北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

陸上自衛隊明野駐屯地 戦闘ヘリ撮影紀行①

2006-04-04 11:40:38 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

 三重県の陸上自衛隊明野駐屯地は、航空学校が駐屯し、陸上自衛隊航空教育の一大拠点である。

Img_0145  2005年度末、陸上自衛隊に待望の新戦闘ヘリコプターAH-64Dが納入、配備された事は既報であるが、そもそも明野駐屯地というところはどのようなところか、駐屯地祭や平日の撮影に挑戦される方への情報として、また撮影したヘリコプター写真より陸上自衛隊航空を知る上で参考になる情報などを含め、二回ほどに分けて掲載したい。

 カテゴリが“陸上自衛隊駐屯地祭”となっているが、“先端兵器テクノロジー”か“北大路機関広報”か、いっそ“写真”か迷ったところであるが、駐屯地祭に行く人は参考にしてネ!ということでこのカテゴリーとなった。

Img_9826  有料特急を用いず展開した場合、近鉄電車にて名古屋から100分程度、手弁当持参であれば朝一番の展開でも名古屋から充分展開可能で、交通費も3000円ほどを見込めば充分である。

 写真は多用途ヘリコプターUH-60JA、近鉄明野駅から駐屯地までは徒歩で20分程であるが、駐屯地祭か平日であればヘリコプターの盛んな発着がある為、駅から駐屯地までは迷う事は無い。しかし、閑静な住宅街であるため、当然ながら大声での談笑や狭い街路を自家用車で占拠するような行いは厳禁である。

Img_9806  航空自衛隊の航空基地は、諸外国と同じく戦略拠点である関係上、警備に重点を置いている関係でフェンスや目隠用途障害物が形成されており撮影は容易でないものが多い。

 対して明野駐屯地は、フェンスと駐屯地の境界部分に大きな用水路がある関係で、図らずも非常に低いフェンスが三脚による撮影を容易にしてくれる。写真は広角レンズで撮影したが脚立を用いずともこのような写真が可能である。

Img_0013  年度末である事も含め、小生一行はAH-64Dの飛行はもとより、格納庫より引き出されていることに対しても懐疑的であり、OH-6Dの機動飛行でも観れれば満足しましょうか、と慎ましい悟りの境地で展開していた。

 こうした中でAH-64Dの機体が確認できた際の感動は一入である。背景に第十飛行隊のUH-1JやOH-6Dが配置されていると一見米軍基地のような雰囲気も感じられるが73式大型トラックが陸自駐屯地であることを教えてくれる。

Img_9899  第五対戦車ヘリコプター隊のAH-1Sが低空飛行を行う、芝生上をスキッドを滑らせてそのまま離陸するタッチアンドゴーを行っていたが、小生は始めてみるものであった。

 AH-1はヴェトナム戦争において多用途ヘリの火力支援を想定して開発されたもので、従来の多用途ヘリにロケット弾や機銃を施した武装ヘリが生存性に問題があることを契機にベル社によって緊急開発された。

Img_9916  近接航空支援用途、若しくは空中機動作戦における効果地域制圧任務に用いられていたAH-1であるが、対戦車戦闘の頻度が少なかったヴェトナム戦争の後、意外にも中東の地にてAH-1、また対戦車ヘリコプターの真価が発揮された出来事があった。

 1980年9月28日、イランイラク戦争開戦六日目、イラン領フゼスタン州に進攻したイラク軍が突如イラン陸軍のAH-1Jに奇襲攻撃を受け、TOW対戦車ミサイルにより大きな損害を受けた。イラク軍のフゼスタン州制圧が長期化し結果的に失敗であったのは本機の活躍を挙げる研究者が少なくない。また、1991年の湾岸戦争において米陸軍のAH-64Aが大きな戦果を挙げ、その地位を不動のものとした。

Img_0172  明野駐屯地に接する海上保安庁伊勢航空基地を離陸するベル212、陸上自衛隊が運用するUH-1Hの双発型であるが、複雑な発動機配置から来る整備上の問題が挙げられる。

 しかし、陸上自衛隊のUH-1シリーズはエンジン出力上の限界が指摘されており、後継ヘリコプターの必要性が指摘されている。これに関して聞くところではベル212もその候補には挙げられている。後方を通過するのはAH-1S。

Img_0149  航空学校所属の練習用ヘリ、OH-6D。第十飛行隊も同型機種を観測ヘリコプターに用いているが、同行してくださった方のお話では機体側面に白く明記されているのが航空学校の機体であるという。

 “飛行可能なジープ”という発想で開発されて早くも半世紀、様々な改良を加えられて今日に至る。D型はローター枚数を五枚としエンジン出力を強化したもので、観測以外にも連絡任務にも用いられる。

Img_0347  訓練飛行に向かうOH-6D、この他航空学校の学生が操縦するOH-6Dが10㍍離陸しては着陸、離陸しては着陸という繰り返しの訓練が行われていた。安定性の関係上航空機の中では最も操縦が難しいとされるヘリコプターであるが、操縦性が軽快で視界も良く小型であるOH-6Dは練習用には最適な機体であろう。

 本機は特科部隊の弾着観測用途以外にも有視界状況における索敵任務、AH-1Sの支援なども行っている。

Img_0329  川崎OH-1観測ヘリ。

 OH-6Dの後継として国産開発されたヘリコプターで、統合型索敵サイトにより高い目標発見能力を有し、音響ステルス性能に優れている。また、機体はカワサキのオートバイデザイナーにより設計されただけにスマートで、米国のその年最も優れた航空機に送られるハワードヒューズ賞を受賞したことでも知られる。

 難点は価格で、OH-6Dの八倍である。

Img_9987  機体は140kg程度の火器装備能力を有し、自衛用にAAMを搭載している。

なお、本機の攻撃ヘリ然とした機体をAH-64Dと勘違いした方も多かったようで、伊勢新聞は護衛の本機をレーダー非搭載の二号機と誤った報道をしていた。しかし、AH-64D/OH-1の取り合わせは米国を凌ぐ陣容であり本機も更なるデータリンク機能充実などが求められる。

 本機のAH化の提案なども行われている。

Img_0305  訓練に向かう第十飛行隊のUH-1H,UH-1J。従来のUH-1Bを大型化し、エンジン出力を充実させたのがUH-1Hであるが、これを富士重工が更にAH-1Sと同じ強力なエンジンを搭載し、赤外線ジャマーの搭載など生存性を強化させたのがJ型である。

 エンジン上部のものがそうで、強力な赤外線ライトを高速回転させ鏡面により乱反射させる事で携帯ミサイルのシーカー部分を混乱させ回避する性能を有している。

 今回はここまでである、次回はアパッチロングボウを中心に紹介したい。

 HARUNA

 (本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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