大寒の季節。花も少なく寂しい季節である。そんな中、母といっしょに新宿御苑に行った。
新宿御苑は、私の生涯のあゆみを全て知っているような私にとって縁の深い公園でもある。幼稚園のころには祖父母たちとともに。青春時代には友達と訪れたこともある。社会人となり、子供が生まれて家族で楽しんだりしたことも。住まいが多摩になってからも、両親の家が四谷にあるためか、ちょっと寄る公園でもある。
今回は、長年再建のため見られなかった温室の建設が終わり、入場できたことが最大の収穫だった。大寒に温室で蘭をみたりバナナを見たりするのは実に贅沢であり素晴らしい。外観も良いが入ってみると、なかなか素敵な温室で、五感で楽しめる。入場されている方々は、みな幸せそうだ。
パネル展示もあり、この温室の歴史についても説明もあり勉強にもなった。明治につくられ、皇室に大事にされた温室。第二次世界大戦の時は、空襲で全焼したが、貴重な蘭は薪を作ってで越冬したという苦労話には感激した。
さて、そんな新宿御苑であるが、大学生のころに夢中で読んだ庄司薫さんの「ぼくの大好きな青髭」を思い出す。庄司薫さんの「赤頭巾ちゃん気をつけて」は一世を風靡したが、赤、白、黒、青の四部作としても有名で「ぼくの大好きな青髭」はその完結編である。そして、その舞台が新宿で、確か最後に新宿御苑が登場した。
当時始めて、赤、白、黒、青が陰陽五行説からきていることを知ったが、その起源とか日本との関わりについては何も知らなかった。
時代は変わるが、2010年に飛鳥の高松塚古墳に行き、そこで丹念に作られたレプリカの壁画を一人で堪能したとき、この青龍、玄武、白虎、朱雀(これは存在しない)に見入った。飛鳥時代は、天武天皇をはじめとし陰陽五行説は非常に大事にされた。日本というと神道と仏教は有名だが、違う系列として陰陽五行の世界もあるのだ。当時の最先端の科学と陰陽五行説との関係など、今でも興味は尽きないテーマだ。
青春時代。エリクソンでいうと13歳から22歳。忠誠心、アイデンティティー、自己混乱感の時代である。本格的な人生の春といった意味があると思うが、正しく青龍なのだろう。
東京も大寒とはいえ春は近いようだ。
飛鳥を想う 9/10