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陸上防衛作戦部隊論(第五八回):航空機動旅団、責任交戦範囲視点から見る装甲車両体系

2016-09-03 21:44:00 | 防衛・安全保障
■大規模戦闘の攻撃主力担う
 航空機動、これは日本本土防衛を軸とした必勝の戦略体系を構築する専守防衛の装備体系の緊急展開と大規模戦闘における攻撃の主力を担う極めて重要な要素です。

 航空機動作戦、新しい概念として空中機動と意図的に用語を区別したものとして提示しました。空中機動、軽歩兵部隊をヘリコプターにより一挙に展開させ、戦闘ヘリコプターの支援下航空打撃力を集中させ地域を制圧、目標攻撃後は空中機動力を生かし一挙に離脱するか、若しくは輸送ヘリコプターにより火砲や小型車両等を増強し、空挺部隊と同等の緊要地形確保に充てる、という。

 いわばヘリコプター主体の作戦運用基盤を構築するものがその基幹となっています。一方、航空機動という概念は航空機に移動支援を行わせることで軽装甲部隊の機動力を最大限高める事で、補給と後方連絡線維持を多用途ヘリコプターに、重装備の空輸支援や強襲任務へは輸送ヘリコプターの支援下で陸上部隊の進出と連携、火力支援並びに対装甲戦闘を戦闘ヘリコプターが実施する、というもの。

 基本的に軽装甲部隊が主力となり、空中機動部隊として過度に対戦車ヘリコプターや戦闘ヘリコプターの航空打撃力に依存する事を意図的に避ける必要があります。補完的に、即ち戦闘ヘリコプターが上空に直掩していなければ基本的な戦闘行動を行う事が出来ないようでは、そもそも土地を制圧し奪還する、という陸上戦闘部隊の定義さえ危ぶませるためです。

 軽装甲部隊、機動砲や装輪自走榴弾砲と一体化した混成部隊が航空部隊の支援を受ける事となります。これは、特科部隊が4000m以遠の遠距離戦闘を、戦車部隊が4000mから500mまでの近接戦闘における中距離域内を、普通科部隊が500m以内の責任交戦範囲において近接戦闘を展開する、という戦闘部隊の任務に対し、能力に応じた任務を付与する。

 軽装甲部隊が機甲部隊と比較した場合に充分装備を携行する事が出来ない状況を航空部隊が補完する、という位置づけです。ある種、機甲装備等を均等に装備する事は理想なのですが、即応性と打撃力の両立、統合機動防衛力を具現化するにはこうした選択肢しかないのではないか、という視座に基づきます。

 軽装備の部隊は地形障害を高い水準で克服する事が出きます。軽装備部隊では機甲脅威に対し充分な戦闘能力を持たないのではないか、何故ならば軽装甲部隊は責任交戦範囲として近接戦闘部隊の責任交戦範囲である500m以遠の目標を打撃する戦車に当たる装備が無く、砲兵攻撃に対し脆弱性の大きな対戦車ミサイルなど軽歩兵に対抗し得る一本の長槍を持たせ鋼鉄の槍衾へ叩きつける方法以外対抗手段を持たない点を指摘されるかもしれません。

 ですが、重装備部隊が通行できない峻険な地形、隘路への多種多様な接近経路を利用し迂回し後方の連絡線を叩く、戦車の入り込めない地形を利用し一挙に500m以内の近接戦闘距離まで肉薄する、軽歩兵部隊は軽装甲車両から下車戦闘を展開する事により独自の戦闘が展開可能です。これは装甲戦闘車のような砲手と車長を分担する車両では、下車展開する人員が局限され、選択できないものでしょう。

 その装甲車の概要について。軽装甲車両は、例えばフランスのVAB軽装甲車やMRAP耐爆車両等を一例に挙げますと、小銃班10名として操縦要員と車長を除く8名が下車戦闘を展開可能ですが、これを装甲戦闘車とした場合、操縦手、車長、機関砲手、が下車展開できませんし、下車展開が長期間に及ぶ場合、MAT手をもう一人残す必要が出てきます。

 すると下車戦闘班は半数近くまで縮小してしまい、しかも装甲戦闘車は独立した戦闘能力を持つのですが、その高い攻撃力と防御力は多くの弾薬と燃料、整備支援を要します。しかしその分、敵の戦車に対して限定的な、敵の装甲戦闘車について充分な対抗能力を有します。

 前述のとおり、軽歩兵部隊はあらゆる地形を踏破しますが、機甲部隊はこの限りではない、一方、機甲部隊を正面から防御するには重装備部隊が必要となる為、航空機動旅団はこの任務には正面から向かうものではなく、併せて提示しました装甲機動旅団がその任務に当たる、防御任務の要諦を担うという任務区分が考えられるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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