田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

日本の農業が危ない!? Part Ⅱ

2025-03-09 15:08:00 | 講演・講義・フォーラム等
 一月末にお聞きした東京大学大学院特任教授の鈴木宣弘氏のお話を再び聴いた。鈴木氏のお話はけっしてプロパガンダではなく、日本の農業、そして農業政策の事実を紹介してくれていると私は信じているのだが…。

 一月末にお聴きした鈴木氏のお話は非常に刺激的でした。
 その鈴木氏が再び札幌で講演すると知り、「もう一度氏の話を聴いてみたい」と思い、昨日(3月8日)午後、会場の北海道クリスチャンセンターに向かいました。
 開場前にクリスチャンセンターに着いたのですが、すでに長蛇の列ができていて、鈴木氏の高名がかなり浸透していることが窺えました。

 ところで会場に着いて、私は初めて主催が政治政党の「れいわ新選組」だということを知りました。チェック力の甘さです。それでこの催しは、「れいわ新選組」が「ごはん会議」と題して全国的に開催する一環であることも、この時知りました。

     
     ※ 北海道クリスチャンセンターで講演をする鈴木宣弘氏です。

 さて、鈴木氏のお話は基本的に1月末にお聴きした時と変わりはありませんでした。用意されていたパワーポイントも凡そは1月の時のようだったようです。演題は「残された時間は多くない~農と食といのちを守るために~」と題されての講演でした。
 鈴木氏の主張は、今回の講演に際して配布された「鈴木宣弘氏のメッセージ」に端的に表されていますので、それを紹介します。

 日本の食糧自給率は種や肥料の自給率の低さも考慮すると、38%どころか最悪10%あるかないか。海外からの物流が停止したら世界で最も餓死者が出るのが日本との試算もある。国際情勢は、お金を出せばいつでも食料が輸入できる時代の終わりを告げている。かたや、日本の農家の平均年齢は68.7歳。あと10年で日本の農業・農村の多くが崩壊しかねない。しかも農家は生産コスト高による赤字に苦しみ、廃業が加速している。これでは不測の事態に子ども達の命は守れない。私たちに残された時間は多くない。
 (中略)
 私達が子ども達の未来を守るには、消費者の行動が重要である。安いものにはわけがある。リスクのある輸入品ではなく、今こそ身近な地元の安全・安心な農産物を支えよう。
 地域の種を守り、生産から消費まで「運命共同体」として地域循環的に農と食を支える「ローカル自給圏」の構築を全国各地で急がねばならない。一つの核は学校給食の安全・安心な地場産農産物の公共調達を進めることである。農家と市民が一体化して耕筰放棄地を皆で分担して耕そう。
 それと同時に、国政では、①食料安全保障のベースになる農地10haあたりの基礎支払いを行い、それを、②コスト上昇や価格下落による経営の悪化を是正する支払いで補完し、さらに、③増産したコメや乳製品の政府買い上げを行い、備蓄積み况子区内外の援助に回す、といった政策実現に向けて国民の総力を結集するときである。

        
         ※ 数多い鈴木氏の著書の中の近著です。

 鈴木氏のお話を2度聴いて、鈴木氏の日本の食糧に対する危機感が相当に強いものであることを実感しました。
 鈴木氏の論には「根拠が希薄である」とか「データの読み方に誤りがある」という反論もあるようですが、少なくとも鈴木氏が前半で述べている日本の農業の現状に対する指摘には納得できるところが多いように感じます。
 今や我が国の食糧の大半は外国産に頼っている現状だということが良く分かます。その外国産の食糧、またはその種、肥料までも大半が外国産だという現状に対して鈴木氏が危機感を露にすることももっともだと思われます。

 ‟日本の農業の危機” このことは単に農業者だけの問題ではなく、消費者も含めて日本全体の食糧危機でもあるという鈴木氏の指摘を重く受け止め考えねばならないと思いました。 

介護施設の現役介護職員に聴く

2025-03-08 12:15:56 | 講演・講義・フォーラム等
 介護施設の介護職員はどのような業務を担当し、どのような思いで勤務しているのか?また、仕事に対するやりがいや大変さはどのようなことなのか?高齢者介護施設で7年間勤務している講師から本音を伺いたいと思ったのだが…。

