◆装甲機動旅団・航空機動旅団
四輪駆動装甲車、北大路機関では繰り返しその必要性を提示していますが、今回は何故装甲車が必要となっているのか、について少し。
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戦車、陸上戦闘における機動打撃力の根幹です。日本本土に仮に戦車が装備されていないならば、着上陸を行う敵は一定期間補給が途絶、我が方の海上防衛力や航空防衛力により補給を寸断されたとしても、そもそも地上戦闘において最も物資を消費するのは対機甲戦闘と対砲兵戦であることから、物資の消費を最小限として素早く進出することが可能でしょう。
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そしてこれは重要都市や重要地形等を占拠し、持久戦の構えを取った上で、政府間の講和を提示し、我が方はこれ以上占領地を確保しないので、現在占領している地域だけ割譲したい、もしくはその価値に同等の政治的譲歩を迫る、ということが考えられるわけです。
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もちろん海空優位論者の方にはこうした意見は好まれていません、我が国に侵攻を試みる空軍力を根幹から破壊できるような、第三次中東戦争期のイスラエル空軍のような優勢が、戦闘機換算で1000機程度を維持する、第四世第戦闘機2000機程度の脅威を排除できる能力が無ければ実現しません。
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それだけではありません、第三次中東戦争ではイスラエル本土に脅威を及ぼすエジプト空軍爆撃機の排除が最優先でしたので、同等の脅威を及ぼす我が国周辺国の弾道ミサイル部隊を撃破できるだけの航空打撃力乃至弾道ミサイルが整備され、敵艦隊を港湾ごと無力化できる勢力を我が方が整備できるならば話はべつですが、こんなことは絵空事といわざるをえないところ。
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こういいますのも、我が国周辺は世界でも有数の兵力集中地域であり、軍事的に難しく、一人も上陸させない制空権の維持ではなく、航空優勢の確保が念頭となりますし、何より上陸させないためには自衛権の先制行使、先にこちらが侵攻の兆候を察知し、制圧できなければならず、憲法上の問題も無視できません。
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戦車については、我が国への武力攻撃を展開する企図を行い勢力に対して決定的な不確定要素を与えます。我が方の戦車を排除し、短期間、我が方の海上防衛力や航空防衛力により海上交通路が寸断し上陸部隊が孤立、仮に海上や航空での優勢を我が国より再度奪取した場合を想定しても、それまでの期間に上陸部隊が我が方の陸上部隊からの反撃により海岸に追いやられる状況に陥らない確証を得られなければ、着上陸侵攻は企図したとしても実行に乙瀬ないでしょう。
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一方で、我が国への侵攻を企図する勢力にとり、我が国戦車の最大の不確定要素は、侵攻を企図する側が敗走した場合、我が国に戦車があるという事実は逆に我が方の戦車が相手へ着上陸し、首都や重要地域を抑えられるのではないか、という心理的な負荷を与える事にもなるでしょう。我が国は平和憲法がある、という国是ですが、侵攻を企図する側の行動が憲法そのものを切り替える端緒となりえる可能性、平和憲法を論理の中枢におかず物事を図るわが国民以外の視点からは、攻めて失敗すれば攻め返される、という視点が成り立ち、こちらも心理的な抑止力と成り得るわけです。
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そしてもう一つ、我が国は海洋国家であり、この為に機甲戦力の重要性が高まるのです。一種説明が無ければ、海洋国家ならば軍艦だろう、と返答がありそうなものではありますが、かつての海洋国家イギリスは強力な艦隊に連動した陸上部隊により世界の制海権を維持しました。その背景には、海洋国家の緊要地とは港湾であり、港湾と良港適地を制圧したならばそもそも相手は海洋への接近経路を絶たれる、という論理を堅持しました。
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この成果は、同時期に海洋国家を志したフランスとドイツが大陸国家視点からの緊要地として港湾ではなく内陸部を含めた地域制圧を企図し過度に軽装備の大兵力を展開させ、人的資源の限界に早々と直面したため、イギリスほどの領域の拡大を果たせませんでした。イギリスは港湾を確保、経済流通を含め海上交通を維持できる体制を確保し、この地域を制圧できない可能性に直面した場合には港湾を破壊し素早く撤収しているため、人的損害を回避できています。港湾の占領と占領維持不能の際には破壊、という手法はローマ帝国が行っていまして、かの時代には港湾機能に造船業者等を含めていた、とも。
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もちろん、日本も大英帝国の方式を踏襲すべきというわけでは全くありません、海洋国家を企図するならば、港湾などの重要地域がもつポテンシャルを理解すべきであり、同時にこれは我が国周辺で西太平洋を自国の勢力下に置こう為政者さえ公言する隣国にとり、我が国港湾を制圧もしくは破壊する重要性を示す事にもなり、併せて同様の行動を行う側にとれば、我が国が如何に平和政策を維持しようとも、我が国に侵攻した場合に反撃を受け、自国の港湾などを脅威にさらされうる、ということ。
