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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮9.09核実験強行! 五度目の核実験と核兵器体系の戦力化、我が国への核恫喝危機

2016-09-10 21:30:48 | 国際・政治
■核恫喝へ我が国の選択肢
 北朝鮮の核実験について。現状を放置すれば我が国平和主義そのものの危機に繋がります、危機感を持たなければなりません。

 北朝鮮の五度目の核実験は、突如行われました。核実験の継続、核兵器国以外の侵攻核保有国の増大、これは核の世紀であった20世紀の良心、核不拡散体制の均衡が根本的に危機に曝されており、一方、国際社会はこれ以上の制裁を行おうにも、海上封鎖等、1962年のキューバミサイル危機に際して実施されたような施策以外、選択肢が残されていません。

 今回の核実験は核弾頭部分の爆発実験を行ったとの事で、将来的に弾道ミサイルを運搬手段として用いる核兵器体系の完成を企図したものと考えられます。ただ、難しいのは、如何に完成を宣言しようとも、核弾頭の弾道ミサイルへの搭載実験は、実際に発射し大気圏核実験を行わなければミサイルでの運用能力を世界に証明させることは難しいでしょう。そのミサイルですが、ノドンミサイルへの搭載を行う以上、射程から日本を目標としている事は確かです。

 次の脅威は、すると、弾道ミサイル実験の強化、そして可能性として完全に否定できないのは日本海乃至太平洋上における弾道ミサイルによる核実験の強行です。勿論、包括的核実験禁止条約に反する実験ですが、既に核拡散防止条約へ反し、核兵器国ではなく、ミサイル実験禁止安保理決議を無視している北朝鮮には国際公序では実験の阻止は出来ません。

 我が国としては、現実問題として選択肢は少なくなっています。第一に考えなければならないのは核攻撃に対する国民保護体制の確立です。今回の核実験は10kt威力でしたが、今後、例えば広島型原爆の15kt以上の威力程度に強化される事も念頭に、爆風や熱線から防護可能な地下施設や爆心地から500m以遠で倒壊を免れる施設を選定し指定すべきです。広島核攻撃に際しても爆心地付近の相生橋のように倒壊を免れた事例がありました。

 核攻撃警報をJアラートに明示し、弾道ミサイル飛来と同時に、緊急地震速報と同等の報道機関及び防災無線などによる緊急通知体制の確立等、可能な事は非常に多いのです。各攻撃警報への避難訓練は冷戦時代、欧州やアメリカ本土、ソ連や中国でも実施され、韓国では現在も退避訓練は実施されています。唯一の被爆国日本は準備を怠ってはなりません。

 クリントン政権時代、アメリカは北朝鮮核施設への限定空爆をかなり真剣に検討していました。ただ、実行すれば確実に朝鮮戦争休戦状態が戦闘再開へ転換するため、韓国の金詠三大統領が強硬に反対し、見送られたという歴史があります。あれから20年以上を経て、現段階となっては、核施設限定空爆という選択肢は逆に難しいものとなってしまいました。

 その上で我が国の選択肢についてですが、ミサイル防衛の強化、報復的抑止力の整備、防衛施設への核攻撃想定の強化、等が考えられるでしょう。ただ、どれも我が国防衛政策を根本から転換を強いるものであり、ミサイル防衛の強化は防衛予算の負担を大きく増大、報復的抑止力整備は憲法上の問題、防衛施設耐核強化も予算の負担を大きくするでしょう。

 ミサイル防衛の強化、現在海上自衛隊はイージス艦6隻と全国のペトリオットミサイル部隊へPAC-3により防衛を展開していますが、イージス艦の主任務は艦隊防空であり、6隻のイージス艦の内日本列島全域を防護するには日本海だけで2隻を遊弋させる必要があります、この為、長期的視野からは万全を期する場合、イージス艦の増勢は避けられません。

PAC-3について、迎撃率が高いことが実験で証明されていますが射程は15km程度と射程が限られ、大都市中央部へ常時展開しなければ対応が難しい他、どうしても射程の限界から付随被害が避けられず、PAC-3は改良により30kmまで射程を延伸可能ですが、THAAD、250kmという射程が大きな新迎撃ミサイルを導入する必要性可否を検討すべきでしょう。

 報復的抑止力の整備、従来は策源地攻撃として弾道ミサイル攻撃が継続的に我が国に実施される場合、緊急避難的に自衛権の範囲内においてそのミサイル発射施設を航空攻撃などにより撃破する選択肢が法的に可能、という、刑法上の緊急避難を援用した解釈はありましたが、しかし、軍事的には策源地攻撃により全ての脅威の事前排除は難しくなりました。

 策源地攻撃を行おうにも、どのミサイルへ核弾頭が搭載されているかは不明、最低で200基のノドンミサイルとその移動発射装置、潜水艦発射弾道弾、発射前に撃破するには、航空自衛隊のF-2支援戦闘機3個飛行隊とKC-767空中給油機4機では、時間がかかりすぎ、現実的に策源地が広すぎ、目標が多すぎ、現実的に報復的抑止力へ転換する他ありません。

 防衛施設への核攻撃想定の強化、掩体建設の強化やNBC防護能力の強化、地下退避施設など整備しなければなりません。これは冷戦時代であれば第一撃に核攻撃が行われるのではなく、通常兵器による攻撃から緒戦となり、限定戦争となる想定でしたが、北朝鮮は通常戦力による我が国攻撃が出来ない以上、第一撃に核攻撃が実施される可能性が高い為です。

 集団的自衛権行使についても、さらに前進し検討する必要が出てくる可能性があります。我が国の航空打撃力は限られていますが、同盟国米軍にはF-15E,F-16,海軍と海兵隊にはF/A-18C/EとAV-8Bが合計3000機近く運用されており、仮に我が国への攻撃が実施され、続く攻撃回避へ策源地攻撃等が実施される場合、制空戦闘等へ参加を迫られるでしょう。

 核攻撃警報態勢整備、報復的抑止力整備、防衛予算の増額、行き過ぎと思われるかもしれませんが、それ以上に最も懸念するものは、核恫喝が本格化し、例えば新興保守政党が核武装を政策提案し、国民の支持が集まる事です。我が国は民主主義国家であり、現政権の防衛政策が支持を失い、強硬論へ世論が傾けば、平和主義そのものの危機に繋がります、危機感を持たなければなりません。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (8)
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