四ツ谷見附の土手の五十年前は、もっと躍動的だった。 子供が走りまわり、犬の糞がところどころにあり、銀蝿が乱舞していた。 石の陰には蜥蜴が銀色の尻尾をきらめかしていた。
花見には、新聞紙やキョウギの弁当のゴミなど、何か子供には抵抗感があった。 もっと臭いと繁雑さが五感と体感を刺激していた。温室育ちの野菜ではなかった。
大脳は記憶を改竄し、繁雑で躍動的だった50年前の過去はいつの間にか、去勢された静止画像になってしまう。 シャガ-ルの絵の不思議は、日本人とは異なる文化ではあっても、人間の過去の記憶をイキイキと躍動的にする何かをもっていると思う。
シャガ-ルの自叙伝を読みながら、その秘密に触れた気がした。彼は過去を現在化している。
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