール、ましてや安倍さんの、言ってみれば実績づくり、あるいは思い出づくりに与するつもりはまったくありません。

 また同時に中身については、私は自分自身の考えがありますが、党のみなさま方全体を信頼をしておりますので、しっかりそこは議論していただいたらいいと思います。

 1つだけ付け加えるとすれば、安全保障法制というのは、あれは憲法違反の下で作られました。したがって、あのあととそして前ではまったく状況は異なった。

 自衛隊を憲法に書くということをしたとしても、あれを上乗りして、マネーロンダリングのように、まさに自衛隊、憲法違反を逃れようとすることについては、私はまったく考え方を異にするということについては申し上げておきたいと思います」

 枝野幸男「民主主義を強化し、国民の人権保障をより高め、あるいは国民生活や国民経済をよりよくするために憲法を変える必要がある、あるいは変えたほうがより進む、ということがあるのであれば、私はその議論は積極的に進めるべきであると思っています。

 これまでも党の憲法調査会長として、そうした議論をリードしてきたという自負があります。ただ、今のところ、そうしたものがあるという結論は、さまざまなテーマについて議論をしてきていますが、ありません。

 今あえて申し上げあれば、これは憲法を変えないと対応ができない可能性が高いテーマとして、内閣総理大臣、内閣による衆議院の解散権。

 これは多くの先進議院内閣制の国でもはや時代遅れになっています。これについて、さらに議論を深めていくということは積極的に進めてまいりたいと思っています。

 一方で憲法9条に関しては、立憲主義を破壊する解釈変更、安保法制。今、憲法9条に手をつければ、それを事後的に認めることになる、追認をすることになります。

 私どもの綱領には、安全保障について専守防衛を前提にと書いてあります。専守防衛にも反しています。まず、この安保法制の憲法違反の部分を少なくとも消さなければ、9条について議論の余地はないと思っています。

 では、2017年3月実施の次の世論調査から、憲法に関わる国民の最大公約数の声を見てみる。ここで言う「最大公約数」とは、「種々の意見の間にみられる共通点」(goo辞書)のことを意味する。

 《世論調査 日本人と憲法 2017》NHK NEWS WEB/2017年4月29日)     

 全国の18歳以上の4800人を対象に電話ではなく、直接会って聞く個人面接方式で実施し、55.1%に当たる2643人の有効回答。

 「憲法改正は必要か」

 「必要」43%
 「必要ない」34%
 「どちらともいえない」17%

 「『戦争の放棄』を定めた憲法9条を改正する必要があると思うか」

 「改正する必要があると思う」25%
 「改正する必要はないと思う」57%
 「どちらともいえない」11%

 この世論調査だけではなく、他の世論調査でも同じ傾向が見受けられるが、憲法9条改正に関しては「改正する必要はないと思う」が国民の最大公約数の声となっている。

 但し「憲法改正」そのものに関しては意見が別れている。どの条文・条項を変えたいのか、あるいは付け加えたい条文・条項があるのか、さらに世論調査等の方法を使って国民の最大公約数の声を聞き取らなければならない。

 このように世論調査の結果、あるいはその他から国民の最大公約数の声を引き出していく。そして国民の最大公約数の声を共闘する場合の理念・政策に据えて選挙を戦えば、あくまでも国民の最大公約数の声に従うことになって野合という批判は避けることができる。

 もしこの方法を間違いだと言うなら、安倍晋三が国民の大多数が反対し、あるいは審議時間が短くて拙速な成立だと批判し、世論調査に現れていた国民の最大公約数の声を無視して法案を数の力で強行採決し、成立させてきた遣り方は正しいことと認めなければならない。

 少なくとも世論調査の結果を国民の最大公約数の声と見做して、野党共闘する場合のそれぞれの理念・政策の違いを乗り超える一方法とはなる。

 但し財政再建や社会保障政策の充実のために引き上げざるを得ないと判断した場合の消費税の増税が最大の利害となっている生活を脅かすという理由で国民に不人気で政策の遂行にブレーキがかかるようなら、政治の側は自らの声で消費税増税賛成を国民の最大公約数の声とすべき最大限の努力を払わなければならないことは断るまでもないだろう。

 財政再建と社会保障政策の充実は回り回って国民の最大の利害である生活に於ける将来的な利益となって戻っていくことになる。その利益が不公平にならないような、限りなく公平となる制度設計を国民に示さなければならない。

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