■日本海軍の空母軽視が敗因か
江田島練習艦隊出航の写真と共に前回は紹介しましたが例によって戦艦大和の動いている写真を持っていませんので今回は大阪湾展示訓練の写真とともに。

映画“アルキメデスの大戦”、テレビCMを視る限りでは戦艦大和、と思われる戦艦が会場で航空攻撃を受け大傾斜している様子が示されているのですが、映画では大和型の要求から太平洋戦争開戦、そして連合艦隊の壊滅までを描くのでしょうか。意外に長い期間を短い映画で描く事となるのですが、史実に如何に創作を織り込むかが少し興味深いですね。

日本海軍戦艦至上主義の幻、日本海軍の空母軽視が敗因か、実のところこうした誤解が相当長い事在ったように思います、しかし昨今は“艦隊これくしょん”というゲームの影響でしょうか、かつては月刊丸や世界の艦船でも愛読しない限り簡単に分らなかった日本海軍の空母多数の陣容、そしてアメリカの戦艦と大量の空母の情報が普及し、変ったようにもおもう。

モンタナ級戦艦としてアメリカ海軍は、日本の新戦艦に対抗する巨大戦艦を計画していました。日本が大和級戦艦の量産を2隻で留めている事から、アイオワ級戦艦を含む新戦艦10隻から12隻で充分対抗できる、として建造が中止され空母の量産が優先された構図です。しかし、日本が戦艦を軽視していたならば、建造され対日戦切り札となった可能性もある。

航空軽視、当時の日本海軍をこう表現するならば無知として世界中に嘲笑される事でしょう、日本は空母鳳翔を世界で初めて新造空母として就役させました。当時の艦載機の性能は戦艦を撃沈可能な大型爆弾は搭載出来ません、駆逐艦を撃沈する事も難しい。しかし、数十年後には大きな威力を有する、として早い内に実用化、その戦力化を進めた先行者だ。

鳳翔、赤城、加賀、龍驤、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴、大鳳、雲龍、天城、葛城、信濃、祥鳳、瑞鳳、大鷹、雲鷹、冲鷹、飛鷹、隼鷹、龍鳳、海鷹、神鷹、千歳、千代田、日本海軍が太平洋戦争に投入した空母は以上の通り。戦艦は、金剛、比叡、榛名、霧島、扶桑、山城、伊勢、日向、長門、陸奥、大和、武蔵。数の上でも日本は空母を重視していました。

航空戦力を軽視しているならば、零式艦戦だけで生産数一万以上、空母艦載機の戦闘機だけで一万機も量産するものでしょうか。一方、零戦に拘りすぎたと毎年新型戦闘機を制式化した陸軍に対し海軍の航空政策への批判的な論調がありますが、背景には新型機が大型化すると空母に搭載出来ない点があります。それ程に艦隊航空部隊を重視していました。

レキシントン、サラトガ、レンジャー、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネット、ワスプ、真珠湾攻撃の時点でアメリカ海軍が保有していた空母は以上の通り、日本は鳳翔、赤城、加賀、龍驤、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴、祥鳳、瑞鳳、という陣容でした。それでは何故勝てなかったのか、と問われますと両洋艦隊法によるアメリカの空母量産が大きい。

カールヴィンソン下院海軍委員会委員長による第二次海軍拡張法が1938年5月に成立し、続いて欧州第二次世界大戦勃発を受けての両洋艦隊法が1940年7月に成立し、エセックス級空母18隻、アイオワ級戦艦2隻、モンタナ級戦艦5隻、アラスカ級大型巡洋艦6隻、巡洋艦27隻に駆逐艦115隻と潜水艦115隻、航空機15000機等を五年程度で整備するもの。

日本が太平洋戦争開戦を決意すると共に第二次世界大戦へ枢軸国として参加を決意した背景には、この両用艦隊法が完成した場合、日本海軍の総戦力はアメリカの半分以下となり、絶対に対抗出来ないとの切実な危惧が在った訳です。毎回示す度に何か切ない気分となるのですが、エセックス級空母の艦名は以下の通り。使いやすく1980年代までは一部現役へ。

