安倍晋三と山下貴志と入管局長和田雅樹の大ウソを許した有田芳生2018年12月6日参院法務委質疑

2018-12-10 13:30:21 | 政治

 マスコミが2018年12月6日の参院法務委員会で立憲民主党の有田芳生(よしふ)が「技能実習生はこの3年間で69人亡くなった。凍死、溺死、自殺。溺死が7人です」と質問したのに対して安倍晋三が「今ここで初めて聞いたから、答えようがない」といった答弁をしたと伝えていた。

 これまで外国人材受入れ拡大法案を議論してきた衆参予算委、あるいは衆参法務委で技能実習生の自殺や凍死等の問題が野党から取り上げられて、それに安倍晋三が当然、答弁しているから、「初めて聞いた」はないだろう、いつもの大ウソではなのだろうと思い、立憲民主党サイトにアクセスして、質疑の模様を伝える(2018年12月6日)記事を探した。

 記事の最後に「技能実習の死亡事案 平成27,28,29年」と題した2013年12月3日作成の法務省資料が載せてあった。

 2015年1月1日からの交通事故死、溺死、凍死、自殺、フォークリフト運転中の事故死等々が記載されているが、原因については一切記載されていない。特に溺死で想像し得る原因は海や川への高い所からの投身自殺、あるいは直に海や川に入っていく入水自殺が考えられるが、技能実習生自身の行いに起因するのか、あるいは技能実習生受入れ機関側の労働環境に起因するのかによって法務省は技能実習生全体に対する注意喚起や精神的ケアを行うか、受入れ機関側への労働条件に関わる指導・監督を行うか、いずれかの対応を取ならなければならないのだから、原因調査が必要になるずだが、何もしていなかったことになる。いわば法務省としての責任を果たしていなかった重大な問題となる。

 2017年10月3日の養殖業20歳中国男性の「洋上でのマガキ養殖の技能実習終了後、港に戻る途中の船から技能実習生が落水死亡したもの」との記載があるが、これも本人の不注意から落ちたのか、長時間労働等の過酷労働が原因した疲労困憊からの意識が麻痺した状態で船から落下したのか、あるいは毎日が辛くて、海面を見ていたら、ふと海に引き込まれてしまった半ば自殺なのか、原因ごとに法務省の為すべき責任が異なってくるはずだが、原因についての記載はゼロとなっている。
 
 要するに技能実習生に対する人間としての扱いは窺うことはできず、モノとしての扱いしか見えてこない印象のみを受ける。

 当日参院法務委で実際にどんな質疑応答があったのか、有田芳生質疑の動画をダウンロードして、文字に起こしてみた。安倍晋三が午後3時過ぎから約2時間出席したため、有田芳生は午前中と午後の2度質疑に立っている。午前中の質疑は全文、午後は一部分の紹介とする。

 2018年12月6日参院法務委午前

 有田芳生「立憲民主党民、民友会の有田芳生です。例えばベトナムのハノイの空港からお父さんお母さんに送られて、若い26歳の男性、あるいは女性たちが技能実習生として働くために日本にやってきた。ホーチミンでも、あるいは中国からも、モンゴルからも、タイからも、多くの若者たちがこの日本にやって参りました。

 しかし技能実習生の実態というのは、前回もお話伺いましたように非常に過酷なものがある、今でも続いております。法務省が調査した結果、自らを守るために失踪せざるを得なかった若者たち、2870人の調査の結果明らかになったことは、法務省がこれまで明らかにしたように最(低)賃金以下22人、0.8%どころか、67%、約2000人近い人達が、最(低)賃金以下で働からざるを得なかった。

さらには過労死、その水準の環境のもとで働かざるを得ない人たちが1割いたということが私たち野党の調査・分析によって明らかになりました。しかし事は、そ
んな状況にはありません、実は今から驚くべき新しい事実、資料を明らかに致します。

(A4程度の用紙を何枚か手にして)過労死水準で働いていた人たち、今でも全国各地にいる。これは法務省が作成した資料です。技能実習生でどれだけ多くの人たちが命を奪われたか、失っているか。例えば(用紙を読み上げる)平成27年1月4日、中国からやってきた34歳の女性、溺死。1月7日、中国からやってきた28歳の男性、凍死。

