秋篠宮の大嘗祭国費充当疑義発言無視は安倍晋三の手を経た、あるいは宮内庁による天皇の政治利用

2018-12-06 12:34:39 | 政治
                                      

 秋篠宮が53歳の誕生日を11月(2018年)30日に迎えるに当たって11月22日に記者会見を行い、皇室行事である宗教色が強い大嘗祭に国費充当は適当かと疑義を呈したことに関して日本国憲法第1章第4条1項の「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」とする天皇の政治的行為の禁止規定・天皇の政治的中立性に抵触する発言とはならないかといった疑問が起きた。

 一昨日12月4日(2018年)の当ブログにも取り上げたが、問題となっている記者会見での発言を再度ここに記載する。

 「秋篠宮記者会見」(宮内庁サイト/2018年11月22日)

 記者「殿下にお尋ねいたします。お代替わりに関する日程や規模について,いろいろ宮内庁の方でも発表があり,決まりつつありますが,先ほど殿下には皇嗣となられる公務の在り方についてのお考えをお聞きしましたが,即位の行事や儀式についてもお考えがあればお聞かせいただきたく思います。

 秋篠宮「行事,そういう代替わりに伴う行事で,いわゆる国事行為で行われる行事,それから皇室の行事として行われるものがあります。国事行為で行われるものについて,私が何かを言うことができるかというと,なかなかそういうものではないと思います。そういうものではないんですね。一方,皇室の行事として行われるものについてはどうか。これは,幾つかのものがあるわけですけれども,それについては,ある程度,例えば私の考えというものもあっても良いのではないかなと思っています」

 記者「具体的に」

 秋篠宮「具体的にもし言うのであれば,例えば,即位の礼は,これは国事行為で行われるわけです,その一連のものは。ただ,大嘗祭については,これは皇室の行事として行われるものですし,ある意味の宗教色が強いものになります。私はその宗教色が強いものについて,それを国費で賄うことが適当かどうか,これは平成のときの大嘗祭のときにもそうするべきではないという立場だったわけですけれども,その頃はうんと若かったですし,多少意見を言ったぐらいですけれども。

 今回も結局,そのときを踏襲することになったわけですね。もうそれは決まっているわけです。ただ,私として,やはりこのすっきりしない感じというのは,今でも持っています。整理の仕方としては,一つの代で一度きりのものであり,大切な儀式ということから,もちろん国もそれについての関心があり,公的性格が強い,ゆえに国の国費で賄うということだと。平成のときの整理はそうだったわけですね。ただ,今回もそうなわけですけれども,宗教行事と憲法との関係はどうなのかというときに,それは,私はやはり内廷会計で行うべきだと思っています。

 今でも。ただ,それをするためには相当な費用が掛かりますけれども。大嘗祭自体は私は絶対にすべきものだと思います。ただ,そのできる範囲で,言ってみれば身の丈にあった儀式にすれば。少なくとも皇室の行事と言っていますし。そういう形で行うのが本来の姿ではないかなと思いますし,そのことは宮内庁長官などにはかなり私も言っているんですね。ただ,残念ながらそこを考えること,言ってみれば話を聞く耳を持たなかった。そのことは私は非常に残念なことだったなと思っています」

 秋篠宮の発言を纏めると、即位の礼以後に行う大嘗祭に関しては「宗教色が強い」ことから、「宗教行事と憲法との関係」から言って、いわば日本国憲法の政教分離の原則に則った場合、「国費で賄うことが適当かどうか」、政教分離の原則に抵触するのではないか、国費ではなく、「私はやはり内廷会計(天皇家の経費)で行うべきだ」と疑義を呈している。

 この発言には同じ記者会見の中に前段部分がある。

 記者「殿下にお伺いします。殿下は来年5月の代替わりに伴い,皇位継承順位第1位の皇嗣となられます。新たなお立場への抱負をお聞かせ下さい。公務の在り方や分担について新天皇となられる皇太子さまとどのような話し合いをされ,殿下がどのようにお考えになられているのか,あわせてお聞かせください」。

 秋篠宮「(発言前半は省略)これは抱負になるのかどうかは分かりませんけれども,これからも様々な公的な仕事をする機会があります。時として,例
えば宮中で行われる行事等については,それは平成の時代にも,行い方が変わったり,今の両陛下が変えられたものもあるわけです。

 そういうものについては随時話合いを,既にしているものもありますが,(今後も)していく必要があろうかと考えています」――

 丸かっこ付きの(今後も)の注釈は原文のママ。

 記者が秋篠宮自身の新たな立場に向けた抱負と代替わり後の公務の在り方や分担について皇太子と話し合っているのか、秋篠宮自身はそのことについてどう考えているのかと質問したのに対して秋篠宮は「抱負になるのかどうかは分かりませんけれども」と断りながら、宮中行事等の変化を"抱負"の形で述べている。

 「宮中で行われる行事等については,それは平成の時代にも,行い方が変わったり,今の両陛下が変えられたものもあるわけです」――

 時代の変化と共にある皇室の変容・政府の皇室に対する考えの変容についての言及となっている。

 「平成の時代にも,行い方が変わった」部分の多くは政府主導の変化であり、「今の両陛下が変えられたもの」とは皇室提案による100%なのか、一定程度なのか、いずれかの政府追認の変化ということを示唆していることになる。

 そして政府提案であろうと、皇室提案であろうと、宮中行事等の変化について、公務の在り方や分担にも関係することだが、政府と「随時話合いを,既にしているものもあり」、「(今後も)していく必要がある」と答えている。