 昨日(3月7日) 午後、さっぽろ自由学校「遊」において、講座「老いと向き合う」の第6回講座があり、テーマが「高齢者施設に6年間勤務して」と題する講座が開講されると知って、この回だけのスポット参加をすることにしました。
 というのも、これまでさまざまなタイプの介護施設を見学したり、施設の代表者のような方からお話を伺ったことはありましたが、現場で介護にあたっている方のお話を直接に聴いたことがなかったため興味を抱いたからです。

   

  講師が務める会社は、同一敷地内で「サービス付き高齢者向け住宅(サ・高・住)」と「小規模多機能型居宅介護」を運営していますが、講師の方はそのうちの「小規模多機能型居宅介護」に勤務する30代(と思われる)の若い方でした。
 
 「小規模多機能型居宅介護」とは、「通い」、「泊まり」、「訪問」の3つを提供している地域密着方のサービスで、利用者の家族の状況・要望によって柔軟にサービスを提供する施設である。とパンフレットでは謳っています。
 その施設で講師のA氏は、管理者やケアマネージャーなどの指導を受けながら、入所者に対する実際の介護を担当する職を6年間勤めているとのことでした。

   

 ところがA氏は人前で講義することに慣れていなく、自信がなかったからだろうか?自然に用意したペーパーを読むことに終始されました。それもご自分で用意したものではなく、施設が用意した「小規模多機能型居宅介護とは」とか「小規模多機能型居宅介護でのレクの仕事内容」
、あるいは上部機関かの通達文書、「コロナ陽性者感染対策マニュアル」といった文書を読み上げるだけだったのです。

 残念ながら、私が期待していた介護現場で入所者に実際に接し、介護をされている方々の生の声を聴きたいと思いは叶いませんでした。
 それでも介護職員が入所者に対し、食事・入浴・排泄などの補助、介助、あるいは夜間帯の見守り、体位変換など、絶えず入所者の方々のお世話、安否確認などで、気持ちの休まる間がないほど過酷な現場であることはよく理解ができました。

   

 我が国は今後ますます高齢化が進展し、介護を必要とする高齢者の増加が見込まれています。私もその一人かもしれません。そうするとA氏のような介護職の方々の必要数が増すことが当然必要となってきます。
 今回お聴きしたように過酷な介護現場を担当される方々がはたして必要数を確保できるのか?とても心配となってくるなぁ、との思いを拭えませんでした。

才能って凄いなぁ…武田双雲展

2025-03-07 10:22:24 | 作品展・展覧会等
 下世話な話ですが、書道家・武田双雲の作品に付けられた価格を見て驚いた。私のような庶民にはとてもとても手の届かない価格である。一点の価格が云十万円、云百万円の世界ですから…。いや~、才能って凄いものなんですねぇ~。

     

 昨日(3月6日)午後、札幌丸井今井デパートで開催中の「武田双雲展 挑戦~anew~」に足を運んでみました。
 書道に特別興味があるわけではありません。何にでも興味を示す私は、話題のイベントにはできるだけチェックしておきたいという、私の性癖に忠実に従ったというわけなのですが…。

 テーマにanewという言葉を配していますが、anewとは「改めて」とか、「新たに挑戦する」という意味があるようです。武田氏は、その意味について次のように語っています。
 「大人になると新しい事に挑戦することが少なくなってきます。心が固くなっていくような感覚。新鮮な心で日々あらゆることに挑戦していく。そんな覚悟を作品にこめています。観て下さったみなさんにこのワクワクが少しでもつたわりますように」と…。

 丸井今井の広い9階催事場には、武田氏の作品が約200点展示されていました。それらは、「金箔」から、「越前和紙」「青墨」「藍染和紙」など、さまざまな素材に毛筆で表現されたものでした。それは表現というよりは ‟描かれた” と言った方が相応しいかもしれません。私には書道の作品を観るというよりは、画を観ているような気持ちにさせられる展覧会とも思えたのです。