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これが、抑止力、というものなのですが。単純に戦術的価値から戦車の重要性を考えがちですが、同時により広い視野から戦車の位置を、戦略的に見た場合、我が国への軍事的冒険を阻止する大きな意義がある訳です。そして、その戦車を常に最新型を開発し得る国産技術、運用体系なども、この抑止力を構成するものと言えるでしょう。
北大路機関:はるな
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四輪駆動装甲車、北大路機関では繰り返しその必要性を提示していますが、今回は何故装甲車が必要となっているのか、について少し。
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戦車、陸上戦闘における機動打撃力の根幹です。日本本土に仮に戦車が装備されていないならば、着上陸を行う敵は一定期間補給が途絶、我が方の海上防衛力や航空防衛力により補給を寸断されたとしても、そもそも地上戦闘において最も物資を消費するのは対機甲戦闘と対砲兵戦であることから、物資の消費を最小限として素早く進出することが可能でしょう。
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もちろん海空優位論者の方にはこうした意見は好まれていません、我が国に侵攻を試みる空軍力を根幹から破壊できるような、第三次中東戦争期のイスラエル空軍のような優勢が、戦闘機換算で1000機程度を維持する、第四世第戦闘機2000機程度の脅威を排除できる能力が無ければ実現しません。
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こういいますのも、我が国周辺は世界でも有数の兵力集中地域であり、軍事的に難しく、一人も上陸させない制空権の維持ではなく、航空優勢の確保が念頭となりますし、何より上陸させないためには自衛権の先制行使、先にこちらが侵攻の兆候を察知し、制圧できなければならず、憲法上の問題も無視できません。
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戦車については、我が国への武力攻撃を展開する企図を行い勢力に対して決定的な不確定要素を与えます。我が方の戦車を排除し、短期間、我が方の海上防衛力や航空防衛力により海上交通路が寸断し上陸部隊が孤立、仮に海上や航空での優勢を我が国より再度奪取した場合を想定しても、それまでの期間に上陸部隊が我が方の陸上部隊からの反撃により海岸に追いやられる状況に陥らない確証を得られなければ、着上陸侵攻は企図したとしても実行に乙瀬ないでしょう。
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一方で、我が国への侵攻を企図する勢力にとり、我が国戦車の最大の不確定要素は、侵攻を企図する側が敗走した場合、我が国に戦車があるという事実は逆に我が方の戦車が相手へ着上陸し、首都や重要地域を抑えられるのではないか、という心理的な負荷を与える事にもなるでしょう。我が国は平和憲法がある、という国是ですが、侵攻を企図する側の行動が憲法そのものを切り替える端緒となりえる可能性、平和憲法を論理の中枢におかず物事を図るわが国民以外の視点からは、攻めて失敗すれば攻め返される、という視点が成り立ち、こちらも心理的な抑止力と成り得るわけです。
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そしてもう一つ、我が国は海洋国家であり、この為に機甲戦力の重要性が高まるのです。一種説明が無ければ、海洋国家ならば軍艦だろう、と返答がありそうなものではありますが、かつての海洋国家イギリスは強力な艦隊に連動した陸上部隊により世界の制海権を維持しました。その背景には、海洋国家の緊要地とは港湾であり、港湾と良港適地を制圧したならばそもそも相手は海洋への接近経路を絶たれる、という論理を堅持しました。
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この成果は、同時期に海洋国家を志したフランスとドイツが大陸国家視点からの緊要地として港湾ではなく内陸部を含めた地域制圧を企図し過度に軽装備の大兵力を展開させ、人的資源の限界に早々と直面したため、イギリスほどの領域の拡大を果たせませんでした。イギリスは港湾を確保、経済流通を含め海上交通を維持できる体制を確保し、この地域を制圧できない可能性に直面した場合には港湾を破壊し素早く撤収しているため、人的損害を回避できています。港湾の占領と占領維持不能の際には破壊、という手法はローマ帝国が行っていまして、かの時代には港湾機能に造船業者等を含めていた、とも。
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もちろん、日本も大英帝国の方式を踏襲すべきというわけでは全くありません、海洋国家を企図するならば、港湾などの重要地域がもつポテンシャルを理解すべきであり、同時にこれは我が国周辺で西太平洋を自国の勢力下に置こう為政者さえ公言する隣国にとり、我が国港湾を制圧もしくは破壊する重要性を示す事にもなり、併せて同様の行動を行う側にとれば、我が国が如何に平和政策を維持しようとも、我が国に侵攻した場合に反撃を受け、自国の港湾などを脅威にさらされうる、ということ。
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これが、抑止力、というものなのですが。単純に戦術的価値から戦車の重要性を考えがちですが、同時により広い視野から戦車の位置を、戦略的に見た場合、我が国への軍事的冒険を阻止する大きな意義がある訳です。そして、その戦車を常に最新型を開発し得る国産技術、運用体系なども、この抑止力を構成するものと言えるでしょう。
北大路機関:はるな
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