いきなり「こんな添乗員はいやだ~シリーズ」の2です。三日目のホテルはストラスフォード・アポン・エイボンのコテージ風の素敵なところでした。田舎道を走りながら、彼は言いました。
「この辺は付近も素敵なので、朝など早く起きて散歩なされたらいかがですか。」
そう、素敵ですよね。私と友人はすぐに真に受けました。パック旅行は朝が早いのです。8時に集合で、朝食は7時ぐらいから始まったと思います。じゃあ5時半に起きて、6時ぐらいからホテルの周辺を散歩・・・
どうも、私の頭は算数的な発想ですね。でも、彼の言葉を真に受けると、そうなります。だって周辺を散歩と言ったら、少なくても、ホテルから15分ぐらいは離れたいと思いませんか。
友人は目覚まし持参できていましたから、朝起きることには自信があります。主婦と言う人種は、目覚まし音には強いのです。鍛えられていますから。でも、その日は話も盛り上がってしまって、眠るのも遅くなってしまいました。それでもリーンと鳴ったら、二人でぱっと起きました。もう一人は最初から参加せずです。ところが時計を見ると4時ですよ。いったいどうなっているんだか、寝ぼけた頭ではわかりません。とにかく早すぎ、また寝ることにしました。でも、30分ぐらいして、友人は起きてしまいました。もう、眠れないからと言うのです。じゃあ、私も起きてしまえということで、5時少し過ぎには二人はコーヒーなんかも飲んでしまって、時間も持て余し気味です。
ところが、外は真っ暗です。
実は夕べ寝る前に、いくらなんでも気がついてはいたのです。だって日本でも、冬は日の出は7時くらいですよね。季節が早く進んでいるイギリスで日の出が早いわけはありません。それでも、前日は確か7時ぐらいには外は明るかったと思います。仕方がないので、6時はなしにしても薄暗い中を出かけて行き、明るくなった頃戻ると言う、超漠然とした計画を考えていました。
本当に、あの添乗員様は何の提案性もなく言ったのですよ。朝のスケジュールを考えたら、彼の提案には無理があるのです。一日の締めくくりとして上手く言葉がまとまったから、言ったのに過ぎないと思いますよ。ねっ。口からでまかせ提案を言う添乗員はいやでしょ。
ところが私は、ふと、真っ暗な田舎道を歩いてみたくなりました。
それで二人で外に出てみました。夜明け前の空は一番暗いのって知っていましたか。
空には満天の星が煌き輝いていました。
「見て~、綺麗よ~。」
空が本当に澄んでいて、星の光がぼやけずにくっきり見えました。私が間違えずにいえる星座はいくつもありませんが、空にはオリオン座が瞬いていました。
「ねぇ、夜明け前の煌く星を見上げている観光客と言うものも、多分あまりいないわよねぇ。」と私たちは言って、笑い合いました。
だからと言って、真夜中と言うわけではないのです。ホテルの朝は早いのでしょう。出勤の車が入ってきます。私は気をよくして、暗い草原や森の道を行ってみたいと思いました。ところが友達は急に
「怖い怖い」と言い出しました。
何が怖いのだろうと、私は思いました。
-時々走ってくる車が怖いのだろうか。でも、車に乗っている人のほうが、こんな暗い道に立っている女の人を見ることのほうがよっぽど怖いのではないかしらーと強気です。私は道路を渡った所にある木の向こう側にある真っ暗な空間が気になっていたのです。
でも、譲り合うことが大切です。私たちは部屋に戻って朝食まで一時間ぐらい眠ることにしました。
朝食の後、私たちは急いでホテルの外のベンチや、前の道で写真などとって満足することにしました。もちろん、やっぱり散歩などは出来ませんよ。でもふと、今朝気になっていたところを見てみると、そこは・・・びっくり、墓地だったのです。
友人は霊的なものに敏感で、実際に見てしまったりする人で、ホラー話などは一切怖がって耳を塞ぎます。だから余計、この人はやばい人だと思っています。真実味があるのです。
「あなたは怖くなかったの?」と友人が聞きました。不思議なことにぜんぜん怖くなかったのでした。むしろ惹かれていたと言うか・・・
もしかしたら危ないコンビだったのかもしれません。友人が怖がっていましたので、私は言いました。
「大丈夫よ。何か出てきたらね、『わたしは~、えいごは~ぜんぜんダメでぇす~。』と日本語で言うのよ。そしたら諦めてどっかに行っちゃうからね。」
英国人のソチラの方は英国人のところに、行っていただきたいと思います。何か言われても、
「パードン?」じゃ困りますよね、お互いに。
ところで、朝四時の「リーン」の正体は、国際電話可能にしてあった友達の携帯電話でした。しかもワン切り。迷惑なことこの上ないですね。
でも、今ふと思いましたよ。そのワン切り、何処からかしら!?