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アフガン邦人救出:自衛隊今夜にも開始へ,カブール国際空港は現代のディエンビエンフーか

2021-08-25 20:10:02 | 国際・政治
■C-2輸送機-カブール緊急派遣
 アフガニスタン情勢はバイデン大統領が当初示唆した米軍駐留延期の可能性を撤回した事で混乱混沌の極みに在ります。こうした中で自衛隊が昨夜現地へ入りました。

 邦人救出へ日本政府の先遣隊が昨夜のうちにアフガニスタンの首都カブールに入り、早ければ航空自衛隊に織る邦人救出空輸は日本時間今夜にも開始される、NHKが報道しました。航空自衛隊は一昨日C-2輸送機を先行させ派遣、続いてC-130H輸送機2機が昨日出発しました、カブールから一旦隣国パキスタンの航空輸送拠点へ空輸させる事となっています。

 先遣チームは自衛隊員を中心としており、退避を求める人を乗せる為のカブール空港において調整を行っています。C-130輸送機は日本時間の今夜、パキスタンの首都イスラマバードに到着するとの計画ですが、防衛省は自衛隊による邦人輸送をアメリカ軍の駐留している期間に限るとしており、当初は支援用であったC-2輸送機の投入も視野に入れました。

 政府専用機が今日にも救出の空輸能力増強へ派遣される計画でしたが、今朝千歳基地を離陸し必要な機材と人員を乗せるべく小牧基地に到着したものの、その後昼過ぎに離陸し、パキスタンへはむかわず千歳基地へ引き返しています、防衛省は、運航に必要な準備がととなわない為、と説明していますが、カブールの混乱か、パキスタン政府との調整なのか。

 ディエンビエンフー。カブール空港は現代のディエンビエンフーとなりつつあります。ディエンビエンフーとはインドシナ戦争におけるフランス軍最後の拠点で山間部の盆地に飛行場と陣地を構築し、鉄壁の防御を期していましたが、ベトミン軍は野砲を分解し飛行場を射撃可能とする砲兵陣地を構築、この陥落がフランス派遣軍の崩壊へ繋がっています。

 カブール空港は現代のディエンビエンフーか。タリバーンはアメリカ軍の撤収を月末までに完了するよう要求しています。実はこれも変な話で、月末の撤退はアメリカが一方的に切り上げたものでバイデン大統領が当初示した撤退予定は同時多発テロ20周年となる9月11日でした、これをバイデン大統領が月末に繰り上げたのを、タリバーンが守れ、という。

 タリバーンは、しかし既にカブール市内の交通統制を行っており、空港外縁部にも進出しています。どの程度の野砲や重火器を装備しているかは未知数ですが、アメリカ軍が撤退を開始し空港外の警戒を実施していない事から、現状では空港にタリバーンが組織的攻撃を開始する事は不可能ではありません、滑走路なども砲弾落下の危険が生じる懸念がある。

 時間が無い。アメリカのバイデン大統領はアメリカ軍のカブール空港撤退完了を8月31日に完了させる予定に変更はないとしました、しかし、これは当初タリバーンのカブール侵攻が行われる前の円満撤収ならば問題はないのかもしれませんが、現在はカブール空港警備へアメリカ軍が最低でも4000名規模の部隊が増派、この撤収が間もなく開始されます。

 明後日。バイデン大統領の月末までに撤退を完了させる方針を実現するには、少なくとも4000名のアメリカ軍部隊も月末までに、カブール国際空港の警備を終了し撤退しなければなりません、すると明後日からカブール警備部隊の撤収が開始され、当然ながら空港を警備するイギリス軍やドイツ軍などNATO各国からの緊急展開部隊撤収が本格化する事に。

 自衛隊の邦人救出作戦は、当初の今週末開始予定を前倒ししました、そもそもアメリカ軍の撤収完了が来週火曜日、アメリカ軍の警備が徐々に終了する中の自衛隊派遣となりますので、カブール空港の混乱は今まで以上に厳しいものとなり、攻撃を受ける事はないでしょうが、自衛隊機が銃撃を受ける可能性、邦人近くでの威嚇発砲の可能性は否定できない。

 空港の危険。時間と共にカブール国際空港の危険度は増してゆきます、何故なら、アメリカは現地米軍関係者をタリバーンの報復から守るべくアメリカ本土へ受け容れる計画であり、これにはカブール国際空港外縁部を警備するアフガニスタン現地警備員500名も含まれ、それは即ち、カブール国際空港へタリバーン戦闘員の浸透が始まる事に他なりません。

 ADS-B停止。カブール周辺の困難を象徴するのは本日日本時間午後のADS-B停止です、ADS-Bとは旅客機の機体位置や飛行情報を自動共有させるシステムで過密空域では旅客機同士の衝突防止に重要な役割を担います、これがアフガニスタン上空で一時的に停止してしまいました。それだけ多数が飛来しているとも、地上航空管制へ影響が出ている構図だ。

 カブールからの邦人輸送が前倒しされ、日本時間今夜にも開始されるという発表は、心強いものですが、タリバーンはこれ以上のアフガニスタン国民出国を認めないと表明しています。タリバーンはアフガニスタンイスラム首長国、そして今旅券を有している国民はアフガニスタンイスラム共和国の国民ですので、その権限はありませんが、妨害の可能性も。

 日本がアフガニスタンより退避させる邦人救出作戦は、当たり前ですが邦人だけではなく、人道上、日本大使館など在外公館現地職員や日本政府のアフガニスタン復興計画現地関係者もその救出の対象で、既に海外メディア関係者家族殺害等、懸念すべき状況が現実のものとなっていますので、見捨てる事は今後の禍根に繋がります、この方々の移動は可能か。

 タリバーンの主張は、技師などが難民として出国した場合は此れからの国家運営に関わるとして、出国させない方針を示しています。しかし、残った場合の人道危機が予測でき、そしてすでに現実のものとなっているのですから、一旦出国し、本当に残った方々が人道被害に見舞われないかを精査した上で、帰国か否かを判断してもらうのが妥当でしょう。

 時間が無い、治安は悪化、米軍基地警備終了間近、空港外縁での散発的な銃撃、楽観的な要素は何もありません。時間が掛かれば、場合によっては駆け付け警護、自衛隊法78条に基づく治安出動や、一時的に自衛隊管理区となる空港施設へ自衛隊法81条2項に基づく警護出動、またはそれよりも厳しい状況もあり得ます、救出を、急がなければなりません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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