少し前の10月25日に江戸東京たてもの館の展示を見に行った。目的は珍しく一つ。八王子市犬目の中原遺跡の土器の見学でした。残念なことに優品の土器二つの内一つしか展示されてなかったものの、四把手のキャリパー型土器(おそらく蒸し器)をじっくり味わうことができた。
このところ縄文中期の祖先たちがどのような食事をしていたのかに興味をもち、特に祝宴のご馳走をどのように作り共食していたかにうつつを抜かしていた。土器は煮炊きや蒸かし器などとして利用されたようだが、どのような材料を調理していたかが大きな関心事だった。中原遺跡の顔面把手深鉢や蛇体文土器、さらに同時期に非常に近しい関係にあった子抱き土偶で有名な、川口川対岸の宮田遺跡もイノシシに縁が深い集落のようで、旧武蔵野郷土館のイベントを知って猪突猛進で見学に来てしまった。
展示は正面ではなく横からの位置の展示で、猪の顔がよく分からないが、縄文土器大観(小林達雄編集 小川忠博撮影 小学館 1988)には展開写真もついているが、正面が写っていて、イノシシの顔が大きく窺える。横はウリボウ(イノシシの子供)の造形なのだろう。そんな訳で、この土器はイノシシの肉そのものや加工したハンバーグ状のイノシシを蒸かし共食したのではと、自然に想像してしまう。当時の料理の調味料は藻塩やハチミツ、香料(山椒など)なども使用し、かなり美味しい五感を楽しませるものであったはずだ。
さて、U先生から「生き甲斐の心理学」を20年以上学んでいることもあり、その心理的意味を思わず考えてしまう。祝宴には例えば100人とかの村人全員が集合するのだろうが、当然ながら多くの子供たちも招かれ(イノシシもウリボウを大切にするが)、おいしい食事を味わい貴重な愛の原型(他者から愛される経験で、その経験から愛され愛すという人にとって大切な行為の基盤となる)が形成されるのではと想像してしまう。かつて、私たちが「もういくつ寝るとお正月」と心待ちにし、各自の成長を祝い、共食し、見神欲も満足していたようにお正月やお盆は、愛の原型形成の大事な時であった。それは、この物質文明の中でも引き継がれ心理学を学校で勉強しなくても、伝統を通じて自然に学んでいっているようである。
このイノシシの顔(もちろん、その背後には当時の信仰の対象としての神等のイメージも重なっているように思うが)の土器は、煮炊きだと土器特有の匂いがついてしまうところを、蒸し器として、解放し調理を芸術的にも高めたのだろう。厳しい環境の中で生き抜かなければならない(今もそうだが)縄文人にとって、大きな意味があったと考えても良いのだろう。
縄文土器大観2(小林達雄編集 小川忠博撮影 小学館 1988)
巻頭の写真を含め、カラー写真は江戸東京たてものの園 「武蔵野の歴史と民族~「武蔵野郷土館」がのこしたモノたち」で筆者撮影。
6/10 今ここと縄文時代
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この記事は「生き甲斐の心理学」ーCULLカリタスカウンセリングの理論 ユースフルライフ研究所主宰 植村高雄著 監修2008年第3版 を参考にしています。
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森裕行