エセックス,ヨークタウン,イントレピッド,ホーネット,フランクリン,タイコンデロガ,ランドルフ,レキシントン,バンカーヒル,ワスプ,ハンコック,ベニントン,ボクサー,ボノムリシャール,レイテ,キアサージ,オリスカニー,リプライザル,アンティータム,プリンストン、シャングリラ,レイクシャンプレーン,タラワ,ヴァリフォージ,イオージマ,フィリピンシー,等など。

エセックス級空母の量産が始まりまして満載排水量33000tの空母が1942年から続々建造されます、更に大型軽巡設計を応用したインディペンデンス級軽空母9隻、護衛空母はイギリスが船団護衛用に要請した艦型の米軍向最初の17隻を筆頭に、カサブランカ級50隻、コメンスメントベイ級19隻が続く。イギリス海軍の空母20隻、護衛空母44隻も加わる。

キングジョージ五世級戦艦、キングジョージ五世、プリンスオブウェールズ、ヂュークオブヨーク、アンソン、ハウの五隻をイギリスは建造します。ワシントン海軍縮条約ではイギリスはクイーンエリザベス級戦艦やロイヤルサブリン級戦艦、40cm砲を備えたネルソン級戦艦に世界最大の巡洋戦艦フッド、レナウン級巡洋戦艦、15隻の戦艦を有していました。

ノースカロライナ級戦艦,ノースカロライナ,ワシントン。サウスダコダ級戦艦、サウスダコダ,インディアナ,マサチューセッツ,アラバマ。アメリカは条約明けの新戦艦として先ず6隻を建造します。続き対日戦想定の戦前の両用艦隊法に基づき、アイオワ級戦艦、アイオワ,ニュージャージー,ミズーリ,ウィスコンシン,イリノイ,ケンタッキーが続く。実に12隻だ。

戦艦アーカンソー,ニューヨーク級戦艦ニューヨーク,テキサス,ネヴァダ級戦艦ネヴァダ,オクラホマ,ペンシルヴェニア級戦艦ペンシルヴェニア,アリゾナ,ニューメキシコ級戦艦ニューメキシコ,ミシシッピ,アイダホ,テネシー級戦艦テネシー,カリフォルニア,コロラド級戦艦コロラド,メリーランド,ウェストヴァージニア,条約下でも戦艦15隻が維持されています。

“アルキメデスの大戦”、さて戦時中の様子を描くというCMの描写なのですが、主人公はアルキメデスの再来という程の数学の天才という架空の人物です。それでは一つ当方が気になる部分について、主人公は問題視するのかな、という部分なのですが、それは戦時中の戦艦と潜水艦の運用についてです。潜水艦の運用は様々な識者が指摘している所ですが。

金剛、比叡、榛名、霧島、扶桑、山城、伊勢、日向、長門、陸奥、大和、武蔵。この中で金剛、比叡、榛名、霧島は金剛型戦艦という巡洋戦艦として設計され高速戦艦へ改造された、30ノットで航行する空母に随伴できる戦艦として、重用されているのですが、他の戦艦は25ノット、殆ど活用されなかった、この点については疑問を呈するのでしょうか。

イギリスのペデスタル作戦のように戦艦を船団護衛に動員し、船団を護衛するならば多くの資材を日本へ運ぶことが出来ました、が。実際には日本が戦艦無用論に凝り固まっていた故にどの活用の見通しを確立せず、結果、手持ちの装備を最大限有用に活用し戦争を有利に導く、この大原則を放棄している様な部分、劇中の天才は指摘するのでしょうか、ね。

そもそも、ワシントン海軍軍縮条約により主力艦はアメリカイギリスに対し六割に制限され、造船能力でも限界が早い。しかし、それは単純に正面から戦った場合の結論であり、例えば戦艦は勿論、航空戦力に潜水艦と空母に陸軍も含め相手に分散を強要する、分散を強いた上で友理奈正面でのみ各個撃破を試みる、それが作戦というものです。天才はそうしたところに必要なのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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江田島練習艦隊出航の写真と共に前回は紹介しましたが例によって戦艦大和の動いている写真を持っていませんので今回は大阪湾展示訓練の写真とともに。

映画“アルキメデスの大戦”、テレビCMを視る限りでは戦艦大和、と思われる戦艦が会場で航空攻撃を受け大傾斜している様子が示されているのですが、映画では大和型の要求から太平洋戦争開戦、そして連合艦隊の壊滅までを描くのでしょうか。意外に長い期間を短い映画で描く事となるのですが、史実に如何に創作を織り込むかが少し興味深いですね。

日本海軍戦艦至上主義の幻、日本海軍の空母軽視が敗因か、実のところこうした誤解が相当長い事在ったように思います、しかし昨今は“艦隊これくしょん”というゲームの影響でしょうか、かつては月刊丸や世界の艦船でも愛読しない限り簡単に分らなかった日本海軍の空母多数の陣容、そしてアメリカの戦艦と大量の空母の情報が普及し、変ったようにもおもう。

モンタナ級戦艦としてアメリカ海軍は、日本の新戦艦に対抗する巨大戦艦を計画していました。日本が大和級戦艦の量産を2隻で留めている事から、アイオワ級戦艦を含む新戦艦10隻から12隻で充分対抗できる、として建造が中止され空母の量産が優先された構図です。しかし、日本が戦艦を軽視していたならば、建造され対日戦切り札となった可能性もある。

航空軽視、当時の日本海軍をこう表現するならば無知として世界中に嘲笑される事でしょう、日本は空母鳳翔を世界で初めて新造空母として就役させました。当時の艦載機の性能は戦艦を撃沈可能な大型爆弾は搭載出来ません、駆逐艦を撃沈する事も難しい。しかし、数十年後には大きな威力を有する、として早い内に実用化、その戦力化を進めた先行者だ。

鳳翔、赤城、加賀、龍驤、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴、大鳳、雲龍、天城、葛城、信濃、祥鳳、瑞鳳、大鷹、雲鷹、冲鷹、飛鷹、隼鷹、龍鳳、海鷹、神鷹、千歳、千代田、日本海軍が太平洋戦争に投入した空母は以上の通り。戦艦は、金剛、比叡、榛名、霧島、扶桑、山城、伊勢、日向、長門、陸奥、大和、武蔵。数の上でも日本は空母を重視していました。

航空戦力を軽視しているならば、零式艦戦だけで生産数一万以上、空母艦載機の戦闘機だけで一万機も量産するものでしょうか。一方、零戦に拘りすぎたと毎年新型戦闘機を制式化した陸軍に対し海軍の航空政策への批判的な論調がありますが、背景には新型機が大型化すると空母に搭載出来ない点があります。それ程に艦隊航空部隊を重視していました。

レキシントン、サラトガ、レンジャー、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネット、ワスプ、真珠湾攻撃の時点でアメリカ海軍が保有していた空母は以上の通り、日本は鳳翔、赤城、加賀、龍驤、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴、祥鳳、瑞鳳、という陣容でした。それでは何故勝てなかったのか、と問われますと両洋艦隊法によるアメリカの空母量産が大きい。

カールヴィンソン下院海軍委員会委員長による第二次海軍拡張法が1938年5月に成立し、続いて欧州第二次世界大戦勃発を受けての両洋艦隊法が1940年7月に成立し、エセックス級空母18隻、アイオワ級戦艦2隻、モンタナ級戦艦5隻、アラスカ級大型巡洋艦6隻、巡洋艦27隻に駆逐艦115隻と潜水艦115隻、航空機15000機等を五年程度で整備するもの。

日本が太平洋戦争開戦を決意すると共に第二次世界大戦へ枢軸国として参加を決意した背景には、この両用艦隊法が完成した場合、日本海軍の総戦力はアメリカの半分以下となり、絶対に対抗出来ないとの切実な危惧が在った訳です。毎回示す度に何か切ない気分となるのですが、エセックス級空母の艦名は以下の通り。使いやすく1980年代までは一部現役へ。