 2月21日、モンゴルからやってきた34歳の男性、自殺。3月26日、ベトナムからやってきた25歳の男性、自殺。ラオスからやってきた29歳の男性、急性心筋梗塞。中国からやってきた21歳の女性、自殺。ベトナムからやってきた21歳の女性、低酸素脳症。

 中国からやってきた23歳の男性、クモ膜下出血。中国からやってきた33歳の男性、溺死。ベトナムからやってきた25歳の男性、小脳出血。ベトナムからやってきた27歳の男性、脳出血。ベトナムからやってきた21歳の女性、溺死。中国からやってきた29歳の男性、溺死。中国からやってきた35歳の男性、急性心不全。中国からやってきた28歳の男性、急性呼吸促迫症候群。中国からやってきた22歳の女性、クモ膜下出血。

 (用紙を肩のところに持ち上げて)ごく一部ですよ、今、ご紹介したのは。多くの若者たちですよ。日本にやってきて、凍死、溺死、自殺、病死、ずうっと続いている。今になっても続いているんですよ。これが技能実習生の実態ですよ。これ法務省の資料です。大臣、これご存知ですか」

 山下貴司「ご指摘の資料については承知しております」
 
 有田芳生「承知した上で、入管当局もそうでしょうけれど、どういう対応をこれまで取ってこられたんですか。じゃあ、具体的に聞きます。溺死ってどういう状況なんです。調査されましたか」

 入国管理局長和田雅樹「えー、お答え申し上げます。これは報告を受けたものを記載しているものでありまして、個別の事案の中身につきましては調査しているかどうかにつきましては、私には、こちらでは、当局として把握していないということでございます」

 有田芳生「(声を荒げて)無責任でしょう、冗談じゃないよ。日本に希望を持って、ベトナム、中国から来た若い青年たちが何で溺死、凍死、自殺しなけりゃいけないんですか。その分析をなさっていないんですか。

 おかしいでしょ。それで新しい制度に行くなんていうのは全く許さないですよ。何で溺死したんですか。何で凍死したんですか。一人ひとりの人生、明らかにしてくださいよ。何で調査しないんですか。調査しなかったんですか?」

 和田雅樹「誠に申し訳ございません。まあ、あの、地方入管等からの報告の内容が、このような報告であったということでございまして、中には、まあ、その状況について若干の記載のあるものもございます。いずれに致しましても、こうした深刻な状況につきましては、今般設置されましたPTの中できちんと調査をして参りたいと考えているところでございます」

 有田芳生「(感情的になって)違うでしょう。今から調査じゃないでしょう。今読み上げた一人ひとりの人生については平成27年ですよ。何で凍死したんですか、何で溺死したんですか、明らかにしてください。一人ひとりのベトナム、中国の若者たちの人生、そんな数だけど、言葉だけで蔑ろにするんですか。明らかにしてください。何で凍死、何で溺死。何で溺死の人たちが多いんですか。はっきりしてくださいよ」

和田雅樹「申し訳ございません。例えば平成29年の10月3日に20歳の方、養殖業で亡くなられた方などにつきましては、洋上のマガキ養殖での技能実習終了後、港に戻る途中の船から落水して死亡したなど個別の事情につきまして若干そのー、これは報告を受けてるものもございますが、今先生からご指摘のございました溺死等々と書かれているものにつきましては今手元に資料がございませんため、明らかにすることができませんが、きちんと報告をできるようにしたいと思います」

 有田芳生「おかしいでしょう。平成29年の今読み上げられたことは書いてありますよ。だけど、それ以前に平成27年から、何年も前から溺死、凍死というのは一杯あるじゃないですか。そういう報告書が来てたら、何でこんなことが技能実習生の中で起きてんのか、調べるのがあなた方の仕事でしょ。

 人の人生ですよ、これは。日本に希望を持ってきた若者たちの、それをどうしてこんなことが起きてるのかっていうことを何で調査して、改善策、取ろうとしなかったんですか。明らかにしてくださいよ。みんな悲しんでるんですよ。お父さんもお母さんも。
 
 勿論、本人たちの無念も、どうすんですか。これ(手に持っている報告書)法務省が明らかにしたことじゃないですか。公表してないでしょうけども。公表できないでしょ。この現実のもとで、技能実習生、その人たちの環境が変わらないままで新しい制度なんて行くことは絶対に許すことはできません。

 もう一度聞きます。何で凍死、溺死なんですか。理由を明らかにしてください」

 和田雅樹「申し訳ございません。あのー、人の命に関わることであり、重大なことであるということは認識しているところでございますが、現在我々が報告を受けている内容と言いますのは今、この票に取り纏めたところでございまして、その中身につきましててさらに詳しく調査したいと思います」

