京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

ラジオ、「聞く」ことの力

2008年09月10日 | 日々の暮らしの中で
「富貴不能淫」(富貴にも心乱されず)
中国でのこと。数年前、英語通訳者の資格試験で、この孟子の名句が出た。 
“Be rich,but not sexy.”(金持ちになれ。けれどセクシーにはならないで)という珍解答がネットで広まり、中国語の乱れに批判が高まったという。

漢字圏以外の言語を中国語に訳すには、原語の発音に合わせて漢字を当てて、本来の意味を伝える工夫をするらしい。生まれた優れた訳語として二つ。
「可口可楽」 (おいしくて楽しい=コカ・コーラ) 
「黒客」  (招かざる客=ハッカー)

英単語が洪水のように入ってきて、「BF」(ボーイフレンド)、「88」(バイバイ)。
一過性が多いものの、語呂合わせの造語も含め若者の間でははやるのだそうだ。
中国語を理解しないが、具体的に大変興味深く読んだ記事でした。

言葉の乱れ。時代の中に、生活と密着した中に言葉が存在するためでもあるでしょう。
携帯電話を使ってのメールのやり取りが盛んになった頃の、「一指送電」という創作四字熟語。近いところでは、「KY」(空気が読めない)も挙げられます。

今夜のことでした。
「阿弥陀・弥勒・観音のなかで菩薩でないのはどれ?」
質問をろくに読むことさえできない者が読み上げる(そのおかしさを前面に出した番組ですが)。そして、ろくに語彙力もない回答者。正解ではあったが、「くさってないのはあみだだよ―って思って」とのたまう。意味不明!いつものことだが、恥ずかしくないのか!?と腹立たしささえ感じてしまう。まあ、落ち着いて…と。

難易度は高くないのに正しく読めない漢字がある。
中学生から珍回答はついてまわる。大学入試は言うに及ばない。就職試験で話題にされても、私には驚きさえ感じない。

単に「読めない」というより、耳から、音声として語彙を取り込む環境も少なすぎることを思うのです。
ラジオの存在があります。いろいろな話しぶり、多様な人の登場。
映像がない分、話す者は言葉を尽くさなければ意は届かない。
聞く側は耳からだけの情報に心を傾けられる。想像し、自由にイメージをふくらますことが可能です。

「前畑がんばれ」の実況は有名です。TV中継終了後のラジオでのプロ野球の実況放送、必死に想像力を働かせて観ているのでした。もう何年も、はるかに昔のことですが。見えたと思えるほどに、状況を深く聴くことはできるということです。

語彙を増やすにも、想像力や思考力を働かせるにも、耳から取り込む音声での情報収集は素晴らしい手段だと考えます。読みまちがえていた漢字の正しい理解につながるチャンスもきっと見い出せるでしょう。
聞くという経験を増やすことは、日本語の乱れを考える上でもきっかけになるはずです。

耳障りな話し方、素敵な日本語、発言の内容…すべてがそのまま私の耳にはいるのですから、聞かないのは損なのかもしれません。
コメント (6)
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