■防衛フォーラム
ワリャーグは大きな巡洋艦でしたがキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦は実にこの倍の大きさです。
キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦ピョートルヴェリーキイが退役する、ロシア国営タス通信が7月14日に報じました。ピョートルヴェリーキイはキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦の四番艦として1998年に就役、起工はユーリアンドロポフという艦名で1986年に行われていましたがソ連崩壊に伴う経済混乱により建造が遅延した背景があります。
ピョートルヴェリーキイ退役を受け、予備艦となっていた三番艦アドミラルナヒーモフ、旧名カリーニンが現役に復帰するとのこと。ピョートルヴェリーキイは原子力推進であり満載排水量24400t、ソ連時代の遺産の象徴であるとともにロシア海軍最大勢力を持つ北海艦隊の旗艦を長らく務め、プーチン大統領も度々視察していたことでしられます。
アドミラルナヒーモフは1988年に竣工していましたが、老朽化が進んでいました。このため2012年に近代化改修が決定しますが、予算不足によりなかなか具体化せず、2015年からエンジン修復などが実施されています。近代化改修によりVLSが一新、旧型のP-700ミサイルに代えカリブル巡航ミサイルを最大80発搭載する能力が付与されました。
キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦ピョートルヴェリーキイの退役について、最も大きな背景には維持費の不足という事情が考えられます。しかし一方でソ連時代に設計されたキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦は射程が550㎞と比較的大きく750kgというハープーンミサイルの三倍以上あるP-700超音速対艦ミサイルが主武装となっていました。
P-700超音速対艦ミサイルは核弾頭型もあり、キーロフ級は20発を搭載することができアメリカ海軍の航空母艦へ飽和攻撃を加えるのが任務でした。しかし、一番艦キーロフが起工された1974年と異なり、キーロフ級の数が揃い始めた1980年代にはイージス艦の量産が開始されており、数十発の対艦ミサイルでは飽和攻撃は全く不可能となる。
現役に復帰するアドミラルナヒーモフは、射程2700㎞のカリブル巡航ミサイルを80発搭載、超音速巡航能力はありませんが射程は大きく対地攻撃に使えることから、まだロシア海軍としてはこちらのほうが有用性が高かった、といえるのかもしれません。なお、アドミラルナヒーモフは退役しますが、そのまま解体するかは明示されていません。
ピョートルヴェリーキイの退役後について、そのまま解体されるのか保管艦として維持されるのかは未知数となっています、この論点の背景には退役していたアドミラルナヒーモフは10年にわたる近代化改修工事を完了し現役復帰する点で、アドミラルナヒーモフは竣工が1988年、ピョートルヴェリーキイは1998年竣工で10年若いのです。
アドミラルナヒーモフの修理期間は10年間、そして特筆すべきはピョートルヴェリーキイについても2014年に近代化改修計画が発表されている点で、退役するものの2030年代に向けて近代化改修が行われる可能性がある、ということです。更に追記しますと、ロシア海軍にはキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦の具体的な後継艦建造計画がない。
リデル級原子力駆逐艦という計画はありましたが具体的には進んでおらず、ロシア海軍としては、全く近代化が進まず建造されるものは小型フリゲイトか大型コルベットという現状、中国から055型ミサイル駆逐艦でも輸入しない限り、ロシア海軍は早晩に中堅海軍国へ転落する可能性さえあり、ピョートルヴェリーキイは保管の可能性があるのです。
ロシア海軍水上戦闘艦の現状について。ロシア海軍は戦略ミサイル原潜や空母アドミラルゴルシコフなど特筆すべき戦力を維持していますが、大型水上戦闘艦の建造はソ連時代のものが中心で、満載排水量5000t以上の、護衛艦もがみ型と同程度の水上戦闘艦をソ連崩壊後に建造できたのは2018年までという非常に長い空白期間がありました。
アドミラルフロータソヴィエツコヴォソユーザゴルシコフ、満載排水量5400tの新造艦竣工が2018年で、二番艦アドミラルフロータカスタノフ竣工は2020年、三番艦アドミラルゴロフコは建造中で2020年代半ばごろに竣工するとされています。ネウストラシムイ級フリゲイト2隻が2009年までに竣工しましたが、起工は1988年とソ連時代だ。
アドミラルグリゴロヴィチ級フリゲイトはやや大型、はつゆき型護衛艦とほぼ同じ大きさで3隻が建造、こちらは黒海艦隊所属です。しかし、このほかとなると、ステレグシュチイ級フリゲートが3隻、これが満載排水量で2200tなのですが、とてもではないが戦略ミサイル原潜の聖域を確保できる海軍力がまったくないのが現状となっています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