 有田芳生「大臣、法務省、これ(報告書の用紙を振って)つくってるんだけど、初めて明らかになりますよ、これは。どうして公表しないんですか」

 山下貴司「先ずですね、公表につきましてはやはり各死亡事件、これは、あの、労災事故、いずれにしてもそうでございます。例えば日本人に於きましても業種別死亡災害発生状況であるとか、業務上の疾病病(ママ、「業務上疾病」のこと。特定の業務に従事していることによってかかる、もしくはかかる確率が非常に高くなる病気の総称とのこと。)とか、これはあってはならんということは、これはやはり政府上げて取り組まなければならないということでございます。

 そしてこの死亡事案、法務省が今回取り纏めたものにつきまして、これやっぱり個々の死亡時期について、あの詳細についてですね、公にするということがやはり
死亡原因でございます、やはりプライバシーの観点から、これは遺族が公開を望まないであるとか、様々要素がございます。

 ですから、一般的な公表につきましては差し控えさせて頂きたいと考えております。そしてこの死亡事案の把握につきましては、これは29年11月から技能実習法が施工され、そしてこの施行を受けて、技能実習機構からしっかりとこれを把握し、それを法務省が把握するという運用をしっかりと図ってまいりたいというふうに考えております。

 そしてまだ足らざるところが今ないか、ということはそれは弁護士であります門山(宏哲)政務官をトップとした、この技能実習の運用に関わるプロジェクトチームについて、その方策についてしっかりと検討していきたいと考えております」 

 有田芳生「違います。遺族が公表を明らかにしてないですか。一人でも聞きましたか。ウソでしょう、そんなことは。聞きましたか、はっきりさせてください」

 有田芳生が自席から、「大臣が言ったんだから、大臣が答えてくださいよ」。入国管理局長和田雅樹が立ち上がりかけるが、山下貴司が答弁。

 山下貴司「死亡事案一般について公にするかどうかということに関しましては、これは基本的には先程申し上げた観点から、公表はしないということにしております。そもそもやはり死亡の原因につきましてはやはり個々人の、その死に至る経緯途中(?)でございます。

 勿論、事件性があるものであれば、これは労基、あるいは警察等に通報しているというふうに承知しておりますが、そういった取扱いであるということは是非ご承知して頂きたいと思います」

 有田芳生「やめてくださいよ。何で凍死したんですか。何で溺死したんですか。調べてくださいよ」

 和田雅樹「度々お答えしていますとおり、現在我々が報告を受けている内容としては、このようなものでございますけれども、その個別の具体の状況につきましては、またきちんと調査をしたいと思っているところでございます。

 その上で申し上げますと、それぞれの事案の内容につきましてどこまで公表ができるかということにつきましては、これはプライバシーの問題等々を検討した上で考える必要があると、このように考えているところでございます」

 有田芳生「冗談じゃない。何言ってるんですか。大臣ね、法律が変わって、今違うって言うけど、あなたね、実態知らないですよ。先月長野県からベトナムに帰った若者たち、今でも技能実習生として職場では怒鳴られ、殴られ、我慢して、11月に成田から帰っていきましたよ。今だって。そういう目に遭っている若者たちは一杯いる。

 7月にベトナムから来た若者で、借金をして日本に来て、自殺をしたグエンさん、遺書を残しています。もうおんなじことを繰返してもしょうがないから、グエンさんの遺書を聞いてください。

 『お父さんとお母さんに教わった通り強い人間になることを目指しましたが、もうその志は消えました。毎日孤独感を噛み締めています。周りの環境がとても酷いです。彼らは僕がどれぐらい頑張っているか、全く分かってくれません。軽蔑されています』

 仕事やって、蹴られてるんですよ。殴られてるんですよ。遺書の最後にグエンさんはこう書いている。『お父さん、お母さん、僕は恐いです。意味もない人生をずっと生きることに恐怖感を抱(いだ)いています。本当にごめんなさい、でも、もう遅いです。さよなら』

 ベトナムからお父さんお母さんに送られて、希望を持って日本に来て、挙句の果てが日本人に殴られて、蹴られて、軽蔑されて、差別をされて、その挙げ句が自殺ですよ。こういう人たちが今でも一杯いる。