エセックス,ヨークタウン,イントレピッド,ホーネット,フランクリン,タイコンデロガ,ランドルフ,レキシントン,バンカーヒル,ワスプ,ハンコック,ベニントン,ボクサー,ボノムリシャール,レイテ,キアサージ,オリスカニー,リプライザル,アンティータム,プリンストン、シャングリラ,レイクシャンプレーン,タラワ,ヴァリフォージ,イオージマ,フィリピンシー,等など。

エセックス級空母の量産が始まりまして満載排水量33000tの空母が1942年から続々建造されます、更に大型軽巡設計を応用したインディペンデンス級軽空母9隻、護衛空母はイギリスが船団護衛用に要請した艦型の米軍向最初の17隻を筆頭に、カサブランカ級50隻、コメンスメントベイ級19隻が続く。イギリス海軍の空母20隻、護衛空母44隻も加わる。

キングジョージ五世級戦艦、キングジョージ五世、プリンスオブウェールズ、ヂュークオブヨーク、アンソン、ハウの五隻をイギリスは建造します。ワシントン海軍縮条約ではイギリスはクイーンエリザベス級戦艦やロイヤルサブリン級戦艦、40cm砲を備えたネルソン級戦艦に世界最大の巡洋戦艦フッド、レナウン級巡洋戦艦、15隻の戦艦を有していました。

ノースカロライナ級戦艦,ノースカロライナ,ワシントン。サウスダコダ級戦艦、サウスダコダ,インディアナ,マサチューセッツ,アラバマ。アメリカは条約明けの新戦艦として先ず6隻を建造します。続き対日戦想定の戦前の両用艦隊法に基づき、アイオワ級戦艦、アイオワ,ニュージャージー,ミズーリ,ウィスコンシン,イリノイ,ケンタッキーが続く。実に12隻だ。

戦艦アーカンソー,ニューヨーク級戦艦ニューヨーク,テキサス,ネヴァダ級戦艦ネヴァダ,オクラホマ,ペンシルヴェニア級戦艦ペンシルヴェニア,アリゾナ,ニューメキシコ級戦艦ニューメキシコ,ミシシッピ,アイダホ,テネシー級戦艦テネシー,カリフォルニア,コロラド級戦艦コロラド,メリーランド,ウェストヴァージニア,条約下でも戦艦15隻が維持されています。

“アルキメデスの大戦”、さて戦時中の様子を描くというCMの描写なのですが、主人公はアルキメデスの再来という程の数学の天才という架空の人物です。それでは一つ当方が気になる部分について、主人公は問題視するのかな、という部分なのですが、それは戦時中の戦艦と潜水艦の運用についてです。潜水艦の運用は様々な識者が指摘している所ですが。

金剛、比叡、榛名、霧島、扶桑、山城、伊勢、日向、長門、陸奥、大和、武蔵。この中で金剛、比叡、榛名、霧島は金剛型戦艦という巡洋戦艦として設計され高速戦艦へ改造された、30ノットで航行する空母に随伴できる戦艦として、重用されているのですが、他の戦艦は25ノット、殆ど活用されなかった、この点については疑問を呈するのでしょうか。

イギリスのペデスタル作戦のように戦艦を船団護衛に動員し、船団を護衛するならば多くの資材を日本へ運ぶことが出来ました、が。実際には日本が戦艦無用論に凝り固まっていた故にどの活用の見通しを確立せず、結果、手持ちの装備を最大限有用に活用し戦争を有利に導く、この大原則を放棄している様な部分、劇中の天才は指摘するのでしょうか、ね。

そもそも、ワシントン海軍軍縮条約により主力艦はアメリカイギリスに対し六割に制限され、造船能力でも限界が早い。しかし、それは単純に正面から戦った場合の結論であり、例えば戦艦は勿論、航空戦力に潜水艦と空母に陸軍も含め相手に分散を強要する、分散を強いた上で友理奈正面でのみ各個撃破を試みる、それが作戦というものです。天才はそうしたところに必要なのです。
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