今年は元旦に能登半島地震と航空機事故があり、いつもと違う正月を迎えた。新年会で「辰年は大きな変化がある年」そんな挨拶に耳を澄ませたことも。人は大きな変化のある時に悩み、時に自分で背負いきれなくなり心の病に陥ることが多い。
元旦の事件のように運命的な事件に巻き込まれるとき。あるいは人生の大きな節目のとき、そして今日お話ししたい異文化に遭遇したとき。こうした時はかつての自分なりの常識がなりたたず、途方に暮れてしまうことも多い。その中でこころの健康を保ち生き抜くには、心のオアシスを見つけ育てていくことかもしれない。戦ってばかりいると人間は意外に簡単に参ってしまう。
心のオアシスはこうした時には、殆ど見えにくいが確実にあるはずだ。ちょっとした他者の善意にほっとするとき、普段ではなんだそんなものとネガティブにとらえていることが輝く。ちょっとした感謝と満足のこころが意外にもオアシスとなる。このオアシスを育てていくことで、新しい状況に適応できる生き方が生まれてくるようだ。
縄文時代の人々のことに想いを馳せると、もちろん今の時代に通じるような、恥の文化や穢れと禊の文化などが綿々と伝わってくることもあるが、人生の節目節目で行われたとおもうようなイレズミや後期になると抜歯などもあり、また、今の時代は科学的知識などは豊富だが、縄文時代を生きるには数百の植物や何十という動物などの知識も逆に必要で、ポンと私が縄文時代に飛び込んだらどのようになるのかと不安になる。縄文時代は明らかに違う異文化なのである。
異文化体験は最近は国際化が進み、多くの外国人をいろいろなところで見ることが多くなったが、ただ、毎日外国人と共に暮らすような生活はどうなのだろうか。また外国人ではなくても、日本の各地方ごとの独自の文化もあり、一緒に生活をする事態になって驚くこともある。私の場合も7歳の時に約1年アラスカで暮らしたことがある。
今でも忘れがたい経験の一つは英語が全くできない状態で、現地の小学校の女教師とのはじめての交流がある。父親とも別れ一人で教室に入り、低学年なのでクラスメートは勝手に中で活動していたが、机をはさんで先生と向き合った。先生は私の英語能力をみようと思ったのか、優しいまなざしで赤とか黄色の色紙を出して何色かを問うた。何も答えられず私は失望したが、先生は心配げな表情を浮かべても優しそうな眼差しを投げかけてくれた。それに背中をおされ意を決して「あか、きいろ」と答えた。そのときの自分の発した虚ろな言葉の響きを今でも覚えている。しかし、理解できない日本語を聞いた先生は、とたんに明るい顔をして私をクラスの生徒に日本語が話せる新入生として、明るく紹介してくれた。それが大きな励みで私はスムースに現地に溶け込んで行った。
先生の立場から言えば私を大切に考え、私が恐る恐る発した日本語を好意的にとらえ最大級に感謝と満足の気持ちを伝えてくれたことがある。もちろん、現地のキリスト教文化から導かれた人間観(人の身体は神の神殿)や運営方針が背景にあったかもしれない。また、私の立場からすれば7歳ということで心理学的には疑惑感や罪悪感が湧いても、意志力でもって行動する力が育ち始めていたこともあっただろう。また、母親がクリスチャンだったこともあり、その意味で祈りの世界が近かく、神仏を馬鹿にしなかったのもよかったかもしれない。そして、自分の中の自然治癒力というか適応力が働いて時間とともに溶け込めることができたようだ。
そんな経験もあり、蛇足になるが私は縄文時代の日本列島人を未知の何かではなく、愛そのものの魂を持つ人としてとらえ、同じような祈りを共有する人であることを前提としている。そして、考古学だけでなく学際的な民俗、伝承、神話も大切に勉強して理解を進められたらと願っている。
1/10 縄文時代をどう解釈するか
WebマガジンAMOR「縄文時代の愛と魂」にも縄文に関する関連記事があります。こちら
この記事は「生き甲斐の心理学」ーCULLカリタスカウンセリングの理論 ユースフルライフ研究所主宰 植村高雄著・監修2008年第3版 を参考にしています。
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森裕行