 先月帰ったベトナム人たちは命を持って国に帰りましたよ。だけど、何て日本は酷い国かと、そう思って帰っていった。そういうことが広がっていくんですよ。日本に希望を持ってきながら、日本は好きだ。だけど帰るときは何て国なんだ。親日どころか、嫌日して帰っていく人が増えていくならば、大問題じゃないですか。

 だから、この技能実習生のちゃんとした総括なしに新しい制度なんかはあり得ません。(声を一段大きくして)採決なんか絶対許せないことを強調しまして質問を終わります」

 
 2018年12月6日参院法務委午後
 
 有田芳生「立憲民主党の有田芳生です。総理に率直にお話を伺います。先程答弁の中で外国人が安心できる環境を作りたいという趣旨のことをおっしゃいました。しかしこの法務委員会でも何度も何度も議論してまいりましたが、今技能実習生を初めとして外国人の方々が安心して日本で仕事をして貰えるような環境にはないんですよ、残念ながら。

 今日、私は午前中の法務委員会でも資料をお示しを致しました。法務省が作った資料ですけれども、技能実習生はこの3年間で69人亡くなっております。中には凍死、溺死、そして自殺。溺死がですね、7人ですよ。

 そして今日、私は質問をしましたけれども、ベトナムから借金をして、親のためにやってきたクエンさんという方の青年の遺書も読み上げました。ベトナムの母国に帰ることができなくなり、日本を本当に愛してやってきたのに結局、差別され、虐待され、殴られ、蹴られ、自殺をした。そういう人が一杯いるのに、これをどのように総括して、新しい制度に入っていかれるんですか。総理にお聞きしたいです。

 いや、総理にお聞きしているんです。総理に来て貰ってるんだから。総理に聞いているんです。ダメです」

 山下貴司「ご指名ですので、お答え致します。なぜかと言えば、これは法務省に於いて提出した資料でございますので、この前提をしっかりと踏まえた上で、総理に答弁して頂きたいと思うからであります。

 そしてその集計については、これは29年11月に新たな技能実習法が施工される以前の取り纏めでございまして、また、それに関しまして我々はそれをしっかりと
実態を把握する。そういったことで、今から門山(宏哲)政務官を始めとするプロジェクトチームに於いてしっかりと把握するべく、今検討しているところでございます。

 我々としては新たな技能実習法についてしっかりと把握した上、対応させて頂きたいと考えております」

 安倍晋三「あの、今ですね、なぜ山下大臣にお答えして頂いかということについて言うと、(ヤジ)委員長、ちょっと外がうるさくて、あの――」

 委員長「ご静粛に」

 安倍晋三「よろしいでしょうか。こういう式(?)はなるべく静かな環境の中でしっかりと議論するべきであって、委員外の方がヤジを飛ばすという、こういうことはやめて頂きたいなあと思うわけでございます。

 そこでですね、なぜ今、山下大臣からお答えをしたかと言えば、今有田委員がお示しになった亡くなられた例でありますね、亡くなられた例については私は今ここで初めてお伺いしたわけでありまして、ですから、私は答えようがないわけであります。

 そういう例について予め知っている山下大臣でなければ、それを踏まえて答えろっていうことでございましたので、それを踏まえて答えるのは私はできないので、山下大臣が踏まえてお答えさせて頂いたということでございまして、いずれにせよですね、(原稿読みに入る)現在山下法務大臣のチームのもと、法務省内に設置されたプロジェクトチームに於いてこの技能実習生の実態把握のあり方の見直しを行うと共にですね、聴取票から不当な行為が認められる技能実習制度、(原稿を読み直す)技能実習の実施機関の調査を既に着手しているものと承知をしているわけでございまして、そん中に於いてですね、やはり今までの制度の中で問題がなかったと思っているわけでは全く無いわけであります。

 様々なご指摘を頂きましたし、問題も把握しておりますから、しっかりとその中でですね、山下大臣のもとで調査をしっかりと行い、それを踏まえてこの法案を通して頂ければですね、省令等でしっかりと対応して行きたいと考えているところでございます」
 
 有田芳生「総理にややこしい質問をお聞きします。今、お話になりましたけども、総理がご自身で先程、外国人が安心できる環境を作りたいというふうにおっしゃった。確かに私が先程示した今朝の質問については総理はご存じないでしょう。

