■七四年目の広島原爆慰霊の日
21世紀に入り2019年、本日は広島原爆投下から74年目の慰霊の日です。ただ、平成の時代も令和の時代となりましたが、驚くべき事に世界は核軍拡の時代を迎えつつある。
北朝鮮の核実験と大陸間弾道弾開発、中国軍による南シナ海人工島建設と戦略ミサイル原潜量産は、インドパキスタンの核開発に続き、21世紀にも核拡散の脅威が顕在化した事を示しましたが、“核武装論も浮上、米中のはざまで国防めぐる議論続くオーストラリア(AFP)”と“米国のINF条約離脱とドイツの核武装をめぐる議論(日経)”気になる新しい論点が。
核武装論も浮上、米中のはざまで国防めぐる議論続くオーストラリア、AFP特集に非常に刺激的な表題が載りました。オーストラリアは中国の東南アジア地域での影響増大と北朝鮮ミサイル弾道脅威を受け現在、第二次世界大戦後最大規模の軍拡を実施中です。近年ホバート級イージス艦と28000t級キャンベラ級強襲揚陸艦、水陸両用部隊新編を行いました。
F-35戦闘機導入計画に潜水艦量産計画、陸軍は650両規模の装甲戦闘車と重装輪装甲戦闘車の導入計画、日本との包括安全保障協力協定を経て日豪間の防衛協力も進む。キャンベラ級はF-35Bが搭載可能ですし、新型潜水艦はフランス製原子力潜水艦を通常動力潜水艦へ再設計したものであり、将来的に原子力潜水艦導入への布石と見る事も出来るでしょう。
しかし、核開発、これはオーストラリアの他にドイツでも核開発の必要性を年々議論する動きが報じられています。米国のINF条約離脱とドイツの核武装をめぐる議論、これは日経ビジネスに今年2019年2月12日に紹介されたリポートです。内容はアメリカのINF全廃条約離脱を契機としたロシア核戦力増大への危機感で生じたドイツ核武装論というもの。
核拡散防止条約に反しますが、オーストラリアの場合はオセアニア地域の非核化を記したラロトンガ条約があります。南太平洋非核地帯条約根本から覆す核武装論です、地域非核化条約という日本の非核三原則よりも踏み込んだ非核化を成し遂げた歴史と対照的で驚かされますが、オーストラリアは核兵器に関し日本と異なった価値観があるのかもしれない。
オーストラリアでは核兵器保有の事例こそありませんが、オーストラリア国内はイギリス軍の核実験場を提供した事例があり、少なくとも核開発に関しては自国が核攻撃された日本ほど、議論に禁忌はありません。それよりも突如北朝鮮の開発する大陸間弾道弾がオーストラリアへも向けられていると知り非核化よりも核攻撃からの防護が急務となりました。
ラロトンガ条約の枠組根幹を見直す可能性も含め、議論としてオーストラリア核武装論が浮上する背景には、核攻撃への抑止力の必要性と過去の国内でのイギリスによる核開発を引き受けた歴史があるのでしょう。ただ、勿論核武装は議論が極論として出ているだけであり、現実にはホバート級イージス艦にSM-6を搭載し弾道弾終末段階迎撃を検討中です。
ドイツ核武装論は、ニュークリアシェアリングという冷戦時代のNATO核戦力前方展開制度を理解しますと、意外にも核武装の心理的障壁が低い事を考えさせられます。ニュークリアシャアリングとは、平時に置いて核兵器国であるアメリカ等が核弾頭を管理し、有事の際に対独緊急供与しドイツ軍の攻撃機や重砲から戦術核を使用させる、という制度です。
ニュークリアシェアリングは主として、冷戦時代にソ連軍がドイツへ侵攻した場合、ソ連軍はドイツ域外の大西洋岸まで侵攻する可能性が高く、ドイツ国内で通常戦力で阻止できぬ場合、戦術核を用いてでも阻止する必要がありました。しかし多数のドイツ国民が巻き込まれる為、NATOが行うには政治的に難しく、ドイツ軍により自国内で使用させるもの。
INF全廃条約枠組の崩壊はドイツ政府に対し非常に厳しい懸念を突き付ける事となりました。INF全廃条約は射程500kmから5500kmまでの核兵器運搬手段を全廃させるもので、冷戦後にポーランドとベラルーシという緩衝地帯を得たドイツにはロシア軍核兵器の脅威が無い現状です。しかし、ここにINF全廃条約枠組破棄が核の脅威再来を意味しました。
日本は広島長崎の惨禍から核廃絶を国是としています。アメリカの核の傘下にあるとの反論もありますが、日本国内への核兵器持ち込みは認めておらず、ロシア潜水艦による核兵器領域内通過を阻止する為に国際海峡である津軽海峡の中央部分を特例として公海とし、何が何でも領域内へ核兵器を持ち込ませない枠組を構築しています。世界にも例が無い。
しかし、核廃絶の認識は日本の一般論で考えられるほど世界では共有されていません。現在進む核兵器禁止条約等に消極的な日本政府は核廃絶への行動が甘い様に誤解されていますが、核兵器禁止条約には制裁措置や離脱枠組が曖昧である故に多数の国が加入しているとも分析出来、核廃絶は日本式でもう少し真剣に取り組まねばならないように思います。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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21世紀に入り2019年、本日は広島原爆投下から74年目の慰霊の日です。ただ、平成の時代も令和の時代となりましたが、驚くべき事に世界は核軍拡の時代を迎えつつある。
北朝鮮の核実験と大陸間弾道弾開発、中国軍による南シナ海人工島建設と戦略ミサイル原潜量産は、インドパキスタンの核開発に続き、21世紀にも核拡散の脅威が顕在化した事を示しましたが、“核武装論も浮上、米中のはざまで国防めぐる議論続くオーストラリア(AFP)”と“米国のINF条約離脱とドイツの核武装をめぐる議論(日経)”気になる新しい論点が。
核武装論も浮上、米中のはざまで国防めぐる議論続くオーストラリア、AFP特集に非常に刺激的な表題が載りました。オーストラリアは中国の東南アジア地域での影響増大と北朝鮮ミサイル弾道脅威を受け現在、第二次世界大戦後最大規模の軍拡を実施中です。近年ホバート級イージス艦と28000t級キャンベラ級強襲揚陸艦、水陸両用部隊新編を行いました。
F-35戦闘機導入計画に潜水艦量産計画、陸軍は650両規模の装甲戦闘車と重装輪装甲戦闘車の導入計画、日本との包括安全保障協力協定を経て日豪間の防衛協力も進む。キャンベラ級はF-35Bが搭載可能ですし、新型潜水艦はフランス製原子力潜水艦を通常動力潜水艦へ再設計したものであり、将来的に原子力潜水艦導入への布石と見る事も出来るでしょう。
しかし、核開発、これはオーストラリアの他にドイツでも核開発の必要性を年々議論する動きが報じられています。米国のINF条約離脱とドイツの核武装をめぐる議論、これは日経ビジネスに今年2019年2月12日に紹介されたリポートです。内容はアメリカのINF全廃条約離脱を契機としたロシア核戦力増大への危機感で生じたドイツ核武装論というもの。
核拡散防止条約に反しますが、オーストラリアの場合はオセアニア地域の非核化を記したラロトンガ条約があります。南太平洋非核地帯条約根本から覆す核武装論です、地域非核化条約という日本の非核三原則よりも踏み込んだ非核化を成し遂げた歴史と対照的で驚かされますが、オーストラリアは核兵器に関し日本と異なった価値観があるのかもしれない。
オーストラリアでは核兵器保有の事例こそありませんが、オーストラリア国内はイギリス軍の核実験場を提供した事例があり、少なくとも核開発に関しては自国が核攻撃された日本ほど、議論に禁忌はありません。それよりも突如北朝鮮の開発する大陸間弾道弾がオーストラリアへも向けられていると知り非核化よりも核攻撃からの防護が急務となりました。
ラロトンガ条約の枠組根幹を見直す可能性も含め、議論としてオーストラリア核武装論が浮上する背景には、核攻撃への抑止力の必要性と過去の国内でのイギリスによる核開発を引き受けた歴史があるのでしょう。ただ、勿論核武装は議論が極論として出ているだけであり、現実にはホバート級イージス艦にSM-6を搭載し弾道弾終末段階迎撃を検討中です。
ドイツ核武装論は、ニュークリアシェアリングという冷戦時代のNATO核戦力前方展開制度を理解しますと、意外にも核武装の心理的障壁が低い事を考えさせられます。ニュークリアシャアリングとは、平時に置いて核兵器国であるアメリカ等が核弾頭を管理し、有事の際に対独緊急供与しドイツ軍の攻撃機や重砲から戦術核を使用させる、という制度です。
ニュークリアシェアリングは主として、冷戦時代にソ連軍がドイツへ侵攻した場合、ソ連軍はドイツ域外の大西洋岸まで侵攻する可能性が高く、ドイツ国内で通常戦力で阻止できぬ場合、戦術核を用いてでも阻止する必要がありました。しかし多数のドイツ国民が巻き込まれる為、NATOが行うには政治的に難しく、ドイツ軍により自国内で使用させるもの。
INF全廃条約枠組の崩壊はドイツ政府に対し非常に厳しい懸念を突き付ける事となりました。INF全廃条約は射程500kmから5500kmまでの核兵器運搬手段を全廃させるもので、冷戦後にポーランドとベラルーシという緩衝地帯を得たドイツにはロシア軍核兵器の脅威が無い現状です。しかし、ここにINF全廃条約枠組破棄が核の脅威再来を意味しました。
日本は広島長崎の惨禍から核廃絶を国是としています。アメリカの核の傘下にあるとの反論もありますが、日本国内への核兵器持ち込みは認めておらず、ロシア潜水艦による核兵器領域内通過を阻止する為に国際海峡である津軽海峡の中央部分を特例として公海とし、何が何でも領域内へ核兵器を持ち込ませない枠組を構築しています。世界にも例が無い。
しかし、核廃絶の認識は日本の一般論で考えられるほど世界では共有されていません。現在進む核兵器禁止条約等に消極的な日本政府は核廃絶への行動が甘い様に誤解されていますが、核兵器禁止条約には制裁措置や離脱枠組が曖昧である故に多数の国が加入しているとも分析出来、核廃絶は日本式でもう少し真剣に取り組まねばならないように思います。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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