◆欧州で治安出動、我が国の影響も懸念
今月7日に発生したフランス紙シャルリーエブド本社襲撃テロ事件を筆頭とする連続テロ事件は欧州に2001年の9.11同時多発テロ以来の緊張を強いています。
ベルギーでは15日にイスラム過激派テロの準備拠点を警察が強制捜査、銃撃戦となり2名を射殺、このテロ計画に関与した容疑者が欧州全域に緊急手配されるとともに、ベルギー軍は2001年の9.11米本土同時多発テロ以来の陸軍部隊による治安出動を開始しました。仮にこの種の事態が我が国において発生した場合、自衛隊はどの程度対応できるのでしょうか。
パリでの7日に発生したシャルリーエブド本社襲撃テロ事件は12名が襲撃したテロリストにより射殺され、これに連動し別のイスラム原理主義過激派によるパリ市内にてユダヤ系食品店人質事件が発生、買い物客や従業員4名が殺害、同じくパリ市ではモンルージュ警官襲撃事件が発生、シャルリーエブド本社襲撃テロ事件実行犯は逃走先の印刷工場にて突入したRAID:フランス国家警察特別介入部隊により射殺、食品店立て籠もり犯はGIGN:国家憲兵隊治安介入部隊により射殺されました。
フランス国内ではパリ市警に内務省国家憲兵隊や内務省国家警察が出動し警備に当たっていますが、上記部隊に加えGIPN:国家警察特別部隊やCRS:共和国保安機動隊等を加えた警備部隊では非常に広い国土の警備に限界があり、フランス陸軍のフランス緊急対応軍団隷下部隊や外人部隊落下傘部隊等が首都警備へ参加しているところが報道映像から読み取れます。イスラム原理主義勢力によるテロは昨今、欧州出身者がシリアイラクでのISILイスラム国戦闘員参加者となり、帰国後テロを計画する事例が多く、我が国でも中東地域でのイスラム武装勢力戦闘経験者がおり、加えてISILへの参加を企て出国前の水際にて逮捕される事例があり、対岸の火事ではありません。
アメリカABCテレビなどによれば、ベルギーテロ未遂事件にて容疑者を欧州全域での手配を行っており、日本時間本日1100時までの間にベルギー国内で13名を拘束もしくは射殺、フランス国内で14名拘束、ドイツのベルリン市内で2名拘束、アイルランドのダブリン市内で1名とイギリスのロンドン市内で1名がそれぞれ拘束され、更に本日ギリシャ警察がアテネ市内にて2名の容疑者を高速しました。ベルギーテロ未遂事件では、ロシア系軍用小銃や爆薬等が押収されており、数時間から遅くとも数日以内にベルギー首都ブリュッセルでの公官庁同時襲撃計画が準備されており、辛うじて警察が間に合った、という非常に危機的な状況にありました。
幸い我が国はイスラム原理主義武装勢力による直接の脅威には曝されていませんが、アメリカの同盟国でありISILイスラム国によりテロ攻撃の対象国家として名指しされている数十の国家の一つです。日本国内では2012年10月17日の特定危険指定暴力団工藤會による対戦車ロケット弾発射器RPG-26隠匿の摘発や昨年にも大阪市において山口組系暴力団がロケット弾発射器を隠匿した事例があり、少なくともこの種の武器を日本国内へ持ち込めないわけではありません。ISILイスラム国の戦闘員がこの種の武器を我が国に備蓄することは、基盤が薄い以上非常に困難ではありますが、可能性は残るところ。
日本国内でのテロ事件と言えば、1995年の地下鉄サリン事件を筆頭とするオウム真理教により一連の連続テロ事件を思い出し、化学兵器サリンやAK-74小銃の密造などを行っていたことが記憶に浮かぶところではありますが、ISILによるテロ事件の特色は明確な指揮系統では無く小規模なグループが別稿に計画し一つの蜂起を契機に行う計画性と無計画性の並立にあり、その兆候を法執行機関が捜査により把握することは非常に難しい、とのこと。
加えて、上記の通り欧州でのテロ事件には軍用小銃や爆薬が用いられ、重要設備ではなく防備の薄い場所等が標的と成り得ます。結果、我が国において同種の事態が発生した場合、警察力での対応が困難となり、自衛隊法に基づく自衛隊の治安出動、という任務が想定されるでしょう。他方、自衛隊では2001年の9.11米本土同時多発テロを契機として、重要施設警備を自衛隊の任務へ追加、市街地近接戦闘を想定した訓練を積みかさねています。
自衛隊は全国に隊区として警備管区を設定し、普通科連隊などを配置しているため、万一の事態が発生し、政府により治安出動命令が発令された場合、各師団及び旅団が作成する年次防衛計画に基づき隊区の重要施設へ警備部隊を配置、原子力発電所や空港に特定重要港湾などへの市街戦訓練を行った部隊の警戒配置が可能です。この種の事態は起きなければ幸いなのですが、政府が確たる対応を行う限り、万一への備えは準備されている、と言えるでしょう。いっぽうで、欧州では予めのテロ抑制政策を法執行機関以外の分野で対応が不十分であったため、テロが発生、テロ対策の拡大が基本的人権との境界線を曖昧なものとしているのではないかという、行き過ぎたテロ対策の懸念が散見されるようにも思います。これはテロ発生後では致し方ないところではありますが、平時からの警備強化を行いテロを防ぐことで、我が国ではこの種の事態が発生しての状況に直面しないよう、法執行機関の能力強化と警察力の強化、自衛隊の任務への対応能力強化など、求められるでしょう。
北大路機関:はるな