 私が言いたかったのはそういう外国人の技能実習生が日本にやってきて、自殺、凍死、溺死、溺死はこの3年間で7人ですよ。おかしいでしょ。なんでこんな事態になっているのかということを今朝入管局長に聞いても、法務省は分からない。そんな異常な事態が起きてるのに、何で調べないのか、総括しないのか、対策取らないのか。おかしいでしょってことをお聞きしたいんです。

 法務省の対応として、具体的なことを聞いているんじゃないですよ。溺死とか、自殺とか、そういう事があるのに法務省は分からないという体制を総理はどういうお考えですかという質門なんです」(質疑応答は続くが、これまでとする。)

 有田芳生は法務省が死亡原因を調査しないことに拘った。調査しないということはどういうことなかについては考えなかった。

 有田芳生が午前中の質疑で溺死の原因調査をしたのかと入国管理局長和田雅樹に尋ねると、「これは報告を受けたものを記載しているものでありまして、個別の事案の中身につきましては調査しているかどうかにつきましては、私には、こちらでは、当局として把握していないということでございます」とシラシラと答弁している。

 法務省は報告を受けたものを記載しただけで、個別の事案に関わる調査は把握していない。記載するとき、特に指導・監督の役目を負う役所として死亡原因を考えることも、問うこともしなかったことを自ら暴露することになる。

 このことは役目に反する不自然な態度で、大ウソでなければ成り立たない答弁であろう。

 逆説するなら、死亡原因を明らかにしなければ、受入機関側に対して指導も監督もできない。指導・監督の役目も果たせない。あるいは実習生に対して注意喚起も精神的ケアもできないし、そうしなければならない責任は履行もできない。あり得ない話で、明らかにした場合、不都合が生じるための死亡原因に関わる情報隠蔽であって、情報隠蔽を押し通すための大ウソの答弁と見なければ整合性は見い出すことはできない。

 情報隠蔽とそのための大ウソの答弁でなく、実際にこれらの責任を果たしていなかったとしたら、法務省としての責任放棄以外の何ものでもない。有田芳生はこの点を突くべきだったが、感情的になって、「無責任でしょう、冗談じゃないよ」と声を荒げ、責任問題には触れずに原因調査しなかった理由の追及のみに拘り、体のいい尤もらしい答弁で逃げられている。

 先に法務省資料「技能実習の死亡事案」からマガキ養殖の技能実習生の船からの落水死亡事例を取り上げたが、この事例に関して入国管理局等は次のように答弁している。

 和田雅樹「例えば平成29年の10月3日に20歳の方、養殖業で亡くなられた方などにつきましては、洋上のマガキ養殖での技能実習終了後、港に戻る途中の船から落水して死亡したなど個別の事情につきまして若干そのー、これは報告を受けてるものもございますが、今先生からご指摘のございました溺死等々と書かれているものにつきましては今手元に資料がございませんため、明らかにすることができませんが、きちんと報告をできるようにしたいと思います」

 和田雅樹は死亡事例に関しての最初の答弁で、法務省は報告を受けたものを記載しただけで、個別の事案に関わる調査は把握していないと発言しているが、落水の死亡例などについては「若干、報告を受けている」と、最初の答弁と矛盾させている。なぜなら、報告書自体が死亡事案の事例のみの記載となっているのだから、「若干、報告を受けている」は死亡原因の報告が別途行われていなければ、整合性が取れないことになるからだ。いわば事例の報告に過ぎませんよとすることはできない。

 にも関わらず、最初の答弁では「若干、報告」については触れなかった。大ウソの連続となっている。

 但し溺死等々に関しては「今手元に資料がない」と最初の答弁に添う発言をしている。要するに「落水」は実習生側の単なる不注意扱いとすることができるから、受入れ機関側の問題とすることは避けることができるが、溺死等の重大事故は原因を明らかにした場合、受入れ機関側の問題から発して実習制度そのものが問われることになるゆえに明らかにできないということなのだろうが、最初に触れたように「落水」が過酷労働から発した重大事故の可能性は否定出来ない点、このことを排除し、最初の答弁と矛盾させた「若干、報告を受けている」で済ます答弁は大ウソだからできる発言であろう。

 法務省の「死亡事案」報告書は立憲民主党が法務省に要求して出させたのだろう、有田芳生は「どうして公表しないのか」と山下貴司に問い質すと、「プライバシーの観点から遺族が公開を望まない等、様々要素がある」からと非公表の理由を述べている。

