大林信彦監督の映画、「時をかける少女」を見てから、「転校生」そして「さびしんぼう」の尾道三部作を続けてみてしまった。
舞台が広島県尾道ということであるが、実際は私の父の故郷で、幼いころから良く夏休みに訪れた広島県竹原の、町並み保存地区が沢山でてくるので、その懐かしさということもあり見てしまった。
どれも良い作品であるが、一番こころに残ったのは「さびしんぼう」であった。生き甲斐の心理学でいう、愛の原型が一つのテーマであり見ごたえがあった。言葉は何か既成概念的なものをより伴いがちだが、映像の世界は、もう少し自由に何かを表現できるんだなと思ったりもした。
故郷の景色や言葉、日常の中の一コマ、初恋の想いで、親しい人との語らい、それは個人個人の愛の原型として、人生を左右するイメージになる。ある愛のイメージ。それは美しく彩られ、辛い時のこころの糧になる一方、ある時は厳しい人生の中にあって、凶器となることもあると思う。そのあたりは大事なことで、意外に語られない。
大人になるということは、愛の原型を時に振り返り、それを絶対的に信じるというより、多面的に相対化し改定し豊かにすることかもしれない。「さびしんぼう」の最後は、そのあたりがうまく映像化されていたようだった。
さて、少し言葉の世界を考えてみよう。言葉は、不思議に人を信じさせる働きがある。特に約束といった種類のものはそうである。そして、それは時に人を破壊する。
7世紀後半。天武天皇の治世で、天武天皇が皇后と6人の皇子を集め、吉野の盟約を神に誓った。天武天皇の亡き後に、壬申の乱のような悲劇が起こらないようにするという配慮だったのだろう。しかし、実際は大津皇子の変があり、結果的に少なくとも大津皇子、持統天皇はその時の盟約を反古にしてしまった。その時の参加者の心の傷はどうだったのだろうか。いろいろ考えてしまう。草壁皇子の短命、天武天皇や持統天皇の病気、・・・
愛の原型ではないが、言葉も同じように、それを絶対的に信じるというより、多面的に相対化し豊かにすることが大事なのかもしれない。裏切る、裏切られた・・・そんなよくある世界から、ちょっとワープすることも時に重要だと思う。
言葉をめぐって 4/10
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森 裕行 | |
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