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ソマリア沖海賊対処任務、海賊対処法に基づく水上部隊・航空部隊の派遣を一年間延長

2011-07-21 22:26:18 | 防衛・安全保障

◆任務長期化、出口戦略の模索が必要ではないか

 現在も海上自衛隊によるソマリア沖アデン湾における海賊対処任務は継続されているのですが、これが一年間延長された、とのことです。本日はこの話題。

Img_6749 7/14日付 ニュース トップ 海賊対処行動を1年間延長・・・ 政府は7月8日、安全保障会議と閣議で、海賊対処法に基づきソマリア沖アデン湾に派遣している海自海賊対処行動水上部隊と同航空部隊による海賊対処行動を1年間延長することを決め、国会に報告した。 アデン湾には現在、護衛艦2隻と哨戒機2機が派遣され、海上輸送の護衛に当たっているが、海賊行為が依然として高い脅威となっていることから、7月23日で派遣期間が切れるのを前に引き続き1年間、自衛隊の派遣継続を決めた。

Img_65921  現在派遣されているのは、第8次水上部隊(指揮官・平野晃胤8護隊司令以下約370人)の護衛艦「いなづま」「さざなみ」の2隻で、9次隊(同・大判英之4護隊司令以下約400人、護衛艦「さみだれ」、同「うみぎり」で編成)が間もなくジブチに到着、任務を引き継ぐ。 航空部隊は7次隊(同・江藤浩之2空副長以下約180人、P3C2機で編成)がジブチ空港を拠点に監視活動を行っている

http://www.asagumo-news.com/news/201107/110714/11071403.html

Img_8611_2  海賊対処任務ですが一年間延長されたとのことです。ジブチの海上自衛隊航空拠点建設が海賊対処任務の長期化を見越したものでしたので、一年間の延長は当然考えられていた事なのですけれど、同時に東日本大震災災害派遣という自衛隊史上最大の災害派遣を実施しつつも同時に海賊対処任務を実施しており、ハイチでは大震災からの復興人道援助任務を遂行していた、ということは忘れられているようにも思います。そういうのも派遣当初こそ大きく報じられていた海上自衛隊の海賊対処任務なのですが、自衛隊の活動が報道などでも大きく評価される一方で災害派遣以外の自衛隊が実施している実任務への関心は依然として低く、実態としては政治的にもルーティンワーク化しているのではないか、という危惧さえもあります。

Img_6581  そろそろ考えなくてはならないのは、これは現場が勝手に行う事は不可能ですから政治の課題、という事になるのですが、海賊根絶への国際平和維持活動というものをもう少し日本が外交的に主体となって取り組むべきではないのか、ということです。近隣諸国の海洋治安機構創設支援等が海上保安庁を中心に実施されており、こちらは着実な成果を見せているようですが、同時に海賊に依存しなければならないソマリアの経済基盤や武装勢力に対するソマリアの国内治安機構創設、というものを考えなければ、現在のように護衛戦というかたちで船団を護衛しているだけでは海賊行動の根絶は望めないのではないか、と思う訳です。被害零を目指す、ということが自衛隊に付与された海賊対処任務における目標なのですが、しかし、海賊の自然消滅を待つには余りに時間が掛かり、各国海軍は海賊対処に哨戒を実施しています。ここから進み掃討を行う事例もあるのですが、現在の枠組には限界があるのも事実です。

Img_40021  日本ですが、ソマリアを含めた国際貢献任務に対してこれ以上の人的貢献を行う事は今後数年間は不可能です。東日本大震災に伴う派遣、その派遣規模が縮小したのちには頓挫した訓練計画の遂行、そして震災を起因とした日本の対外能力の混乱を遠因とする南シナ海の緊張と、日本には余力は無いのですが、外交的に提案を行う事は出来ます。日本では震災復興の最中であるので自衛隊をこれ以上出すことは不可能、という主張を出せば説得力はありますし、加えて、この状況下でもハイチPKOが終結したのちには、大義名分を立てるだけの規模の派遣可能性は、これも数年後になるのでしょうが生まれる可能性がありますし、アメリカはイラクより、そしてNATOが米軍とともにアフガニスタンでの任務を終息に向かわせてゆきますので、その人員と協力してのソマリア国家再建への国際平和維持活動への派遣の可能性も模索されていいのでは、と。

Img_9164 何れにせよ、装備と人員と予算が限られている中、現状の任務が際限なく長期化する状況は問題です。任務の増大に合わせて、例えば防衛大綱を改訂し護衛艦定数を、せめて90年代後半並の水準に増勢する、という選択肢も必要ですけれども、打つ手を打たなければ海賊行為は延々と続いていくことは確かなのですし、もちろんソマリアの国家再建以外に妥当な手法があるならばそちらでも良いのですが、どうあってもやはり現状に甘んじるのではなく、何らかの出口戦略の模索が必要なのではないでしょうか。

北大路機関:はるな

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