 対して有田芳生は「違います。遺族が公表を明らかにしてないですか」と、いわば遺族が非公表にしているのかと追及しているが、問題としなければならないのは死亡原因の調査なくして法務省が実習生に対して注意喚起したり、精神的ケアをしたり、あるいは受入機関側への指導・監督の用に供することが不可能となることであって、このことを回避して死亡事例だけを羅列した「死亡事案」報告書の非公表の正当性に限った山下貴司の答弁は巧みで、こういった回避はやはり大ウソをどこかに交えていなければできない答弁であろう。

 山下貴司はこうも発言している。「事件性があるものであれば、これは労基、あるいは警察等に通報しているというふうに承知しておりますが、そういった取扱であるということは是非ご承知して頂きたいと思います」

 要するに事件性がある死亡事例であるなら、労基署や警察等に通報する。当然、労基署や警察等が法務省の顔色を窺わない限り、死亡原因は全ての事例に関してできるということはないだろうが、多くが明らかにされ、法務省は死亡原因を把握するに至る。だが、死亡原因は調査もしていない、原因を把握もしていない扱いにしている。

 全体的に大ウソで成り立たせているからこそ、山下貴司のこのような答弁が可能となる。

 有田芳生は最後まで死亡原因調査の如何が法務省の技能実習生や実習生受入機関側に対する責任履行に深く関わることになる点に気づかずにこのことを抜きに原因調査だけを求めた。実習生が過酷な環境に置かれていることを説明するためにベトナムから来て自殺した若者の遺書を読み上げているが、山下貴司にしても入管局長の和田雅樹にしても、腹の中でせせら笑って聞いていたに違いない。

 何しろ、人として扱わずにモノとして扱って平気な連中である。人として扱う神経を持ち合わせていたなら、技能実習制度の欠陥が例え明らかになることになっても、人を人として扱うことを優先させて、死亡原因を徹底的に調査して、公表しないでは済まないはずだ。

 有田芳生は午前中最後の発言として「技能実習生のちゃんとした総括なしに新しい制度なんかはあり得ません」と声を一段大きくして訴えたが、訴えも虚しく、強行採決されてしまった。

 午後の質門で午前中使った法務省の資料を取り上げ、「技能実習生はこの3年間で69人亡くなっております。中には凍死、溺死、そして自殺。溺死がですね、7人ですよ」と問い質したが、安倍晋三に軽くいなされてしまった。

 「亡くなられた例については私は今ここで初めてお伺いしたわけでありまして、ですから、私は答えようがないわけであります」

 最たる大ウソとなっている。

 2018年11月1日の衆院予算委員会。

 立憲民主党長妻昭「東京都内にベトナムの僧侶がおられて、そういう方がベトナム青年のお葬式をされておられる。もう青年の位牌がいっぱい並んでおられて、技能実習生などなど、自殺された方もたくさんおられます。

 例えば技能実習生で塗装の方は、二十代、ことし自殺されました。遺書がありました。暴力やイジメがあって辛いと遺書にはあった。川辺で首をつっておられました。

 全体で言うと、技能実習生、平成26年から5年間で12人自殺されておられる。ただ、これは国が調べただけで、実際は全部把握し切れていない、失踪者もいますから。こんな数字じゃないと私は思います」

 対して安倍晋三は自殺や失踪者が出ている技能実習制度の矛盾には一切触れずに人手不足からの外国人材拡大法案の必要性のみを巧妙に訴える答弁に終始している。だが、技能実習生の中から自殺者が出ていることは耳にしていたし、有田芳生が法務省の「死亡事案」報告書に基づいて質問することは質問通告で知らされていたはずだ。

 有田芳生は「確かに私が先程示した今朝の質問については総理はご存じないでしょう」からと、「今ここで初めてお伺いした」という答弁をいともたやすく許してしまっている。楽天的に過ぎる。

 「私は答えようがない」と言ったあとの答弁で原稿を読み上げたことも質問通告があったからこそできたことで、「亡くなられた例については私は今ここで初めてお伺いした」は大ウソも大ウソで、有田芳生はこの事に気づかずに大ウソを許してしまった。

 技能実習制度が「やはり今までの制度の中で問題がなかったと思っているわけでは全く無いわけであります」は「亡くなられた例については私は今ここで初めてお伺いした」という答弁ができることからも、死亡原因の調査をしていないとしていることができることからも、薄汚い開き直りに過ぎない。

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