民主党政権時の初代首相鳩山由紀夫は沖縄の米軍普天間飛行場の移設を自民党政権が決めた県内辺野古移設を「国外、最低でも県外」の公約を掲げ、国外案としてグアムやテニアン島、県外案として鹿児島県の徳之島、その他を模索したが、徳島案は米側が辺野古移設が最善とする態度を取りっていること、外務省では県内移設が主流派を占めていたこと、いわば「国外・県外」で積極的に動かなかったこと、県外として徳之島以外に全国知事会で引き受けてくれる自治体を求めたが、知事の誰一人として手を上げなかったことなどで「国外、最低でも県外」は行き詰まり、自民党時代とほぼ同じ辺野古移設に回帰することになった。
但し鳩山由紀夫の貢献なのか、その「国外、最低でも県外」が沖縄県民の大多数の意識を「普天間の辺野古移設反対・県外移設」で高めることとなった。
その一方で「国外、最低でも県外」の挫折はその後の民主党、さらに維新の党と合流した民進党は負の遺産として引き継ぐこととなり、2017年8月21日告示の今回の民進党代表選挙で立候補した前原誠司と枝野幸男の民主党本部で行われた同日共同記者会見でも沖縄の基地問題で記者から質問を受けることになった。
「共同記者会見」(ログミー/2017年8月21日) 記者「沖縄タイムスのウエチです。両候補にお聞きします。野党として協力をしている自由党だったり社民党も、辺野古という問題を重要政策に掲げています。また、民進党の沖縄県連と党本部とも、辺野古問題についての解決策については差があると思いますが、両候補がどのように普天間問題を解決していくかというスタンスをお聞かせください」 枝野幸男「まず、今の政府が進めている、沖縄の県民の多くのみなさんの声をないがしろにする、逆なでするような強引なやり方、これはやめさせなければならないと強く感じています。では、どういう解決策を出すか。 これも民主党政権の反省と教訓の1つです。簡単に拙速に答えの出せる話ではないということがあの時の大きな教訓であり、そのことによってとくに沖縄のみなさまを中心に大きな失望を与えてしまいました。 まずやることは、あの時のプロセスを含めて、現状、そして背景、それについての検証を始めなければいけないと思っています。その検証の中から、リアルな、現実的な、そして沖縄のみなさんも、そして日本政府としても、あるいはアメリカとしても納得できる答えを見出していく。その努力は、いろいろな経緯のある我々ももう始めなければならないと思っています」 前原誠司「私もまず沖縄県民のみなさま方にお詫びから申し上げたいと思います。旧民主党政権の時に辺野古への移転を取り消して、そして県外、できれば国外と、こういった期待だけを県民のみなさま方に持たせてしまい、結局それができずに辺野古に戻ってしまった。 そして期待から失望に変えてしまったということについて、改めて沖縄県民のみなさま方にはお詫びを申し上げたいと思っております。その上で、今回の辺野古への移設というものは、他の沖縄の基地負担の軽減というものとパッケージで、これは私も外務大臣として進めさせていただきました。 アメリカは当時は、辺野古への移設を認めなければ他の基地の返還は認めないということに固執をしておりましたけれども、それを後の玄葉外務大臣の時に、いわゆるデカップリングというやり方をして、辺野古の決定がなされていなくても、基地の返還、沖縄の負担軽減に取り組みをさせていただく仕組みを作らせていただきました。 我々が沖縄のみなさま方にご迷惑をかけたことを認識しつつ、今のプロセスというものを、我々が戻ってしまったわけで申し訳なかったわけでありますが、進めてきたプロセスでございますので、これについてしっかりと進めるということが大前提になると思っておりますが。他方で、沖縄県民のみなさま方のお気持ちというものをしっかりと汲み取るような話し合いのプロセス、こういったものも同時並行でしっかりと受け止めるのが政治の役割だと、このように感じております」 |
枝野幸男は民主党政権時の鳩山由紀夫の「国外、最低でも県外」の失敗を「反省と教訓の1つ」と挙げて、前原誠司は失敗そのものと見做して謝罪している。
その一方で枝野は鳩山以来の経緯を検証、その中から「リアルな、現実的な、そして沖縄のみなさんも、そして日本政府としても、あるいはアメリカとしても納得できる答えを見出していく」と、「リアル」という言葉を使いながら、その意味とは程遠い具体性が何もない抽象的な解決策を提示している。
現在の安部政権の辺野古移設への進め方を「沖縄の県民の多くのみなさんの声をないがしろにする、逆なでするような強引なやり方、これはやめさせなければならないと強く感じています」と強く批判しているが、沖縄対日米の利害対立を解消できる具体性と実効性ある移設案を提示できなければ、批判は言葉は達者だが、中身はないと言うことになる。
前原誠司の方は「デカップリング」という言葉そのものに移設の考え方が現れている。意味を知らなかったから、ネットで調べてみると、国際間の農業に関わる貿易交渉で使われいる言葉で、「生産、消費あるいは貿易にひずみを与えない方法で農民の生活を支持するという考え方を示す用語」だそうだ。