 要するに"抱負"の形で述べた発言は宗教色が強い大嘗祭は皇室行事でもあることから、政教分離の原則上、国費充当ではなく、内廷会計(皇室経費)充当が適当とする秋篠宮自身があとで主張していることの伏線となっている。

 と言うことは、「既にしている」「随時話合い」の中には秋篠宮自身が疑義を呈した大嘗祭国費充当に関しても入っていた可能性が生じる。12月4日の当ブログでも秋篠宮の疑義は天皇家全体に関係していくことゆえに天皇や皇太子を差し置いて主張する類いのものではないことから、天皇家全体で共有する疑義ではないかと書いたが、話合いをしていながら聞き入れられなかったことから、大嘗祭国費充当の疑義に関しては「宮内庁長官などにはかなり私も言っているんですね。ただ,残念ながらそこを考えること,言ってみれば話を聞く耳を持たなかった」という発言になったはずだ。

 この発言は秋篠宮の疑義に関わる主張が受け入れられなかった、無視されたという意味を取る。だが、宮内庁側はそうは受け止めていない。「NHK NEWS WEB」(2018年12月3日 17時41分) 

 12月3日定例の記者会見。

 宮内庁次長西村泰彦「政府の決定に反対をなさっているものではなく、宮内庁が、お考え、投げかけに、しっかりとした返答をしなかったことへのご叱責と受け止めております。

 意見の違いはあるとしても、宮内庁としての考えをご理解いただくことは必要で、二度とこのようなことがないよう、しっかりと対応して参りたい」

 2016年8月8日、当時82歳の現天皇が生前退位の意向をビデオメッセージで表明した。2017年6月9日、天皇の退位を一代限りで認める特例法が参院本会議で可決・成立した。2017年12月22日閣議決定の2018年度当初予算案の中に政府は天皇の退位と皇太子の即位関連の準備費用として35億6千万円を計上した。

 この計上から約3ヶ月後の2018年4月3日に「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う国の儀式等の挙行に係る基本方針」を閣議決定し、これらの儀式を「国事行為である国の儀式として、宮中において行う」などと決めている。

 この基本方針閣議決定の2018年4月3日から約8ヶ月も経っていると言うのに11月22日の記者会見で秋篠宮は大嘗祭国費充当の疑義を申し立てている。言葉では「政府の決定に反対」とは直接的に言っていなくても、政府が既に約8ヶ月も前に決定したことに対する疑義であること、その政府決定が宮内庁長官に伝えていた疑義に何ら応えていないことからすると、「政府の決定に反対」の意思表示を色濃く漂わせた疑義であると見なければならない。

 ところが、宮内庁次長の西村泰彦はこのような意思表示を一切無視して、宮内庁が秋篠宮の疑義に「しっかりとした返答をしなかったことへのご叱責と受け止めております」と、叱責の形に変質させてしまっている。西村泰彦のこの"叱責説"は宮内庁全体の考えでなければならない。西村泰彦個人の考えとして発言したものであっても、宮内庁全体の考えでなければ、宮内庁長官がその発言は宮内庁全体の考えではないと否定しなければならない。

 だが、現在のところ否定してはいない。西村泰彦が「政府の決定に反対しているわけではない」としたのは、そうした方が政府にとって好都合だからだろう。反対とした場合、日本国憲法が規定している天皇の政治的行為の禁止規定、いわば天皇の政治的中立性の問題に絡んでくる。

 官房副長官の西村康稔(やすとし)も2018年11月30日の閣議後記者会見で、「あくまで殿下ご自身の個人としてのお考えを述べられたもので、国政に影響を与えるものではないということから、憲法上の問題は生じない」(「NHK NEWS WEB」(2018年11月30日 11時56分)と発言、国政に影響を与えるような政府決定への反対ではない、ゆえに天皇の政治的行為の禁止規定、天皇の政治的中立性に抵触するわけではないと問題視しない考えを示している。

 だが、政府決定に反対の意思表示が色濃いにも関わらず大嘗祭に関わる秋篠宮の疑義を、あるいは天皇家全体の疑義を宮内庁次長西村泰彦が無視する、あるいは官房副長官西村康稔が問題視しないということは、少なくとも皇族側の大嘗祭の考え方を無視・問題外に置いて、政治側の考え方のみを絶対とさせていることを意味する。

 政治側が秋篠宮からも、あるいは天皇家からも制約も制限も受けずに(無視・問題外がこのことを証明している)自らを絶対と価値づけることは天皇家という存在自体を抹消して政治側のみを立たせていることになり、天皇家に対する強制――政治の為にする天皇の政治利用に他ならない。

 「宮内庁サイト」に、〈宮内庁は,内閣総理大臣の管理の下にあって,皇室関係の国家事務を担い,御璽・国璽を保管しています。〉なる文言が記載されている。

 当然、秋篠宮から疑義を伝えられた宮内庁長官山本信一郎は内閣総理大臣安倍晋三に報告しなければならない。報告をしないまま山本信一郎自身が秋篠宮の疑義に考えることもせず、聞く耳も持たずに自分一人で、あるいは宮内庁として"叱責説"に擦り替えて処理することを決めていたとしたら、不遜極まりない僭越行為を犯したことになる。

 安倍晋三に報告した上での天皇家に対する無視・問題外の措置であるなら、安倍晋三の手を経た天皇の政治利用となり、安倍晋三に報告しないままの無視・問題外であったなら、宮内庁による天皇の政治利用となる。

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