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検証:防衛省令和3年度概算要求5兆4897億円(2)いずも型護衛艦へのF-35B戦闘機搭載改修

2020-10-13 20:01:18 | 国際・政治
■いずも型改修へ231億円要求
 日本の防衛は日本からはるか離れた地域での周辺国プレゼンスが影響する時代となり、自衛隊は友好国と連携を強化するプレゼンスオペレーションを開始しています。

 全通飛行甲板型護衛艦へのF-35B搭載、一昔で有れば将来的に必要な装備であると考えられつつ、防衛予算に盛り込むには概念研究や識者意見などを募るという印象があり、明確に現防衛大綱へF-35B戦闘機、垂直離着陸が可能であり護衛艦から運用可能となる航空機の導入計画が明示され、42機の配備が明確化された際には早いと驚かされたものでした。

 いずも型護衛艦の改修として231億円が要求されています。これは飛行甲板の耐熱改良を行うとともにF-35B戦闘機を安全に運用するべく艦首形状を四角へ変更する予算として要求されています。堂々とF^-35Bを護衛艦から運用する、こう明言されるようになったことは時代の変化を感じるというものですが、そのままでは最大限性能が発揮できないとも。

 F-35Bは既に航空自衛隊に配備されているF-35Aの短距離離着陸型で、機体にファンを追加したために、その分燃料搭載量が圧迫され航続距離は若干小さくなっていますが、垂直離着陸さえも可能となっています。ただ、垂直離陸は非常に多くの燃料を消費し、特に搭載装備品が重ければ重いほどこの状況は顕著となり、これはあのハリアーでも同様でした。

 ワスプ級やアメリカ級、F-35Bは既にアメリカ海軍やイギリス海軍において運用されています。そこでアメリカ海軍では強襲揚陸艦における運用で90m前後の距離を短距離発艦させる方式を採用しています。イギリス海軍ではハリアーの時代から12度前後の"スキージャンプ台"を設置し跳躍させていますが、アメリカ海軍では制海艦時代からこの方式です。

 いずも型護衛艦は満載排水量27000t、全長248mあり、F-35B戦闘機を短距離発着させるには十分な長さを有しています。しかし艦首形状は中央に沿って台形形状となっており、もちろん強襲揚陸艦は22ノット、護衛艦は30ノットですので艦が進むことで発する合成風が大きく、加速分の揚力を艦が稼ぐ為、もう少し短くともよいとも考えられたのですが。

 艦首形状変更の背景とは。F-35Bを発進させる際、短距離滑走を行うとしますと、今の美しい形状、DDHカーブと勝手に命名しているのですが、これでは船体軸線の中心を滑走する必要があり、飛行甲板に次発艦機の待機場所が確保出来なくなる、という考えなのかもしれません。艦首を四角とすることで舷側に短距離発艦経路を確保出来ることとなります。

 来年度予算概算要求には含まれていませんが、いずも型とならぶ海上自衛隊もう一つの全通飛行甲板型護衛艦、ひゅうが型の去就についてF-35Bの搭載が触れられていません。実は既に事業評価書において、おおすみ型輸送艦、ひゅうが型護衛艦、いずも型護衛艦、以上三型が検討された際、おおすみ型は過小となっていますが、ひゅうが型には余地が。

 ひゅうが型護衛艦、海上自衛隊は四個護衛隊群編成を護衛艦隊の基本編制としており、第一護衛隊群いずも、第二護衛隊群いせ、第三護衛隊群ひゅうが、第四護衛隊群かが、という配備状況となっています。ひゅうが型にF-35B搭載を度外視するのであれば、護衛艦隊を構成する護衛隊群の各々の任務遂行能力について大きな格差が生じる事となるのですね。

 あさしお。ひゅうが型の艦過小が指摘されたのに対し、例えば船体を延長するという選択肢はないでもありません、ロシア海軍が空母アドミラルクズネツォフに対し検討したことがありますし、海上自衛隊では潜水艦あさしお、がディーゼルエレクトリック方式からAIP潜水艦へ改修される際に船体を15%延伸しています。この可能性はあるのでしょうか。

 ひゅうが型全長は198m、これは接岸や出入港に際し200mを越える場合は手続きが煩雑になるという、道路交通法から自衛隊の装甲車が2.5m車幅に拘るのと似た背景があるのですが、対して次型いずも型は248mです、198mでは200mと同等の港湾規則を要求されたという事情故なのですが、ここで15%のブロックを挿入できれば、全長は228mとなります。

 船体延伸が可能ならば実用性は高くなりますが、しかし復元性などの問題から簡単に延伸できるものではなく、すると、将来的に護衛艦ひゅうが型を今後護衛艦配備が本格化する掃海隊群へ移管し掃海輸送ヘリコプター母艦やコマンドー空母として水陸機動団輸送支援、そして指揮統制中枢艦として運用され、護衛艦は別枠で建造される可能性もあります。

 いずも型護衛艦への改修、231億円の要求が同型二隻に対するものなのか、一隻分であるのかについては明示されていません。ただ、艦首部分の形状変更は必然的に年単位の造船所での工事となり、二隻を同時に実施する事は全通飛行甲板型護衛艦の運用ローテーション、各護衛隊群へ一隻のみ配備されている現状からは考えにくく予算配分は大きな関心事です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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