 そして何より驚いたのが、その作品の価格です。目測で縦50cm、横20cmくらいの書道紙に「世の中はおもいやりにあふれている」と書かれ、額装され作品が、なんと275,000円(税込み価格)の値札が付いていたのです。

        
          ※  この作品の価格が275,000円でした。

 それが「金箔」やら、「越前和紙」などを使用した作品になるともう7桁(1,000,000円)の価格です。そのうちの何点かをその価格と共に紹介します。
    
    ※ 「叶」と書かれた作品は1,650,000でした。

       
   ※ 「ありがとう appreciation」と書かれた作品は550,000円と表示されていました。
    
   金箔がほどこされた「愛  compassion」という作品は、4,455,000円の表示でした。

 高価な作品が数多く展示してあるからでしょうか?会場内には説明員を兼ねて関係者の姿も目立ちました。一人の方が私に盛んに説明してくれます。私が「こんな高価な作品を飾る方の住宅は立派なんでしょうね」と問いかけると、「いや、住宅などよりは会社の応接室などに飾る例が多いですね」と答えてくれました。また、「高級な老人ホームなとからの問い合わせも多いです」とのことでした。

 展示会場には当の武田双雲氏も顔を見せていて、観覧者と談笑していました。おそらく購入を考えている観覧者だったのでしょう。
 私は傍にも近寄れませんでしたが、観覧者から離れて私の傍を通った時に、思わず「身長はどれくらいですか?」と聞いてしまいました。それくらい武田氏の高身長が目立ったのです。すると武田氏は微笑みを湛えながら「85センチです」と答えてくれました。武田氏は1m85cmもの長身だったのです。

    
    ※ 後ろ向きの大きな男性が武田双雲氏です。その横の「夢」という作品は3月4日
に会場でのライブパフォーマンスで書き上げた作品だそうです。

 目の保養にはなりましたが、私など一般庶民からは縁遠い展覧会でした。

完全な空振り! 岩谷技研の気球展示

2025-03-06 11:45:58 | 作品展・展覧会等
 これほどまでの空振りを喰らうとは…。完全な私の独りよがりだった?? 期待をもって野幌に向かったのだが、あまりにも期待外れの展示に開いた口が塞がらないとはこうゆうことなのだろうか?

 3月4日(火)朝、私は桑園駅から10時26分発の岩見沢駅普通列車に乗り込みました。目的は野幌駅の近く「江別市情報図書館」で開催されているという「岩谷技研 OPEN UNIVERSE PROJECT 特別展示」を見学するためでした。
 この展示会をどうして知り得たかというと、ネット上で公開されている北海道新聞提供のイベント情報で知ったからでした。そこには展示会について、次のように紹介されていました。

 「ガス気球による成層圏の遊覧飛行を目指す江別市のスタートアップ企業「岩谷技研」の関連資料を集めた特別展示。岩谷技研が今春にも成層圏に達する初の商業遊覧飛行を実施するのに合わせ、江別市情報図書館が企画した。展示品は、岩谷技研が造った気球の3分の1模型のほか、これまで行った有人飛行実験の様子を撮った写真など。岩谷圭介社長から贈られた社長の著書もあり、貸し出しも行っている。」とありました。

       
  ※ 展示されていたパネルの中に、岩谷技研が初の宇宙遊覧フライトを行うことが告知されていました。

 この一文に私は大きな期待を抱きました。気球そのものに興味があるわけではありませんが、北海道発の若者がいまだかつてない大きな挑戦をしていることにとても興味がありました。
 実際の機器は?これまでの歩みは?事業化の確率は?等々、興味津々でした。それがある程度明らかになるのでは?との思いで野幌に向かいしまた。

    
    ※ 江別市情報図書館のエントランス及び外観です。

 午前10時前、目的の野幌駅に降り立ち、駅から徒歩10数分のところにある「江別市情報図書館」に向かいしまた。
 図書館は国道12号線沿いの奥まったところに、いかにも図書館といった風情で建っていました。入館して、図書の貸出などを行う受付のところに向かうと、その受付の頭上に大きな風船のようなものが貼り付けられていました。
 「えっ?これが展示なの?」と思い、受付の方に尋ねると「そうです」とのことだった。