ワリャーグは大きな巡洋艦でしたがキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦は実にこの倍の大きさです。
キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦ピョートルヴェリーキイが退役する、ロシア国営タス通信が7月14日に報じました。ピョートルヴェリーキイはキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦の四番艦として1998年に就役、起工はユーリアンドロポフという艦名で1986年に行われていましたがソ連崩壊に伴う経済混乱により建造が遅延した背景があります。
ピョートルヴェリーキイ退役を受け、予備艦となっていた三番艦アドミラルナヒーモフ、旧名カリーニンが現役に復帰するとのこと。ピョートルヴェリーキイは原子力推進であり満載排水量24400t、ソ連時代の遺産の象徴であるとともにロシア海軍最大勢力を持つ北海艦隊の旗艦を長らく務め、プーチン大統領も度々視察していたことでしられます。
アドミラルナヒーモフは1988年に竣工していましたが、老朽化が進んでいました。このため2012年に近代化改修が決定しますが、予算不足によりなかなか具体化せず、2015年からエンジン修復などが実施されています。近代化改修によりVLSが一新、旧型のP-700ミサイルに代えカリブル巡航ミサイルを最大80発搭載する能力が付与されました。
キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦ピョートルヴェリーキイの退役について、最も大きな背景には維持費の不足という事情が考えられます。しかし一方でソ連時代に設計されたキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦は射程が550㎞と比較的大きく750kgというハープーンミサイルの三倍以上あるP-700超音速対艦ミサイルが主武装となっていました。
P-700超音速対艦ミサイルは核弾頭型もあり、キーロフ級は20発を搭載することができアメリカ海軍の航空母艦へ飽和攻撃を加えるのが任務でした。しかし、一番艦キーロフが起工された1974年と異なり、キーロフ級の数が揃い始めた1980年代にはイージス艦の量産が開始されており、数十発の対艦ミサイルでは飽和攻撃は全く不可能となる。
現役に復帰するアドミラルナヒーモフは、射程2700㎞のカリブル巡航ミサイルを80発搭載、超音速巡航能力はありませんが射程は大きく対地攻撃に使えることから、まだロシア海軍としてはこちらのほうが有用性が高かった、といえるのかもしれません。なお、アドミラルナヒーモフは退役しますが、そのまま解体するかは明示されていません。
ピョートルヴェリーキイの退役後について、そのまま解体されるのか保管艦として維持されるのかは未知数となっています、この論点の背景には退役していたアドミラルナヒーモフは10年にわたる近代化改修工事を完了し現役復帰する点で、アドミラルナヒーモフは竣工が1988年、ピョートルヴェリーキイは1998年竣工で10年若いのです。
アドミラルナヒーモフの修理期間は10年間、そして特筆すべきはピョートルヴェリーキイについても2014年に近代化改修計画が発表されている点で、退役するものの2030年代に向けて近代化改修が行われる可能性がある、ということです。更に追記しますと、ロシア海軍にはキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦の具体的な後継艦建造計画がない。
リデル級原子力駆逐艦という計画はありましたが具体的には進んでおらず、ロシア海軍としては、全く近代化が進まず建造されるものは小型フリゲイトか大型コルベットという現状、中国から055型ミサイル駆逐艦でも輸入しない限り、ロシア海軍は早晩に中堅海軍国へ転落する可能性さえあり、ピョートルヴェリーキイは保管の可能性があるのです。
ロシア海軍水上戦闘艦の現状について。ロシア海軍は戦略ミサイル原潜や空母アドミラルゴルシコフなど特筆すべき戦力を維持していますが、大型水上戦闘艦の建造はソ連時代のものが中心で、満載排水量5000t以上の、護衛艦もがみ型と同程度の水上戦闘艦をソ連崩壊後に建造できたのは2018年までという非常に長い空白期間がありました。
アドミラルフロータソヴィエツコヴォソユーザゴルシコフ、満載排水量5400tの新造艦竣工が2018年で、二番艦アドミラルフロータカスタノフ竣工は2020年、三番艦アドミラルゴロフコは建造中で2020年代半ばごろに竣工するとされています。ネウストラシムイ級フリゲイト2隻が2009年までに竣工しましたが、起工は1988年とソ連時代だ。
アドミラルグリゴロヴィチ級フリゲイトはやや大型、はつゆき型護衛艦とほぼ同じ大きさで3隻が建造、こちらは黒海艦隊所属です。しかし、このほかとなると、ステレグシュチイ級フリゲートが3隻、これが満載排水量で2200tなのですが、とてもではないが戦略ミサイル原潜の聖域を確保できる海軍力がまったくないのが現状となっています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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