◆沖縄を守る旅団と混成群
先日4日に掲載しました榛名防衛備忘録:序論、装甲機動旅団・航空機動旅団案と南西諸島防衛警備部隊、その続き。

南西諸島を防衛するには機動運用部隊を如何に配置するべきか、前回、幾つかの事例と共に提示しました諸案について、補足と言いますか、当方の説明が足りなかったようなので個々の部分について幾つか説明したいと思います。本番は三月末、備忘録的に先に掲載する、というかたち。

装甲機動旅団と航空機動旅団の編成案は、元々、全国の師団と旅団の編成を最大限共通化する、という視点に依拠して、一旦すべての師団と旅団を機甲師団を例外として最大限編成を共通化させよう、という観点から考えたもので、こちらは既報の通りですが、現状の総合近代化旅団である北部方面隊真駒内の第11旅団を元に普通科部隊を装甲化し装甲機動旅団へ、現在の即応近代化旅団である東部方面隊第12旅団をもとに方面航空隊のヘリコプターを編成に組み込み航空機動旅団とし、この二つの旅団を以て各方面隊に機動運用、つまり管区に縛られない二個旅団基幹の一個師団を置く、というもの。

北部方面、東北方面、東部方面、中部方面、西部方面、中部は警備管区が広すぎ一個師団では不安で、北部は機動打撃部隊として機甲師団を維持する方向を明示しましたが、広域を担当する師団として、広域師団、という部隊案を紹介しました。が、南西諸島に限っては航空機動旅団と装甲機動旅団からなる広域師団では対応できません。何故ならば、装甲機動旅団は離島への海上経路を自走し、線などへ独力で展開できないからです。

水陸機動車両を、普通科連隊に大量配備し海上機動、という選択肢は残念ながら水陸機動車両は百数十kmを隔てて点在する南西諸島の広大な洋上を自由に行き来するだけの水上での航続距離を有していないため、装甲機動旅団を仮に南西諸島の何れかに配置したとしても、海を渡れず遊兵化しかねません。

そこで提案したのは、旅団を本当に、離島へ対馬警備隊方式の警備隊を数個配置し、これを沖縄本島からのヘリコプター部隊が支援する、という機動運用方式です。南西諸島は非常に多くの離島より構成されていますが、おおまかに、沖縄本島・鹿児島県奄美諸島・沖縄県先島諸島、以上三諸島に大きく分け、沖縄本島に一個旅団、ヘリコプター隊に支援され、一定の空中機動による展開能力、現時点でUH-60JAを8機とCH-47J/JAを8機装備していますので、人員200名と軽装甲機動車や中距離多目的誘導弾や高機動車など16両、人員のみならば460名、同時空輸が可能です。

旅団は、全国の師団旅団を一挙に旅団化する、という航空機動旅団装甲機動旅団方式により人員を捻出できるため、沖縄本島はフル編成に近い航空機動旅団を配置できます。第12旅団方式の編成として4000名、普通科連隊も現在の編成から二個へ増勢できるでしょう。一方で、離島の警備隊ですが、奄美諸島は現在、北熊本の第8師団管区ですが、九州からかなりの距離を隔てているため、沖縄を含めた南西諸島の警備管区としました、この方式、明石海峡大橋開通前の兵庫県淡路島が、兵庫県は第3師団の管区でしたが、交通の利便性から四国善通寺の第2混成団警備管区に、淡路島のみ、含まれていた点と同じく、沖縄本島からの方が九州よりも奄美大島へ近いため、含めた、というかたち。

奄美諸島と先島諸島は、900名規模の混成群を置きます。その概要は、沿岸監視に当たる偵察隊を混成群直轄として、対馬警備隊型の350名規模の警備隊を二個、奄美諸島は最大の面積と人口を持つ奄美大島と飛行場が置かれる徳之島に奄美警備隊と徳之島警備隊、先島諸島は宮古島に混成群本部をおき、宮古警備隊と石垣警備隊を、警備隊は有事の際に沖縄本島からのヘリボーンによる増援を受ける前提での遅滞戦闘や遊撃戦及び対遊撃戦にあたる。

この方式ですと、沖縄本島・・・4000名、奄美諸島・・・900名、先島諸島・・・900名、という区分となり、警備隊は独立機能として後方支援隊を隷下に持つので業務隊機能を代替でき駐屯地での自活能力を持つと共に、普通科連隊や連隊からの分遣中隊を置く場合、上級部隊より火力支援及び機動戦や整備支援と後方支援を必要とするため、管理機能が複雑化するのですが、警備隊ならば独力で不都合はありません。

混成群は900名規模で、偵察隊を機動運用部隊とするわけですが、沿岸監視を任務とし、必要ならば偵察警戒車を用いて武装漁民上陸や武装工作員攪乱戦闘程度であれば、これがいわゆるグレーゾーン事態にあたりますが、高度な監視装置により脅威対象の位置を把握し遠距離から機関砲により制圧が可能です。これを逆に普通科連隊を奄美と先島におく、といいますと、それならな連隊戦闘団を組む際に沖縄本島の旅団主力からどう増援を送るのか、自前で揚陸艇を確保するのか、海上自衛隊に要請し輸送艇を沖縄基地へ数隻配備できるよう業務輸送用の艦艇を新造させてもらうのか、となるのですが、警備隊ならば自己完結できる。

警備隊の能力を余り過小評価する事は出来ません。対馬警備隊ひとつとっても、軽装甲機動車を装備していますから12.7mm重機関銃やMINIMI分隊機銃、01式軽対戦車誘導弾を小銃班が分散乗車し多数の火点から機動運用します。そして中距離多目的誘導弾を装備していますので、揚陸艇や戦車が迂闊にキルゾーンへ誘い込まれますと一挙に殲滅されます。大火力で圧しに押しても、81mm迫撃砲や84mm無反動砲等の携帯火器により粘り強く抗戦し時間を稼ぎますし、中途半端な戦力で警備隊へ挑むと返り討ち間違いないでしょう。

当初は、沖縄本島に旅団を置き普通科連隊を離島に分散させる、南西諸島北部と南部に小型編成の二個旅団を配置し旅団が島嶼部を広く機動できる体制を構築する、哨戒艇や襲撃艇に揚陸艇等小型舟艇主力の水陸両用部隊を海上自衛隊佐世保地方隊隷下に配置し第15旅団が支援する、など比較検討したのですが、結局落ち着いたのは、沖縄本島に航空機動旅団&奄美諸島に数個警備隊と偵察隊の混成群&先島諸島に数個警備隊と偵察隊の混成群、という提案でした。
北大路機関:はるな
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先日4日に掲載しました榛名防衛備忘録:序論、装甲機動旅団・航空機動旅団案と南西諸島防衛警備部隊、その続き。

南西諸島を防衛するには機動運用部隊を如何に配置するべきか、前回、幾つかの事例と共に提示しました諸案について、補足と言いますか、当方の説明が足りなかったようなので個々の部分について幾つか説明したいと思います。本番は三月末、備忘録的に先に掲載する、というかたち。

装甲機動旅団と航空機動旅団の編成案は、元々、全国の師団と旅団の編成を最大限共通化する、という視点に依拠して、一旦すべての師団と旅団を機甲師団を例外として最大限編成を共通化させよう、という観点から考えたもので、こちらは既報の通りですが、現状の総合近代化旅団である北部方面隊真駒内の第11旅団を元に普通科部隊を装甲化し装甲機動旅団へ、現在の即応近代化旅団である東部方面隊第12旅団をもとに方面航空隊のヘリコプターを編成に組み込み航空機動旅団とし、この二つの旅団を以て各方面隊に機動運用、つまり管区に縛られない二個旅団基幹の一個師団を置く、というもの。

北部方面、東北方面、東部方面、中部方面、西部方面、中部は警備管区が広すぎ一個師団では不安で、北部は機動打撃部隊として機甲師団を維持する方向を明示しましたが、広域を担当する師団として、広域師団、という部隊案を紹介しました。が、南西諸島に限っては航空機動旅団と装甲機動旅団からなる広域師団では対応できません。何故ならば、装甲機動旅団は離島への海上経路を自走し、線などへ独力で展開できないからです。

水陸機動車両を、普通科連隊に大量配備し海上機動、という選択肢は残念ながら水陸機動車両は百数十kmを隔てて点在する南西諸島の広大な洋上を自由に行き来するだけの水上での航続距離を有していないため、装甲機動旅団を仮に南西諸島の何れかに配置したとしても、海を渡れず遊兵化しかねません。