       
       ※ 図書の受付のところに、気球の模型が展示されていました。
          (図書館職員の手作りとか…)

 そしてその傍にはモニターが据え付けられていて、実際に試験飛行した気球の様子や、乗務者が乗り込むキャビンの様子が映し出されていました。
 その他には、そこから少し離れたところに気球や宇宙関連の書籍が並べられてコーナーが設けられていました。関連展示はこれだけでした。

    
    ※ ちょっとした関連書籍のコーナー(手前)もありました。

 あまりにもあっさりとした展示に拍子抜けした私は、実際の気球の ‟3分の1” の模型というから、実際の大きさを知りたくて、「模型全体の高さがどれくらいか」を図書館の方にお聞きしたところ、「風船の部分は図書館の職員が手作りしたものなので参考にならない」と言われてしまいました。また、キャビンの模型も、「数日前までは3分の1の模型を展示していましたが、現在展示してあるものはそれよりかなり小さいものです」と言われてしまいました。

      
      ※ 実際に使用する二人乗りのキャビンの図です。左側が岩谷社長です。
       
 う~ん。これは完全な空振りだったことを悟らされた思いでした。
 私は特別室のようなところで先の期待したように、気球に乗って成層圏に達する商業遊覧飛行の全て(ex. 実際の機器は?これまでの歩みは?事業化の確率は?等々)を知ることができる展示だと思っていたのですが…。

    
    ※ モニターに映し出された飛行予想図です。

 まあ、私の勝手な思い込みだった…、ということなのですが、数あるイベントや講演・講座などではこういうこともあるということですねぇ…。
 それにしても岩谷技研の野心的な挑戦は注目大です。今後も岩谷技研の成功を願いつつ注目していきたいと思っています。



大人の味?マンドリン E「そよ風」

2025-03-05 14:33:13 | ステージ & エンターテイメント
 いわゆる大人のマンドリンアンサンブルといった趣きの演奏会だった。25名の奏者の顔ぶれを拝見したところ、初老の方が目立つ構成で音は正確に刻んでいる印象だったのですが、力強さにはやや欠けるかなぁ、というのが正直な印象だった…。

      

 3月2日(日)午後、白石区民センターホールにおいて「マンドリンアンサンブル そよ風」の演奏会が開催されたので、白石区まで遠征してマンドリンの音色を楽しみました。
 アンサンブルを指導・指揮する島崎洋氏は多彩に活動されている方のようです。自ら札幌アルカディア室内管弦楽団でチェロ奏者として活動する一方、市内外の5つものマンドリンや弦楽合奏団などを指導されている方だとプログラムで紹介されていました。
 そのような島田氏の指導を受けているだけあって、アンサンブルの紡ぎ出す音は正確に刻まれている、といった印象でした。

        
     ※ マンドリンアンサンブル「措よ風」を指導・指揮する島崎洋氏です。

 例によって演奏された曲目を紹介すると…
 〖第1部〗 「クラシック・マンドリンオリジナル・テレビドラマ番組テーマ曲」と題して
  ◇F.シューベルト/至福
  ◇A.カッペレティ/マンドリン賛歌「フローラ」
  ◇S.ラニエーリ/プレリュード
  ◇武藤理恵/Last Dance
  ◇さだまさし/「北の国から」のテーマ
  ◇さだまさし/Birthday
 〖第2部〗 「女性シンガーソングライター・卒業ソングメドレー特集」と題して
  ◇広瀬香美/ロマンスの神様
  ◇椎名林檎/おとなの掟
  ◇尾崎亜美/オリビアを聴きながら
  ◇松任谷由美/ユーミン・メドレー(「ひこうき雲」、「真夏の夜の夢」)
  ◇藤巻亮太ほか/卒業ソングメドレー Part 2 「3月9日」(レミオロメ
    ン)~YELL」(いきものがかり)~さくら(独唱)(森山直太朗)                                     
  ◇千葉和臣ほか/卒業ソングメドレー Part1(「贈る言葉」(海援隊)~
    「卒業」(斉藤由美)~「卒業写真」(荒井由実)~「卒業」(尾崎豊)~ 
    「翼をください」(赤い鳥)
[アンコール]◇小椋佳/愛燦燦

