北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

中国空母訓練開始、旧ソ連未成艦、中古空母ワリャーグが起工式以来26年で完成目途

2011-07-27 22:34:45 | 防衛・安全保障

◆中国国防省記者会見、公試開始も間近か

 いよいよ中国海軍の導入した中古空母が稼働する準備に目途が立ったようです。ワリャーグ、日露戦争の開戦当日に仁川沖で勇戦し撃沈された名前を継ぐ艦が、中国で名を改め完成するようです。

中国、初の空母訓練開始へ=国防省が公表、旧ソ連製改造・・・ 【北京時事】中国国防省の耿雁生報道官は27日の記者会見で、旧式空母を改造し、科学研究試験と訓練に利用することを明らかにした。国営新華社通信は、旧式空母は遼寧省大連で改修中の旧ソ連製空母「ワリャーグ」(約6万7000トン)で、改造後は中国海軍の試験・訓練艦になると伝えた。中国初の空母の運用を国防省が明らかにしたのは初めて。8月1日の建軍84周年を前に国威を発揚する狙いがある。 耿報道官は「中国は平和的な外交政策と防御的な国防政策を堅持している」とした上で「中国には長い海岸線と広い管轄海域があり、国家の海上安全、領海主権、海洋権益を守るのは中国軍の神聖な職責だ」と空母の必要性を指摘。「(空母の運用によって)政策が変わることはない」と強調した。 空母の試験航行については「全体の改造工程の進み具合に基づいて確定する」として、時期は言及しなかった。艦載機パイロットの訓練は自前で進めていることを認め、空母の艦長は「時期が来れば分かる」と述べた。(2011/07/27-21:22)http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011072700638

◆記事を見ますと訓練を始めたとは言ってもまだ出航していないようで、公試が開始されるのは来月以降、ということでしょうか。中国海軍は記事にある通り旧ソ連が建造を開始し冷戦終結とソ連崩壊後建造が放棄されていた未成空母ワリャーグを購入したのが1998年、しかし起工式は1985年で進水式が1988年ですから十年を経て中国海軍がマカオのダミー会社を通じてカジノ船として当時管理を行っていたウクライナ政府から2000万㌦で購入しました。しかし、まず最初の問題がウクライナから中国に回航する際に黒海をで無ければなりませんが、地中海とを結ぶ細いボスポラス・ダータネルス海峡は航空母艦の航行が禁止となっており、ソ連海軍も重航空巡洋艦、というような空母ではないという点を強調した設計を提示していたほどなのですが、その細い海峡を自力航行できない未成空母で通行しようとしまして、トルコ政府が了承するまでに三年を要しました。中国到着後も、そもそも設計図はウクライナが持っているという事だったのですが紛失した部分やそもそもなかったのではないかという部分もあり、その一方で船体は劣化が始まり、電装品も期間も取り外されており、甲板強度についても中国としては未知数です。とりあえず色々な廃棄空母を中国で解体しノウハウは培うよう努力していたのですが、限界は勿論大きく、建造にはウクライナの工員が支援する事が完成させる上での絶対要件でした、国威を掛けた空母、脱線も沈没も許されません。そこで、中国政府は家族と会う場合等必要な時は自由に帰国できるという好条件を提示し、これで万全だ、と気構えを見せました。台湾国防部等は2005年にも完成して脅威となるのでは、と戦々恐々だったのではあるのですが、建造工事は一向に進みません。理由は簡単でウクライナの工員がいつでも帰って良いよ、という話を真に受けてちょくちょく帰ってしまったのが要因とのこと。考えてみれば当然で、工事が完了するまで仕事がありまして納期が明示されていないのですから急いで工事すれば失業までの時間を短縮してしまう訳なのですから、これは2000万㌦で購入したが物凄い人件費を強いられるのいう、騙されたのでは?と当方も心配してしまったほどなのですが、建造工事再開から10年、起工式から26年を経て、一応完成の目途が立った、という事になる訳です。中国では国産空母の建造も開始しているとのことで、一挙に多数の空母を整備しようと頑張っているようですが、その為の練習空母として本艦は期待されていた訳です。

基準排水量55000t、満載排水量67500t、海上自衛隊が新しく建造する22年度護衛艦22DDHの2.5倍、かなり大きな船体を有する本空母は、ワリャーグのアドミラルクズネツォフ級二番艦として、特に一番艦よりも航空機運用能力を改善した形で設計されている為60機以上の艦載機が搭載可能、とみられています。しかし、肝心の艦載機はロシアのSu-27系統の機体が本来搭載されているのですけれども中国が勝手にコピーした事でロシア政府が激怒し、エンジンという戦闘機として最も重要な部分の供給がストップされてしまいました。低バイパス比の高出力エンジンはバブル期の日本が全力を挙げて開発しようとしても実現しなかった技術でして一朝一夕に行う事は難しく、しかもロシア空母は戦闘機を高速で発進させる上で重要な蒸気カタパルトを搭載しておらず、先端部分のスキージャンプ台で飛び上がり滑走距離を節約する方式を採用していますので、どの程度の燃料と武装を搭載して発進できるのかは未知数です。まだまだ前途多難ですが船出まで時間がありまして課題は山積という状況。日本としては軍事的なポテンシャルを別としても政治的に脅威となります、軍事的ではなく日本のシーレーン付近に、そして沖縄近海に展開されるだけで日本は大きな騒ぎとなるでしょう、メディアはいつでも沖縄に侵攻できるとか、日本のシーレーンは完全に断たれた、と書き立てるかもしれません。そして中国が長い海岸線を護るために空母を建造、とあるのですが中には調べてみたら海岸線は日本の方が長いぞ、と太平洋岸と日本海岸を合計して気付く方もいるかもしれません。このあたり、シンボル的な意味で掲げられるだろう、日本から見た中国の空母ですが、その脅威についてたとえば空母航空団の運用と能力や護衛艦艇の能力を分析し、軍事的脅威への対処法とまた日本も正規空母をというのではなくDDHの運用等を基に如何に対応するかという政治的威圧に対する対処法は、しっかりと考えてゆかなければならなくなるでしょうね。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (11)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする