北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

74式戦車の近代化改修について,第三世代戦車と共存し二〇二〇年代生きるドイツ戦車"レオパルド1"に学ぶ

2022-08-25 20:13:42 | 日記
■榛名防衛備忘録
 第7師団特集から始まりました視点の74式戦車は改修によりもっと第一線の能力を維持できたのではないか、この論点を今回はもう少し進めてみましょう。

 74式戦車を90式戦車の製造中に90式戦車の予算を削って近代化改修するよりも、90式戦車の量産を急ぐ施策を考えた方が良かったのではないか。この視点について論述しましたが、ここでレオパルド1戦車の事例という、実は論理として大事な部分が片手落ちである事を気付かされました。少し長くなりましたが、今後の戦車運用への視座を示したい。

 74式戦車の近代化改修は90式戦車が開発される前に行われるべきであった、レオパルド2戦車は1970年代末に開発されていましたから、所謂熱線暗視装置など74式戦車の問題点である夜間戦闘能力は1980年代に顕在化しており、特に90式戦車は第三世代戦車としては後発、その後発の後ろにはルクレルクやアリエテやメルカヴァMk4くらいでしょう。

 90式戦車は元々1988年に制式化を目指していましたので、74式戦車の開発は寧ろこの90式戦車の開発と並行し、遅延が明確となった時点で量産改修を行うべきだった、または制式化から十年を経た1984年の時点で改修を行うべきであったとも思う。他方、レオパルド1A5のリカオン樹脂装甲のような追加装甲については適宜行われるべきだとは思いますが。

 しかし、これは戦車として使う場合、これに限るのですね。873両という多数が生産された74式戦車も、運用基盤は確実に整備されているのですから、主力戦車としての厳しい機動には随伴が難しくなるのかもしれませんが、支援車輛や機甲科以外の装備に充当するという選択肢ならば、もちろん90式戦車の陰に隠れてしまう事にはなりますが、考えられる。

 75式装甲ドーザ、例えば施設大隊は装備する装甲ドーザの後継車両や92式地雷原処理車など、施設科車輛にはかなり応用できたのではないかと、後知恵ではあるのですが、振り返ります。こう考えると運用できる幅は実はひろい。大隊本部の指揮通信車にも応用できますし、なにしろ戦車ですし、老朽化が進んでいたとしても使い方次第で負担は抑えられる。

 レオパルド1を日本で視る事になるとは思わなかった、こう表現しますとさてオーストラリア軍かカナダ軍の戦車隊が東富士当たりで演習しただろうか、と思われるかもしれませんが、そちらではなくイギリス軍の車両です。いやいやイギリス軍はチーフテンとセンチュリオンでレオパルド1は使っていない、反論があるかもしれませんが、少しだけ違う。

 ヒッポ沿岸工兵車両、車体はレオパルド1ですが揚陸艦の専用車両で沿岸部において擱座した車両の支援や、離岸できなくなった揚陸艇を押し出す等の任務に当る車両で、揚陸艦アルビオンの晴海埠頭一般公開が行われた際に公開された車輛の一つ。レオパルド1は戦車としては先が見えていますが、こうした支援車輛として長期間、残ってゆく事でしょう。

 74式戦車の車体を応用するならば96式自走迫撃砲などにも転用出来たのではないか、こう書きますと、成程、砲塔を外して車体に120mm重迫撃砲を設置し、その上に砲塔を載せ、車長ハッチから砲身を車長の代わりに突き出して砲手用ハッチから装填手が身を乗り出して装填し射撃するという、遠景からは戦車なのか違うのか擬装する運用も可能でしょう。

 96式自走迫撃砲の代替、ただ上記の使い方はあんまりなので、例えばM-36駆逐戦車の様に74式戦車の砲塔上部を切り取って重迫撃砲の射撃を可能とさせる、無線機設置や弾薬庫の配置に考慮した試案、若しくは砲塔を取り去って車体に迫撃砲を直に東備する方式、AMOS自動迫撃砲システム用砲塔を載せる高級な案など、考えられるかもしれません。

 AMOS自動迫撃砲システムはスウェーデンのボフォースが開発した後填式迫撃砲で、双連式に装備した120mm迫撃砲を自動装填により射撃するというもの、射程は11kmですが緊急時には水平射撃が可能であり、火力支援車輛としても重宝します。CV-90装甲戦闘車などに車載するシステムであり、74式戦車の砲塔よりも軽量に設計され、反動もすくない。

