8/10日報問題閉会中審査での小野寺五典の答弁に見る国民に対する説明責任の欠如、厳格な事実解明の欠如

2017-08-11 12:00:22 | 政治

 2017年8月10日、PKO自衛隊日報問題解明の閉会中審査が衆参両院で行われたが、参院は外交防衛委員会で行われた。NHKは中継放送をしなかったが、「NHK NEWS WEB」の記事に出ている防衛相の小野寺五典の答弁の一つが国民に対する説明責任よりも次の不祥事に備えることを優先しているようにみえた。

 「NHK NEWS WEB」を案内として、記事では質問者を「民進党」で纏めているが、トップバッターに立った福山哲郎の質疑をYouTubでダウンロードして視聴したところ、うまくヒットさせることができたから、文字起こしして、詳しく見てみることにした。

 福山哲郎はフジテレビが7月25日に入手したと報道した日付が2月13日の、その日の幹部会議の内容を記した「防衛省幹部の手書きメモ」を印刷した紙を手にして、出席に名前を連ねている辰己昌良・前統合幕僚監部総括官に「幹部会議でこのような発言をしたのか」聞いた。

 メモの内容は廃棄したとしていた日報の電子ダータが出てきたことの扱いを稲田朋美に問う内容になっているという。

 特別防衛監察報告書の公表は2017年7月27日で、フジテレビ報道の2日後だが、報告書には記載されていない。

 辰己昌良「特別防衛監察の中で私自身、この調査に誠実に協力し、聴取に対して私の知っていることは真摯にお答えをしてきたところでございます。私の証言も含めまして、今回防衛監察本部が一方面の主張だけではなく、多方面からの主張等を総合的に勘案して事実関係を構築し、客観的な資料等を主軸として事実関係が認定され、『陸自に於ける日報のデータの存在について何らかの発言があった可能性は否定できないものの、陸自における日報の存在を示す書面を用いた報告がなされた事実や、非公表の了承を求める報告がなされた事実はなかった。また、防衛大臣により公表の是非に関する何らかの方針の決定や了承がなされた事実もなかった』と言うことが認定されているものと承知をしておりますので、これ以上のことについて申し上げることは差し控えたいと思っております」

 二重カギ括弧内の文飾を施した発言は特別監察報告書内の文言を丸読みしたものである。

 辰己昌良は「特別防衛監察の聴取に対して真摯にお答えをしてきた」と言っているが、報告書を全てとしてそれ以外は答えない姿勢は国民に対する説明責任に真摯に対応しようとする姿勢の欠如にそのまま繋がっている。

 この姿勢の欠如は事実解明に真摯に応えようとする姿勢の欠如を示していることになる。

 福山哲郎「防衛監察では真摯に答えるけども、国会の場では答えられないということはどういうことですか。防衛大臣、防衛監察では答えられるけども国会では答えられないというのは、それで日報問題の疑惑が晴れるのですか」

 小野寺五典「今回特別監察をするに当たって特別監察本部が様々な形で事情を聴いたということは報告を受けておりますし、それぞれの該当する方々が真摯にお答えされたということなんだと思います。

 ただ監察の内容ということを考えますと、例えばこの監察の中のそれぞれの言い方、証言が外に詳(つまび)らかになることになりますと、今後同じような監察をする場合にしっかりとした証言を得ることが難しくなる可能性も出てまいります。

 これは防衛監査という一つの役割の中で、(辰巳)審議官がお話されたような内容になっていると私は理解をしております」
 
 福山哲郎「全く答えていない。(辰巳の)今の姿勢についてどう思うか聞いてるんです。防衛監察の遣り方を聞いているわけではありません」
 
 小野寺五典は「防衛監査という一つの役割の中で、(辰巳)審議官がお話されたような内容になっていると私は理解をしております」との文言で辰己昌良の答弁は防衛監察での証言そのままを伝えている発言だとする一方で、特別防衛監察の証言が外部に漏れると次の監察で正確な証言を得ることができないと矛盾したことを言っている。

 もしそういう事態が起こり得る可能性を事実としているなら、特別防衛監察の聴取に対して辰己昌良が証言したことを「詳らかに」載せていない体裁の報告書ということでなければならない。

 断るまでもなく、「詳らかに」報告書に載せていたなら、「今後同じような監察をする場合にしっかりとした証言を得ることが難しくなる可能性」が生じることになるなるからである。

 しかしこのことは国会答弁で詳しく話さないことを正当化するための単なる口実に過ぎないはずだ。なぜなら、何よりも優先させなければならないことはしっかりとした国民に対する説明責任であって、それを果たすためにはどのような特別監察であっても、「しっかりとした証言を得ること」、しっかりとした証言をさせることを特別監察本部の役割としなければならないからだ。

 今後の証言獲得の困難を楯に「詳(つまび)らかに」できないという理由で国民に対する説明責任を満足に果たさなくていいとする口実など許されるはずはない。

 口実を設けて国会での詳らかな証言を避けるということは野党追及を防衛省の防衛監察本部が日報問題を巡って設置した特別防衛監察の2017年7月27日公表の報告書の通りで凌ぐということを意味することになる。それが調査した事実の全てだとして。

 この点にこそ、最優先しなければならない国民に対する説明責任の順位を下げた姿勢を窺うことができる。辰己昌良の上記答弁がまさに同じ姿勢となっている。

 と言うことは、既に触れたように特別監察の報告書自体が証言を「詳らかに」載せていない、いわば国民に対する説明責任の順位を下げた姿勢で書かれた内容となっていることを示す。

 この順位降格は厳格な事実解明の順位降格と対を成すのは断るまでもない。前者によって後者は導き出され、後者によって前者を成り立たせることになる密接な相互関係性を両者は築き合う。

 もし特別防衛監察が国民に対する説明責任の順位と厳格な事実解明の順位を同時併行で下げた監察であったなら、いわば事実の厳格な追求を後回しにしていたなら、取調べる側は順位下げの自らの利益に一致させるために手心を加える姿勢で取調べを受ける側に向き合うことになり、取調べを受ける側も手心を加えられることによって(答を用意してくれている場合もある)相手が目指す利益に気づいて、その利益に添おうとする、両者共に忖度を働かせて、程々の取調べとその取調べに対する程々の供述で手を打つという利害の一致を物の見事に完成させるケースが生じる。

 そういったケースに当てはまるはずはなく、特別監察に何の隠し立てもなく誠実に証言したと言うなら、国会での野党の追及に対しても同じように何の隠し立てもなく積極的な姿勢で誠実に答弁できるはずだ。

 逆の展開を取っていること自体が取り調べる側と取調べを受ける側の無難に収めるための両者双方の忖度と利害一致で成り立たせた報告書であり、そのような国答弁という性格を帯びていることになる。

 勿論、国民に対する説明責任の姿勢、厳格な事実解明の姿勢を欠いていることを端緒とした上記姿勢なのは断るまでもない。

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