沖縄の基地問題に当てはめると、日米同盟を損なわないために辺野古移設を進めるが、沖縄にも様々な支援を行う」ということになる。
要するに民主党政権が鳩山由紀夫の「国外、最低でも県外」が頓挫した以後進めてきた沖縄全体の基地負担の軽減をパッケージとした辺野古移設を今後共進めていくという意味を取ることになる。
これが「進めてきたプロセスでございますので、これについてしっかりと進めるということが大前提になると思っております」という言葉になって現れている。
要するに安部政権の日米同盟最重要視の姿勢と何も変わらない。
「他方で、沖縄県民のみなさま方のお気持ちというものをしっかりと汲み取るような話し合いのプロセス、こういったものも同時並行でしっかりと受け止めるのが政治の役割だと、このように感じております」と言っている最後の言葉も、沖縄県民側からしたら、その大多数が県外移設を求めている以上、民進党が政権を取ったとしても、万が一という形容詞を付けた方がよいかもしれないが、100%近い期待外れとなるに違いない。
改めて断るまでもなく、中国は国家体制維持のためには中国国民の基本的人権、思想・言論の自由を厳格には守らない共産党一党独裁国家であって、そのためには、あるいは共産党一党独裁のルールを守らせるためにはときには民主的なルールとは相容れない手段を選ばない強権的手法で国民を律しようとする。
政府を批判する者、反政府活動をする者に対しては「国家政権転覆煽動罪」をかけ、ときには抗議活動の場からそのまま拘束し、正規の裁判をかけたとしても、公平に行われることはなく、国家が望む罪状を着せて、長い刑務所生活を送らせることで社会での活動を取り上げる。
いわば反政府活動を隔離する。例え釈放しても軟禁状態で当局の監視下に置き、第三者との自由な接触を禁じて、同じく反政府活動は疎か、一般的な社会生活もできないようにする。
一方、対外的には国外向け、国内向けに核心的利益と位置づけた政策に関しては決して譲らず、固執し、対外的な海洋進出に関しては国際ルールを無視して、力による現状の変更を辞さない態度を取っている。
アメリカはトランプはいざ知らず、一般的には日本と同様に「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的な価値」を厳格に守る民主主義国家であって、このような民主主義のルールを国内外に対する政治姿勢としている。
当然、アメリカは軍事力を使った“力による現状変更”を迫る場合はその前に民主主義のルールに則った話し合いを同じテーブルに就いて行う。
対して中国は対外的に共産党一党独裁の国家体制と領土的野心から出ている一度こうと決めた領土・領海に関わる核心的利益を守るために同じテーブルについて民主主義のルールに則って話し合って解決を図ることには期待が望めないことになる。
米中どちらが民主主義のルール、国際間のルールに逆らう領土的な侵略性を国家体制の体質として色濃いかと問うとしたら、圧倒的に中国に軍配を上げざるを得ないはずだ。
だからこそ、日本はアメリカと日米安全保障を結び、結んだだけでは安心できずに様々に軍備を増強し、各兵器の性能を高めていく努力を続けていかなければならない状況に立たされている。
この状況はそうせざるを得ない相手が存在するからであろう。中国が対内外的に平和国家であったなら、日米同盟は相当部分、重要性を失う。ほんの少しの対ロシア警戒と対北朝鮮警戒を割くだけの同盟で済む。
もし日本が日米安全保障条約を破棄して中国と軍事同盟を結んだ場合、中国は同盟国である日本を侵略するだろうか。侵略したら、中国は世界で最も危険な国というレッテルを貼られるだろうし、狂犬国家としての栄誉を戴くことになるだろう。
アメリカは日本が同盟を破棄しても、民主主義国家として日本をどうかする考えはなく、中国の米侵略の万が一の危険性に備えることになるはずだ。
もし米中戦争が勃発するような状況になったなら、日本は中立を宣言すればいい。中国は日米同盟破棄で米軍基地のなくなった日本に戦争を仕掛けても、米国を痛めつけることにはならない。
日中同盟締結は中国はその条件として尖閣諸島を中国の領土として要求する可能性は出てくるが、日本の領土として認めなければ、日米同盟を維持、それを破棄して中国とは軍事同盟を結ばないと主張すれば、中国にとってどちらの利害を優先すべきか、簡単に判断できるはずだ。
もう一つ、中国は日本国内に中国の軍事基地を要求する可能性はあるが、日本も同じように中国国内に日本の軍事基地を要求すればいい。すべての点に於いて対等性を求めたとしても中国は日本がアメリカの同盟から離れる中国にとっての利益を選択するはずだ。
勿論、この交渉は秘密裏に行い、決着を見てから公表することにする。
日米同盟破棄・日中同盟締結で沖縄の米軍基地は普天間に限らず、一切なくなることになる。沖縄の米軍基地からの解放となる。
日本国内の中国軍基地は本土内に限定して、米軍基地跡に設ければいい。
北朝鮮にしても中国と軍事同盟を結んだ日本を簡単には攻めることはできない。
結果として日本の安全保障は米と軍事同盟を結ぶよりも、中国と結んだ方がより効果的、日本の国土と日本国民の生命・財産はより安全となる。