京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 竜宮浄土

2011年04月05日 | 熊野古道(紀伊路・中辺路)を歩く
           
 ♪ 助けた亀に連れられて…
この度の熊野行きでは、三鍋町の千里の浜が海がめの産卵地だと知った。

親孝行な浦島は魚を取って両親を養っていた。ある日、亀を一つ釣りに出ると、はるか海上に「美しき女房只ひとり波にゆられて」いる小舟が見える。そば近くにやって来たので尋ねると、「暴風に遭い、多くは海にはねられ、自分は心ある人がこの舟に乗せて放してくれた。波のままにここまで来たが、本国へ送って欲しい」と言って頼む。
親切な浦島は憐れんで、同じ舟で漕いで行くと女の故郷に着いた。そこは立派な建物で、言われるままに夫婦となって何不足なく住み始めるといった筋書きだ。

              
中世のお伽草紙の『浦島太郎』は、玉手箱を開ける民間の「浦島太郎」とは異なって、結末は海のかなた竜宮城で成仏得道の縁を受け、仏の位になって鶴になり「七千年と申す天にあがり給ふ」 ~となる。

白銀の築地に黄金の甍をならべ、四方に四季の草木を配してあるという竜宮城、まさにこの世のものとも思えぬ御殿だ。無常観漂う中世の人々は、老いることもなく、満ち足りて暮らす竜宮浄土を夢にも憧れたということになるのだろう。

穏やかな海に、たくさんの幸せがあることを思いたい。

コメント (4)
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