    
    ※ 演奏するマンドリンアンサンブル「そよ風」の皆さんです。

 演奏を聴いていて、私の中で特に印象に残ったのはS.ラニエールの「プレリュード」、広瀬香美の「ロマンスの神様」でした。また、さだまさしの「北の国から」のテーマ曲は、あのメロディーを聴かされただけでテレビの場面が蘇ってくる感じがしました。
 ただ前述したように、演奏陣全体が初老の方が多く、しかも第一マンドリン、第二マンドリン、マンドラは全員が女性ということもあってだろうか?力強さにはやや欠けるかなぁ、という印象でした。
 私がこれまで聴いてきた北大のチルコロ・マンドリニスティコ「アウロラ」や明大マンドリン倶楽部、月寒高校マンドリン部などは、いずれもが若い奏者たちだったこともあり、そのあたりの違いがあったようでした。

 しかし、生涯学習の一環(?)として取り組まれている「そよ風」の皆さんの真摯な演奏は、何の楽器も奏でることができない私からしたら、とても羨ましく感じました。
 「そよ風」の皆さんのますますのご活躍を願うばかりです。



講座 札幌の映画と演劇

2025-03-04 16:02:41 | 講演・講義・フォーラム等
 札幌市内には映画館が最盛期(1980年代末)には20館もあったという。さらには同じ1980年代、中央の影響を受け小劇場によるアングラ演劇も盛んに上演されたそうだ。その象徴が「駅裏8号倉庫」だったという。

     
 少し時間を置いてしまいましたが、2月27日(木)午後、北海道立文学館「札幌の映画と演劇 展示解説講座」なるものが開講され、受講してきました。
 北海道立文学館では現在、「札幌の映画と演劇~80年代を中心に~」という展示会が開催されているのですが、その展示解説を同館の浦島七那学芸員が解説するという講座でした。

 札幌の映画館に関する推移は、1952(昭和52)年にGHQの映画検閲が廃止されたことで映画産業が勢いを増したことに伴い、札幌においても映画館が急激にその数を増しました。多い時では1955(昭和30)年には一年間で10館の映画館が開館したそうです。
     

 しかし、映画のブームはテレビの登場によって長くは続かなかったようで、今回の講座で焦点をあてた1980年代がそのピークだったとのことです。
 ただ、大スクリーンでの映画が斜陽となる中、インディーズ系やアート系の作品を上映するミニシアターが一種のブームとなっていったそうです。
 札幌市内20館の中の一つ須貝ビル(最近まで存続していました)には、大スクリーンの他に10館ものミニシアターが集中していた時代もあったそうです。
 そうした流れを引き継いでいるのが、現在の「シアターキノ」のようです。事実、館主である中島洋氏は、その頃からミニシアターに携わってきた方だということです。
   

 現在の札幌市内の映画館はシアターキノを含めても全5館ですから、昔日の感があります。もっともシアターキノ以外はシネコン方式ですから、一概に比較はできませんが…。

 一方で、演劇シーンも1980年代は活発に活動を展開した時代だったようです。中央において通称「アングラ演劇」という実験的で前衛的な劇団が続々と誕生したそうです。
 「駅裏8号倉庫」、「スペース・アルテノ」、「札幌本多小劇場」、「琴似日食倉庫コンカリーニョ」、江別の「ドラマシアター・ども」等々…。(「琴似コンカリーニョ」、「ドラマシアター・ども」は、現在もその名を継いで現存していますね)
 その象徴的な場所となったのが「駅裏8号倉庫」だと言われています。

 「駅裏8号倉庫」は、劇団53荘が公演場所兼稽古場を探していたところ、拓殖倉庫所有の札幌軟石造り、45坪の倉庫が見つかり、そこを「駅裏8号倉庫」と命名して1981(昭和56)年にオープンしたそうです。しかし、その倉庫は翌年鉄道の高架化工事で撤去が決まっていたため、わずか一年で閉館の憂き目に遭ったそうです。しかし、メンバーは諦めずに近くにあった倉庫を借り「第2次駅裏8号倉庫」を1983年にオープンし、1986年まで活動したということです。
 「駅裏8号倉庫」は、演劇に限らず、映画上映、音楽ライブ、さらには詩の朗読、フリーマーケット、政治討論会などジャンルを超えて幅広い用途で使用され、80年代におけるサブカルチャーの中心的存在だったそうです。

