北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

海上自衛隊“コンパクト護衛艦”2隻を建造へ、新防衛大綱の計画艦平成33年度就役期す

2014-04-15 23:56:51 | 先端軍事テクノロジー

◆基準排水量3000t程度、多機能艦として設計

 防衛省によれば、海上自衛隊は新しくコンパクト護衛艦を建造するとのこと。

Img_64_03 コンパクト護衛艦は2隻同時に建造し、比較的早い多数の建造と整備が見込まれるほか、将来的に旧式化する護衛艦はつゆき型や護衛艦あさぎり型、護衛艦あぶくま型を代替すると共にミサイル艇の任務を完全に置き換え、掃海艇の任務も部分的に置き換える新世代の水上戦闘艦として建造されることでしょう。

Img_6918_1  海上自衛隊は新防衛大綱において護衛艦定数を1995年防衛大綱以来一貫して縮小し、南西諸島での緊張を背景においても維持課微増という状況が継続されていたなか、2013年防衛大綱では護衛艦増勢へと大きく防衛政策を転換しました。その中に示されていた護衛艦に今回のコンパクト護衛艦の要素も含まれています。

Img_1357 コンパクト護衛艦とは、従来の護衛艦よりも小型、1980年代に量産された護衛艦はつゆき型程度の船体規模を有し、特にステルス性と速力を重視するとともに対水上戦闘や対潜戦闘能力と対空戦闘能力という護衛艦の要件に対機雷戦闘能力など、従来の護衛艦が想定していない任務へも対応する多機能艦を目指すようです。

Img_07_86 高速度と多機能性を追求した水上戦闘艦という設計思想は、米海軍が建造しているLCS沿海域戦闘艦と共通するものがあり、米海軍ではフリーダム級とインディペンデンス級の二種類が建造中となっていますが、双方とも満載排水量で3000t前後、対して我が国の計画艦は基準排水量で3000tということですので、満載排水量は4000t前後となるでしょう。

Aimg_0673 コンパクト護衛艦の構想は新防衛大綱において従来の護衛艦と一線を画す新型艦の建造が盛り込まれており、この計画に基づくものと言えます。併せて、現在の汎用護衛艦は基準排水量で5000tからのものとなっており、満載排水量では7000tに迫り、最大の護衛艦は基準排水量で19500tというものもあるほど。

Gimg_3468 こうした艦艇の大型化は、防衛計画の対抗が改訂されるたびに防衛費への配慮から艦艇数が削減され、一方で自衛隊の任務は我が国周辺国の我が国領域およびその近接地域での不明瞭な行動が増大し、任務が増大している状況を背景に、航続距離や航海期間を延伸できるよう求められ、大型化しました。

Img_62_59 この部分について、新防衛大綱では護衛艦定数が増大し、併せて自衛隊の任務想定海域として島嶼部を含めた沿岸海域や近海海域が増大したことと併せ、大型艦よりは沿岸部での運用に柔軟性を持つと共に、沿岸戦闘において大きな位置を占める機雷などの脅威対処やその敷設を含めた艦艇が必要となったためでしょう。

Img_643_1 コンパクト護衛艦の概要は、基準排水量3000t程度で高速性能を有し多機能性を持つ、という程度しか情報は示されていませんが、三胴船構造かSES船型もしくは水面滑走を重視した船体形状を有すとともに、上部構造物はステルス重視の設計、ミサイルなどは垂直発射装置VLSに収容し、排水量から推測し後部に航空機を搭載する格納庫と飛行甲板を装備する形状となるでしょう。

Img_6927_1 安直な発想では、米海軍のインディペンデンス級かフリーダム級の設計に対し、各種装備を必要に応じ置き換えるモジュール構造を採りつつ、実のところ換装と整備が容易ではないモジュール換装は近代化改修時のみとし基本は全ての装備を常備、前部へ艦砲とVLSを搭載する容積を確保し、後部飛行甲板と格納庫を大型化させた形状となるかもしれません。

88img_0457 配備部隊については、コンパクト護衛艦は運用特性が異なるので、恐らく護衛隊群に配備されるのではなく二桁護衛隊、自衛艦隊直轄の護衛隊に配備され、所謂ヘリコプター搭載護衛艦やイージス艦等ミサイル護衛艦とは直接では無く間接的に協同する艦艇となるのではないでしょうか。

Img_2529 これは船体規模が異なるため島嶼部への接近が従来護衛艦とは異なると共に、速力が従来護衛艦よりもかなり高速であるため、直接協同は合理的ではなく、むしろ独立行動による海域での優勢維持と、大型艦をもつ護衛隊群に先んじて前方哨戒と警戒に当たると共に過大な脅威に際しては一旦後退し連携する手法が採られるのだと思います。

Img_5847 いろいろと期待する艦艇ですが、高速航行時には燃費が著しく悪化しますし、対戦索敵能力にも影響します。また、水上戦闘艦艇の機雷戦対処能力付与には非磁性化技術が不可欠となりますし、大型艦の高速運用への船体構造の負荷などは実試験を重ねねば、という部分があることも確かです。

Img_6932  また、コンパクトとはいえ基準排水量3000tの規模を想定しているとされ、この場合、機関出力など必要な速力を発揮するためにはかなりの馬力を要するため、建造費用もかなりのものとなり、量産する際の財政上の負担は大丈夫なのか、従来護衛艦よりも高くならないのか、という不安も残るところ。

Img_9234  こうした点で、平成33年に2隻を就役させるという指針は、相当な技術蓄積に依拠したものと推測されるのですが、 実際にどういった艦艇として完成するかは今後の情報を待ちたいところ。課題は考えられると同時に期待する部分も大きく、今後も注視してゆきましょう。

北大路機関:はるな

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コメント (8)
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