 自走迫撃砲、74式戦車は老朽化により懸架装置や駆動系に寿命が来ている事は事実ですが、しかし砲塔を取り外すか軽量化するならば、車体そのものがかなり軽量化させる事が可能となります。これは駆動系や懸架装置への負担軽減を意味し、装備としての寿命を延ばすことになりますし、また90式戦車など第一線の戦車への随伴能力を高める事にもなる。

 JMRC-C60局地無線搬送端局、師団通信システムの通信基地局で通常高機動車に搭載されました、第7師団では73式装甲車を用い機動しており、第2師団では96式装輪装甲車を駆使していました。これは30km圏内の無線通信基地局を構成する装備であり、JMRC-R60通信中継装置とともに運用すると指揮所から60km圏内の音声とデータ通信が可能となる。

 73式装甲車に搭載されていますが、JMRC-C60局地無線搬送端局そのものの大きさは1600kgであり全長2.7mと幅2.2mですから、これこそ73式装甲車でなくとも74式戦車の砲塔を取除いた車体部分にも積載は可能となるのですね。第7師団が73式装甲車に搭載している背景には戦車を中心とした機甲師団は高い機動力を発揮する為、求められたもの。

 JMRC-C60局地無線搬送端局、今では新野外通信システムの搬送端局が最新型ですが、この搬送端局が展開していなければ通信が成立ちません、そして戦車は不整地でも遠慮なしに踏破しますので高機動車では随伴できないという状況に対応するべく、73式装甲車を用いている。しかし、退役する74式戦車の車体を利用しても必要な機動力は確保できます。

 通信部隊に74式戦車の車体という提案なのですが、JMRC-C60局地無線搬送端局は操作要員が3名ですので74式戦車でも対応出来ます、また戦車の方がエンジンは強力で器材に必要な発電能力も確保され、またこの器材は装甲車の後部扉は必要ない。例えば90式戦車の量産を急いでいれば、73式装甲車を普通科部隊から通信部隊に移管せず済んだということです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ建国記念日,開戦半年と真剣に考えるべき国連総会決議"PKO部隊派遣"による撤退監視の出口戦略

2022-08-25 07:00:12 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ウクライナ建国記念日、懸念された建国記念日に合わせたロシア軍大規模空爆やウクライナ軍一大攻勢はありませんでした。

 8月24日、ウクライナは建国記念日を迎えました。そしてその建国記念日がロシア軍ウクライナ侵攻から半年、ウクライナの抗戦半年を記念するのは不思議なものですが、年単位で長期化する様相を呈するウクライナ戦争については、例えば早期停戦、一ヶ月等ロシア軍一定期間内の撤退を条件とするPKO部隊派遣などを考えるべきなのかもしれません。

 F-35戦闘機など、強大な戦力を展開させているロシア軍、特に地対空ミサイルなどの脅威を考えるならばその脅威に対応できる戦力を展開させ、停戦をロシア軍の攻撃準備期間に悪用されないよう、2月24日以前の国境地域までロシア軍撤退を監視し、また仮に停戦合意違反があれば、UNOSOM2国連第二次ソマリア派遣任務以来の覚悟で臨む覚悟が要る。

 クリミア半島の奪還を目指す現在のウクライナ政府には厳しい私案ですが、PKO部隊のウクライナ東部進駐と停戦監視を条件に、少なくとも東部二州のロシア割譲を国連が主体となりロシアに拒絶を突き付ける、クリミア返還については先ず高等弁務官派遣にていったん棚上げを行い、ロシアウクライナ両国のクリミア問題妥結までをPKO駐留の期限とする。

 PKO部隊はロシアが拒否権を有する安保理決議に依拠するのではなく、1948年から2002年の慣例に倣い、国連総会が派遣する。これはスエズ危機という1956年核戦争危機において、イギリスフランスとソ連という常任理事国同士が安全保障理事会において対立し、国連軍による鎮定が不可能となった為に国連総会が動いたPKOへの原点回帰への案という。

 日本は一種、ロシアに対して経済制裁に参加するもウクライナに対し武器供与を行わないという、一歩引いた姿勢を堅持しています。すると停戦に伴うPKO部隊派遣への調整などで主導的な役割を発揮できるのかもしれません。他方で資源価格や穀物価格を筆頭に物資高騰の要因となるウクライナ戦争の長期化は、日本にとって資する事は何もありません。

 出口戦略を真剣に考えなければならない。ウクライナ戦争は核戦争を半舷に覚悟を決める厳しい状況での長期化よりは、覚悟を決めて世界がPKO部隊を派遣そしてその最悪の状況に陥る覚悟を決めるか、または手を汚さない限りに口だけ出し続け世界危機が核戦争へ傾いているのを煩く静観するかとなります。将来に後悔のない選択肢を、考えたいものです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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