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榛名防衛備忘録:ドイツKF-41登場-共通装軌車輛は防護不充分,各国の装甲戦闘車防御重視

2021-12-09 20:02:00 | 先端軍事テクノロジー
■36t級装甲戦闘車を開発せよ!
 KF-41というドイツ製装甲戦闘車はオーストラリアで試験中ですが、その最中にハンガリー軍が採用という報道があり、あれ買ったのか、と驚きました。

 自衛隊の装甲戦闘車は現状のままで良いのか。数が足りない点は前々から承知していたのですが、89式装甲戦闘車の水準は質的に限界が来ているようにも思います。こう考えるのは2004年に開発されたドイツのプーマ装甲戦闘車から。プーマが頑丈なのは当たり前だろう、と反論されるかもしれませんが、そうではないのです、プーマの現在位置です。

 プーマ装甲戦闘車は装甲厚220mmで、更に大きく傾斜装甲の形状を採用しているために74式戦車よりも重装甲で、一時期は"重装甲戦闘車"と呼称していました、しかし現在、プーマよりも重装甲の装甲戦闘車KF-41が開発されていまして、こちらは基本重量34t、増加装甲戦闘重量50t、90式戦車並といいますか90式戦車と同じ重さに達し、無理はしていない。

 89式装甲戦闘車は戦闘重量26t、これは1980年代においては、ここまで重装甲が必要なのか、と議論さえ呼んだほどです。なぜならば、当時は10t代のM-113やAIFV全盛時代、M-2ブラッドレーもFV530ウォリアーも増加装甲無では89式装甲戦闘車よりも軽量でした。しかしあれから30年以上経ていまして、どんどん装甲戦闘車重装甲傾向は続いてゆく。

 KF-41はもともとラインメタル社がプライベートベンチャー方式でプーマでは市場開拓が困難であるとの件機から開発した、マルダー装甲戦闘車の現代版として開発したKF-31がその始まりでした、しかし、ユーロサトリ兵器見本市に展示した際に全く反応がなく、重装甲でなければ市場反応が薄いため、敢えてプーマよりも重装甲お構造としたかたちです。

 レオパルド2A4と同程度の正面装甲、KF-41の車体正面は70度という傾斜装甲を採用し、基本装甲は300mmといわれています、ここまで傾斜し、装甲戦闘車のフロントエンジン配置を用いた場合の正面防御力は圧延均一鋼板換算で明らかに700mmを越えており、これは中口径機関砲は勿論、距離次第で120mm滑腔砲弾に対してもかなりの防御力を持つ。

 プーマの防御力でも不十分なのか、これはドイツ連邦軍のみならず多くの諸国が人命について非常に神経質となっているためではないかと推測します、自衛隊は幸い"戦死者""増大"この二つの衝撃に曝されていませんが、ISAFアフガニスタン国際治安部隊を筆頭にNATO諸国戦死者の増大は世論反発から各国に大量の装甲車調達を強いることとなりました。

 M-113やAFIVといった装甲車が陳腐化したのは、第三世代戦車に随伴する機動力を持たなかったため、例えば韓国やイスラエルのような機甲部隊は明確な戦略拠点を守る事に徹する軍隊を除き機動戦を行う諸国では機動力が不足、随伴できないことで装甲戦闘車が開発されました。防御力強化は戦車と機動する以上求められた防御力の収斂といえましょう。

 CV-90装甲戦闘車、スウェーデンが誇る装甲戦闘車なども、原型は23.1tという水準でしたが第三世代型は35tまで巨大化し、要するの防御力を強化しました。オーストリアとスペインの共同開発であるASCOD装甲戦闘車も28tではあったもののイギリス仕様のAJAXは基本重量38tで増加装甲装着時は42tに達していまして、42tのプーマは普通の大きさに。

 共通装軌車両。陸上自衛隊では73式装甲車の後継と89式装甲戦闘車の車体を置き換える共通車両の評価試験を進めています。これは87式自走高射機関砲や96式自走迫撃砲に99式自走榴弾砲を砲塔システムの移植というかたちで延命をはかる装備ですが、車体部分の重量は25t程度とされています。いや73式装甲車の後継と考えるならば充分なのですが。

 AMPV装甲共通車両という、アメリカのM-113装甲車後継装甲車がM-2ブラッドレー装甲戦闘車の車体を流用し、XM-1283GP装甲車などファミリー化を進めています。これと日本の共通装軌車両は似たコンセプトに基づくものといえるかも。しかし、アメリカはAMPVをブラッドレーそのものの後継とは考えず、装甲戦闘車はもっと堅い新型装備を構想中だ。

 36t程度の装甲戦闘車を自衛隊は開発する必要はないか。具体的には自衛隊にはC-2輸送機が開発されています、C-2輸送機は最大36tまでの搭載能力があり、機動飛行を行わない民間型は37tまでの搭載が可能です。自衛隊の場合は無理にC-130輸送機に収まる大きさ重さとせずともC-2輸送機という戦域間輸送機があるのですから、活用すべきでしょう。

 C-2輸送機に搭載できる36t、また10式戦車と協同する以上は正面装甲だけでも90式戦車の正面部分と同程度に、そして戦車を強力に支援できる大口径機関砲と普通科一個班が乗車できる。最後の切り札として運用される北海道の総合近代化師団と装甲近代化旅団には、この水準の装甲戦闘車を配備せねば、逆に機甲部隊の意味を失いかねないよう危惧します。202102

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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10式戦車の派生型として (ドナルド)
2021-12-09 23:01:33
重IFVは私も賛成です。しかし新規開発をするなら、10式戦車の派生型とすべきと思います。

10式戦車の生産は非常に絞られており、例によってコストアップになるだけでの、無駄な継続生産が続けられています。

重IFVとして、足回りをかなり共通化し、車体を大きく変え、砲塔も変えたものを開発して、そちらへ生産を移行すべきです。砲塔の基本的技術は10式から転用しても良いでしょう(重IFVがスラローム射撃をできてもおかしくはないでしょう)。44tですから、至って普通の重IFVです。

C-2への搭載は一切考えなくて良いと思います。米軍ですらIFVや戦車の空輸はほとんど使っていません。まったく有効な機能ではないことは歴史的に自明と思います。代わりにIFV一両の代わりに、1個中隊の歩兵を弾薬・補給物資ごと一気に輸送する方がよほど有効ですから。「一両のIFV」は、「1個中隊の歩兵」よりも、あらゆる脅威に対して脆弱です。

機甲部隊が価値を持つのは、少なくとも中隊規模(=14両)で揃って打撃力を持ったときですから。そして14両の重IFVとその弾薬・補給物資を運ぶには、28ソーティーは最低限必要であり、これだけあれば、1こ歩兵大隊戦闘群をまるまる輸送できます。
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