北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

三菱重工 防衛用水陸両用車両を社内研究試作、AAV-7とは別の水陸両用戦闘車両

2014-04-22 22:20:17 | 先端軍事テクノロジー

◆米国製のAAV-7は霞ケ浦駐屯地で報道公開
 防衛省はアメリカより導入したAAV-7両用装甲車を霞ケ浦駐屯地にて報道公開しました。
Img_2603  一般公開はもう少し先のこととなりましょうが、防衛省はAAV-7を新中期防衛力整備計画の五年間で水陸両用装甲車52両を取得する方針としています。AAV-7は米海兵隊所要の在場予備車両、つまり将来必要となった場合へ先行生産し、車両デポにて管理していた所謂新古車両を自衛隊へ有償供与したかたちで、新古車と言えども十分な整備を終えての引き渡し、という形で貼るので一概に得倍のですが、一両当たりの取得費用は6億円、概ね89式装甲戦闘車と同程度の費用にて取得することとなっています。
Gimg_9694  一方で一部報道によれば三菱重工広報担当者の話として三菱重工が独自に水陸両用装甲車の研究試作を実施していることが一部報道にて報じられました。AAV-7は全長8.16mと全幅3.2mに全高3.3mと非常に大型で兵員25名とCH-46やMV-22等の中型航空機に匹敵する輸送能力を有しますが、何分原設計が1964年開始で制式化が1970年と非常に古く、搭載エンジンはカミンズVT400型525hpの車両、ウォータージェット推進の技術と戦闘車両を系統化できる技術を確保すれば国産の新型車両を開発することは十分可能であるためです。
Hbimg_1256  現時点ではAAV-7しか選択肢は無かったといえ、消去法で採用されたことが考えられます。特にAAV-7はウォータージェット推進により13km/hの水上航行が可能で、対して、例えばイギリス海兵隊等が採用しているBvS-10全地形装甲車の場合、水上航行速度は履帯駆動に依るため僅か5km/hでしかなく、基本的に戦闘が想定される状況では母艦から揚陸へ発進するのではなく母艦から揚陸艇により沿岸数百m圏内か、百数十m圏内まで展開しそこから海岸線まで発進するという運用が基本で、余程相手の勢力が海岸線より遠い地域に展開しているのでない限り、もしくは脅威対象が小火器程度しか装備していない状況でなければその圏内まで母艦が接近することは考えられません。
Pimg_3028  三菱重工が実施している研究開発は、渡河用の水陸両用昨日ではなく、海上での運用を可能とする水陸両用性能が研究されているとのことで、過去に三菱重工が開発した73式装甲車にも水陸両用性能が盛り込まれていましたが、この73式装甲車の水陸両用能力は浮航性能が求められ渡河時等に浮航きっとを装着し自力で航行する程度のものとして要求され、完成していますが、今回開発されている三菱の水陸両用装甲車は波浪に対する凌波性能を備えた、それよりも高度な両用作戦能力を有しているものと言えるでしょう。
Img_6222  この研究試作、部分試作と研究試作の程度とされ、いわゆる全体試作ではなく、構成要素の研究という部分に収まっているとされます。その反面、広報担当者の話として、三菱重工の独自技術研究として実施されているものであり、防衛省からの要求を受けての開発ではない、というところが併せて強調されました。この背景には2011年に実施された防衛用水陸両用車両技術に関する調査研究の要求へ競争入札が行われた際、三菱重工も応札し、一説ではAAV-7程度の水陸両用能力と装甲戦闘車程度の能力を付与したものを想定し、入札へ臨んだ、とのこと。
Uimg_2232  防衛用水陸両用車両技術に関する調査研究、しかし、この競争入札は三菱重工よりも一桁低い数字を示したユニバーサル造船が落札しました。非常に少額で落札し、具体的にはユニバーサル造船が10万5000円で入札、三菱重工が380万円で入札しています。一桁違う、という話ではあるものの、実質数十分の一の費用で入札したため、三菱重工案は採用されることとなりませんでした。しかし、ユニバーサル造船は子会社のユニバーサル特機が陸上車両の開発を行った経験があるため、この派生型として開発したものの、防衛省の望む装備とはなりませんでした。
Gimg_0186  94式水際地雷敷設車、ユニバーサル造船が開発した水陸両用車で防衛省に納入されている装備で、元々は沿岸部に水際地雷、小型機雷を敷設するべく開発された車両です。陸上走行時には特別な許可が必要ではあるものの一応国道を自走可能な水準として車幅を2.8mに抑えていると共に、海上展開時には車幅を広げ浮力を追加、海浜を自走し水上に展開、航法装置を駆使して沿岸部に機雷を敷設する装備です。一応、スロープを有する輸送艦があれば海上から展開し、着上陸第一波への海上輸送にも対応することが可能でしょう。
Img_7290  しかし、防衛省が求める車両は、海浜に展開できる輸送車というものではなく、本格的な水陸両用戦闘車両です。一説には94式水際地雷敷設車を基本とし、装甲防御力を付与すると共にRWS遠隔操作式銃塔等を搭載する装備が考えられていたらしい、とも。94式水際地雷敷設車は海上での運用が想定され、凌波性能はかなり高いものが付与されているほか、海上での速力もスクリューにより11km/hとAAV-7に匹敵する性能を有しています。しかしその反面、元々装甲車ではないため、防御力には付与するとしても限界があるほか、海浜での戦闘に適した戦闘車両としての形状をゆうしていません。
Oimg_5580  更に非常に大きく、AAV-7は全長8.16mと全幅3.2mに全高3.3mであるのに対し、94式水際地雷敷設車は全長11.8m、全幅2.8m/4.0m、全高3.5mと、AAV-7よりも巨大なのです。全国の水際障害中隊に装備されていますが、訓練展示で兵員輸送車として展示されることなど一例もなく、そもそもほかの施設車両などは施設団記念行事に障害除去や攻撃車両の支援委攻撃前進の展示が行われることがあるものの、体験試乗以外に94式水際地雷敷設車は参加することも一例として在りませんでした。つまり、両用装甲車としての94式水際地雷敷設車派生型車両は防衛省が使い物にならない、と判断したということ。
Img_6436  三菱重工は再度研究試作の競争入札が行われた際、技術部分で公表かを受け、もしくは予め研究試作を実施することで低い金額での入札を想定し使える装備を開発しているのでしょう。新中期防衛力整備計画に間に合うのか、と問われた場合には、未だ部分試作の状況であるのだから研究試作を越えた全体試作に移らない限り開発の目処は立っていない、と言えるわけですけれども、他方、次々中期防の期間までであれば開発の可能性は充分あり、加えてAAV-7は在場予備車両に上限もあるとともに旧式化により後継車両の模索は米海兵隊で繰り返し行われています。この点を含め、開発が行われているならば、非常に理想的なのですが、今後の展開を見守りましょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする