北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:“師団の在り方”序論1、装甲機動旅団・航空機動旅団構想の再論

2014-12-11 23:57:16 | 防衛・安全保障
◆師団二個旅団基幹案 
 前回掲載しました沖縄の防衛に関する話題は、幾つかのご意見を頂きましたが、今回はその前の部分について。

 装甲機動旅団・航空機動旅団、昨年度末の特集記事として連載しまして、この視点は陸上防衛力について戦車の大幅削減と島嶼部防衛という新しい変革の波が押し寄せる昨今に一視点を、というこれまでの構想(妄想ともいう)を一つのテーマとして提示したもので、併せて海空防衛力の近代化の必要性から陸上防衛力を縮小出来ないかとのご意見が寄せられたことにも端を発し掲載したもの。

 日本列島の防衛は非常に難しく、3000m級の峰々が連なる高山部が連続してあり、海岸線は非常に長く、海洋を隔てているため大規模着上陸を受ける蓋然性は低いが、その分陸上国境以上に接近経路を詠むことが難しい、加えて大陸外縁部の弧状列島であり、周辺国には安全保障面での非友好的国家を有すると共に離島が数多く存在する。

 現実問題として師団規模の着上陸を受ける可能性は、軍事的に非常に難しく、仮に強行されたとしても海上交通路のみという補給線を遮断すれば着上陸部隊は攻撃前進を継続する事は出来なくなるとの指摘の一方、着上陸後に重要な地衝を確保し持久戦を展開しつつ外交上と核兵器による恫喝などを併用し領域占領既成事実に依拠した交渉を行われた場合、少なくとも上陸した敵を海岸線に押し返すだけの固く重い装備が無ければならないことも確かでしょう。

 こうなりますと、重戦力を広く分布させる手法が一つの選択肢で、この点は特に我が国は海洋国家ながら専守防衛を国是としているため、策源地攻撃はもちろん着上陸前に本土を遠く離れた洋上において決戦を行う、という事も難しいでしょう。しかし、重戦力は立ち上がりと戦略機動に時間を要し、広大な国土を有する我が国、事実、北端稚内と南端与那国島の距離は欧州に当てはめれば北は北欧フィンランド首都ヘルシンキで南は北アフリカアルジェリア首都アルジェ、という非常に長い国土を有しているため、重装備立ち上がりの防御準備から防御戦闘までの時間が着上陸後の内陸侵攻の機会を脅威対象に与えるため、軽装備の空中機動部隊の必要性も無視できません。

 しかし、自衛隊の戦略単位を師団とするか旅団とするかの議論以前に、各旅団や師団に空中機動部隊治重装備部隊を混成配置する場合、極論を言えば戦車とヘリコプターの運用面の相違が現実的弊害となるばかりでなく、作戦単位としての最小限度の部隊規模を維持するための装備だけでも非常に多くの戦車とヘリコプターが必要となるため、数量の面で充足させることが出来ず、旧型装備をやりくりするほかなくなる、というリスクも無視できないところ。

 こうした視点から、苦肉の策として戦車を集約した装甲機動旅団、方面隊のヘリコプターを一括配備し軽装甲部隊をヘリコプターからの空輸支援の下補給線を維持しつつ高速前進する航空機動旅団、という二つの部隊を一つの師団の下に配置し、軽装備部隊が拡大阻止と遅滞行動に重装備部隊の進出掩護、重装備部隊が機動打撃を行う、という師団の在り方、この他に機動運用や運動戦という視点を踏まえても部隊編成に最適な視点には思い至りませんでした。

 空中機動部隊ですが、所謂ヘリボーン強襲に重点をおき過ぎるばあい、敵着上陸部隊が防空化kを充分保有していた場合確実に撃退され、これはイラク戦争における米軍戦闘ヘリコプター部隊が状況によっては運用を制限されたところからも戦訓として重要です。他方で、空中機動部隊が陸上の軽装甲部隊を補給面で支援した場合、防空部隊の脅威は地上の軽装甲部隊がその有無と制圧を含め対処できる部分が大きく、フランス軍は昨年のマリでの武装勢力鎮圧にヘリコプターを補給と火力支援に充てる軽装甲部隊主体の戦闘を展開し効果を上げています。

 他方、陸上防衛力に人員を取られ過ぎているため航空海上部隊の近代化に支障をきたしている、との指摘と批判がこちらにご意見として寄せられましたが、解決策として考え得るのは、特科部隊を効率化したうえで陸上自衛隊が防空戦闘にも資する戦闘機部隊を整備し近接航空支援委充てる、というものです。米海兵隊などは戦闘攻撃機を多数編成に組み込み砲兵火力は歩兵支援などに限定し航空阻止と近接航空支援を以て対砲兵戦闘や砲兵制圧射撃に攪乱射撃などの任務を対応させています。この方式はどう考えるべきでしょうか。

 極論すれば、陸上自衛隊の存在が制海権維持や航空優勢維持に寄与しないとの批判、言掛りとも考えるのですが、これは海上自衛隊や航空自衛隊が着上陸を受ける状況においてその主力装備を最大限運用できない状況となった際に陸上自衛隊の任務を代替できるのか、という逆の支店を考えますと、共に国土の防衛に資するための組織であり、任務は異なるもの、国家は国土があてのものであり陸上防衛は重油であると共に国家の構成には刻印が不可欠でありその国民の生命が海上交通により維持されている、という部分、どちらも切り離せないものであるため、この論理は極論であり極論は建設的議論に資する部分はありません。

 結果、陸上自衛隊は航空部隊を有していますが戦闘攻撃機を運用する組織構造や教育体系を有しておらう、その分陸上自衛隊自身が近接航空支援に過度に依存せずとも空中打撃力を戦闘ヘリコプターや対戦車ヘリコプターにより展開できる態勢を確保することで航空自衛隊の航空支援や海上自衛隊の艦砲支援に依存せず、言い換えれば海上航空自衛隊が本来の任務に対応できる体制が構築できるため、こちらが最適解と考えます。

 航空機動旅団と装甲機動旅団の編成は、独自の火力と自己完結させるという意味で、航空投射能力も装甲部隊による機動打撃力も兼務することが可能であり、自己完結故に機動運用、方面隊の支援を受けにくい地域においても展開し防衛戦闘へ対応することができますし、戦闘攻撃機などを保有すれば、師団飛行隊の手に余る、飛行場ひとつとっても必要となり飛行場を機動する為にはそれだけで空輸能力が必要となり、独力で如何に対応できるかという視点は重要です。

 装甲機動旅団と航空機動旅団の具体編成は三月末に掲載しましたが、無理に火力と機動力を削いだ場合、近接航空支援への依存度が高まるなどの結果、航空自衛隊が防空戦闘に専念d着ない状況が生起し得ます。このため、装甲機動旅団のロケット砲を含む特科火力、航空機動旅団の対戦車ヘリコプター隊の重要度はあると共に、これを別々の運用として独立旅団により部隊を編成した場合、装甲機動旅団が空輸支援を必要とした場合、航空機動旅団が機甲戦力の支援を必要とした場合、その都度上級部隊を通しての時間的ロスが生じます。このため全く性格の異なる二個旅団を以て師団を編成する、という案を提示しました。

 また、航空機動旅団だけを抽出し、装甲機動旅団を後方警戒に充てる運用、島嶼部防衛ではこの手法が考えられます。航空機動旅団は空中機動部隊からの補給支援と火力支援を念頭とした運用を提案していますが、これは軽装甲部隊主体の装備重量が非常に英領となる事を意味します。対戦車誘導弾や迫撃砲などの装備により火力は決して低くは無いのですが、軽量ということは海上家遺体の輸送艦や民間の高速フェリーとの支援を受け、非常に早く進出することができますし、軽装甲機動車や儒迫撃砲に対戦車誘導弾は輸送ヘリコプターにより空輸可能です。これが我が国土の特性、島嶼部を置く抱える現状にも対処できる編制、ともいえるわけです。

 何故師団か、何故重装備が必要なのか、陸上防衛の位置づけとはなにか、幾つかの視点から装甲機動旅団・航空機動旅団からなる師団の提案を行いました。また同時に、二個旅団基幹の師団は、人員面で一万名を越える師団となり、陸上自衛隊草創期の管区隊編成に並ぶものとなります。その分師団数は最盛期の13個師団と比較し非常に少ないものとなりますが、管区隊そのものも数が少なく、その時代に回帰しつつ、機動防衛力を展開可能な師団、NATO正面の師団に対抗し得る規模と能力を持ち、米軍師団と同格とはいかないまでも我が国土での運用に限れば図上演習では拮抗し得るものとなるでしょう。

 この試案、爾後数回に分け掲載しますが、重要な点は装甲戦闘車と軽装甲車のみ、増勢の必要があり、これは自民党時代二度と民主党時代の防衛大綱改訂に際して、普通科部隊の重視という国防会議の方針を踏襲するのみ、それ以外の戦闘ヘリコプターや輸送ヘリコプターは現状の水準でほぼ対応可能、特科火砲の300門縮減や戦車300両体制時代を念頭とした装備水準でも対応できるものとして構想しました。具体的には戦車約300ならば最大限350必要となる案で、輸送ヘリコプターは10機程度不足しますが、次回以降、試案の私案を備忘録として掲載してゆきたいと思います。

北大路機関:はるな
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