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今月7日に発生したフランス紙シャルリーエブド本社襲撃テロ事件を筆頭とする連続テロ事件は欧州に2001年の9.11同時多発テロ以来の緊張を強いています。
ベルギーでは15日にイスラム過激派テロの準備拠点を警察が強制捜査、銃撃戦となり2名を射殺、このテロ計画に関与した容疑者が欧州全域に緊急手配されるとともに、ベルギー軍は2001年の9.11米本土同時多発テロ以来の陸軍部隊による治安出動を開始しました。仮にこの種の事態が我が国において発生した場合、自衛隊はどの程度対応できるのでしょうか。
パリでの7日に発生したシャルリーエブド本社襲撃テロ事件は12名が襲撃したテロリストにより射殺され、これに連動し別のイスラム原理主義過激派によるパリ市内にてユダヤ系食品店人質事件が発生、買い物客や従業員4名が殺害、同じくパリ市ではモンルージュ警官襲撃事件が発生、シャルリーエブド本社襲撃テロ事件実行犯は逃走先の印刷工場にて突入したRAID:フランス国家警察特別介入部隊により射殺、食品店立て籠もり犯はGIGN:国家憲兵隊治安介入部隊により射殺されました。
フランス国内ではパリ市警に内務省国家憲兵隊や内務省国家警察が出動し警備に当たっていますが、上記部隊に加えGIPN:国家警察特別部隊やCRS:共和国保安機動隊等を加えた警備部隊では非常に広い国土の警備に限界があり、フランス陸軍のフランス緊急対応軍団隷下部隊や外人部隊落下傘部隊等が首都警備へ参加しているところが報道映像から読み取れます。イスラム原理主義勢力によるテロは昨今、欧州出身者がシリアイラクでのISILイスラム国戦闘員参加者となり、帰国後テロを計画する事例が多く、我が国でも中東地域でのイスラム武装勢力戦闘経験者がおり、加えてISILへの参加を企て出国前の水際にて逮捕される事例があり、対岸の火事ではありません。
アメリカABCテレビなどによれば、ベルギーテロ未遂事件にて容疑者を欧州全域での手配を行っており、日本時間本日1100時までの間にベルギー国内で13名を拘束もしくは射殺、フランス国内で14名拘束、ドイツのベルリン市内で2名拘束、アイルランドのダブリン市内で1名とイギリスのロンドン市内で1名がそれぞれ拘束され、更に本日ギリシャ警察がアテネ市内にて2名の容疑者を高速しました。ベルギーテロ未遂事件では、ロシア系軍用小銃や爆薬等が押収されており、数時間から遅くとも数日以内にベルギー首都ブリュッセルでの公官庁同時襲撃計画が準備されており、辛うじて警察が間に合った、という非常に危機的な状況にありました。
幸い我が国はイスラム原理主義武装勢力による直接の脅威には曝されていませんが、アメリカの同盟国でありISILイスラム国によりテロ攻撃の対象国家として名指しされている数十の国家の一つです。日本国内では2012年10月17日の特定危険指定暴力団工藤會による対戦車ロケット弾発射器RPG-26隠匿の摘発や昨年にも大阪市において山口組系暴力団がロケット弾発射器を隠匿した事例があり、少なくともこの種の武器を日本国内へ持ち込めないわけではありません。ISILイスラム国の戦闘員がこの種の武器を我が国に備蓄することは、基盤が薄い以上非常に困難ではありますが、可能性は残るところ。
日本国内でのテロ事件と言えば、1995年の地下鉄サリン事件を筆頭とするオウム真理教により一連の連続テロ事件を思い出し、化学兵器サリンやAK-74小銃の密造などを行っていたことが記憶に浮かぶところではありますが、ISILによるテロ事件の特色は明確な指揮系統では無く小規模なグループが別稿に計画し一つの蜂起を契機に行う計画性と無計画性の並立にあり、その兆候を法執行機関が捜査により把握することは非常に難しい、とのこと。
加えて、上記の通り欧州でのテロ事件には軍用小銃や爆薬が用いられ、重要設備ではなく防備の薄い場所等が標的と成り得ます。結果、我が国において同種の事態が発生した場合、警察力での対応が困難となり、自衛隊法に基づく自衛隊の治安出動、という任務が想定されるでしょう。他方、自衛隊では2001年の9.11米本土同時多発テロを契機として、重要施設警備を自衛隊の任務へ追加、市街地近接戦闘を想定した訓練を積みかさねています。
自衛隊は全国に隊区として警備管区を設定し、普通科連隊などを配置しているため、万一の事態が発生し、政府により治安出動命令が発令された場合、各師団及び旅団が作成する年次防衛計画に基づき隊区の重要施設へ警備部隊を配置、原子力発電所や空港に特定重要港湾などへの市街戦訓練を行った部隊の警戒配置が可能です。この種の事態は起きなければ幸いなのですが、政府が確たる対応を行う限り、万一への備えは準備されている、と言えるでしょう。いっぽうで、欧州では予めのテロ抑制政策を法執行機関以外の分野で対応が不十分であったため、テロが発生、テロ対策の拡大が基本的人権との境界線を曖昧なものとしているのではないかという、行き過ぎたテロ対策の懸念が散見されるようにも思います。これはテロ発生後では致し方ないところではありますが、平時からの警備強化を行いテロを防ぐことで、我が国ではこの種の事態が発生しての状況に直面しないよう、法執行機関の能力強化と警察力の強化、自衛隊の任務への対応能力強化など、求められるでしょう。
北大路機関:はるな
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