そこで提案したのは、旅団を本当に、離島へ対馬警備隊方式の警備隊を数個配置し、これを沖縄本島からのヘリコプター部隊が支援する、という機動運用方式です。南西諸島は非常に多くの離島より構成されていますが、おおまかに、沖縄本島・鹿児島県奄美諸島・沖縄県先島諸島、以上三諸島に大きく分け、沖縄本島に一個旅団、ヘリコプター隊に支援され、一定の空中機動による展開能力、現時点でUH-60JAを8機とCH-47J/JAを8機装備していますので、人員200名と軽装甲機動車や中距離多目的誘導弾や高機動車など16両、人員のみならば460名、同時空輸が可能です。

旅団は、全国の師団旅団を一挙に旅団化する、という航空機動旅団装甲機動旅団方式により人員を捻出できるため、沖縄本島はフル編成に近い航空機動旅団を配置できます。第12旅団方式の編成として4000名、普通科連隊も現在の編成から二個へ増勢できるでしょう。一方で、離島の警備隊ですが、奄美諸島は現在、北熊本の第8師団管区ですが、九州からかなりの距離を隔てているため、沖縄を含めた南西諸島の警備管区としました、この方式、明石海峡大橋開通前の兵庫県淡路島が、兵庫県は第3師団の管区でしたが、交通の利便性から四国善通寺の第2混成団警備管区に、淡路島のみ、含まれていた点と同じく、沖縄本島からの方が九州よりも奄美大島へ近いため、含めた、というかたち。

奄美諸島と先島諸島は、900名規模の混成群を置きます。その概要は、沿岸監視に当たる偵察隊を混成群直轄として、対馬警備隊型の350名規模の警備隊を二個、奄美諸島は最大の面積と人口を持つ奄美大島と飛行場が置かれる徳之島に奄美警備隊と徳之島警備隊、先島諸島は宮古島に混成群本部をおき、宮古警備隊と石垣警備隊を、警備隊は有事の際に沖縄本島からのヘリボーンによる増援を受ける前提での遅滞戦闘や遊撃戦及び対遊撃戦にあたる。

この方式ですと、沖縄本島・・・4000名、奄美諸島・・・900名、先島諸島・・・900名、という区分となり、警備隊は独立機能として後方支援隊を隷下に持つので業務隊機能を代替でき駐屯地での自活能力を持つと共に、普通科連隊や連隊からの分遣中隊を置く場合、上級部隊より火力支援及び機動戦や整備支援と後方支援を必要とするため、管理機能が複雑化するのですが、警備隊ならば独力で不都合はありません。

混成群は900名規模で、偵察隊を機動運用部隊とするわけですが、沿岸監視を任務とし、必要ならば偵察警戒車を用いて武装漁民上陸や武装工作員攪乱戦闘程度であれば、これがいわゆるグレーゾーン事態にあたりますが、高度な監視装置により脅威対象の位置を把握し遠距離から機関砲により制圧が可能です。これを逆に普通科連隊を奄美と先島におく、といいますと、それならな連隊戦闘団を組む際に沖縄本島の旅団主力からどう増援を送るのか、自前で揚陸艇を確保するのか、海上自衛隊に要請し輸送艇を沖縄基地へ数隻配備できるよう業務輸送用の艦艇を新造させてもらうのか、となるのですが、警備隊ならば自己完結できる。

警備隊の能力を余り過小評価する事は出来ません。対馬警備隊ひとつとっても、軽装甲機動車を装備していますから12.7mm重機関銃やMINIMI分隊機銃、01式軽対戦車誘導弾を小銃班が分散乗車し多数の火点から機動運用します。そして中距離多目的誘導弾を装備していますので、揚陸艇や戦車が迂闊にキルゾーンへ誘い込まれますと一挙に殲滅されます。大火力で圧しに押しても、81mm迫撃砲や84mm無反動砲等の携帯火器により粘り強く抗戦し時間を稼ぎますし、中途半端な戦力で警備隊へ挑むと返り討ち間違いないでしょう。

当初は、沖縄本島に旅団を置き普通科連隊を離島に分散させる、南西諸島北部と南部に小型編成の二個旅団を配置し旅団が島嶼部を広く機動できる体制を構築する、哨戒艇や襲撃艇に揚陸艇等小型舟艇主力の水陸両用部隊を海上自衛隊佐世保地方隊隷下に配置し第15旅団が支援する、など比較検討したのですが、結局落ち着いたのは、沖縄本島に航空機動旅団&奄美諸島に数個警備隊と偵察隊の混成群&先島諸島に数個警備隊と偵察隊の混成群、という提案でした。
北大路機関:はるな
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