 こうして聴いてみると、札幌の1980年代というのは、ミニシアターや小劇場が乱立し、混然一体となった状況だったのかもしれません。いわば資本のある大手ではない、誰もが手の届くところに映画や演劇というものがあって、そこに関わろうとする人たちのエネルギーに満ち満ちていた時代だったようです。
 
 ミニシアターの方は残念ながら「シアターキノ」が存在するだけですが、演劇の方は現在も「札幌演劇シーズン」という形で、その空気が脈々と受け継がれているようにも思います。
 いや~、札幌にも熱い時代があったのですねぇ~。
 なお、北海道立文学館で開催中の、「札幌の映画と演劇~80年代を中心に~」という展示会は3月23日まで常設展示室で展示されているそうです。興味のある方はぜひどうぞ!



認知症 それでいいのだ!

2025-03-03 15:27:42 | 講演・講義・フォーラム等
 近親者の中からもし‟認知症” と診断される方が出たら、多くの人はうろたえ、どう接してよいのか慌てふためくのではないだろうか?しかし、精神科医である講師の先生は、敢えて ‟それでいいのだ!” と言うのだが・・・。
      
 3月1日(土)午後、札幌市社会福祉総合センターにおいて「札幌西円山病院地域医療公開講座」が開講されので受講しました。
 西円山病院はコロナ前には、毎月のようにかでる2・7を会場に市民公開講座を開催していて、私はその都度受講していた講座でした。

 西円山病院の公開講座の特色は、病院の医師も講師を担当しますが、それ以上に看護婦とか、理学療法士、作業療法士といった医療スタッフの方々を積極的に講師として登用させている点にあります。
 私は西円山病院では、市民公開講座を良い意味で職員の研修の場として活用されていると見ていました。

 今回の講座内容は「認知症 それでいいのだ!」と題して、精神科医の山田幸恵医師と、認知症看護認定看護師の白川由美さんが講師を務めました。
 山田医師は、医師らしく認知症の種類や症状、あるいは薬などについて説明されましたが、私はこれまでも何度かこの種の講座を受講しているので、この部分のレポは割愛します。

       
       ※ 講義をされる山田医師です。

 山田医師は認知症の患者の特徴を次のように説明しました。
  ◇病院に行きたがらない。
  ◇薬を飲みたがらない。
  ◇デイサービスに行きたがらない。
  ◇ショートステイに行きたがらない。
  ◇施設に入りたがらない。
 こうした肉親の患者に対して、どう対処するのが良いかというと、「本人の意向に逆らっても、医療者の助言を受け入れて処置しても「それでいいのだ!」と強調された。
 もし、患者がどうしても肉親の助言を受け入れず、施設などへの入所を拒み、例え孤独死という事態になっても、それはそれで「それでいいのだ!」とした。
 介護の場面は人間関係の総決算であり、葛藤の全くない関係はないという。認めたくない、見たくない、情けない、不安だ、悲しい、寂しい、腹が立つ、疲れる…、そうした感情があっていいと自分に言ってあげる「それでいいのだ!」と…。
 ともかく、介護するあなたの気持ちを優先せること、「それでいいのだ!」と強調された。
 山田医師は、「老いや死の不安は誰もが通る道。少しでもご機嫌な今日一日をおくることだ」と述べ「それでいいのだ!」と結んだ。
 山田医師のお話は、なんだか目から鱗の思いでした。

       
       ※ 講義をされる白川看護師です。

 一方、白川看護師からは認知症患者への接し方のポイントについてアドバイスいただいた。
 そのポイントとは…
 ① まず見守る。
 ② 余裕をもって対応する。
 ③ 声をかけるときは一人で。
 ④ 後ろから声をかけない。
 ⑤ 相手に目線を合わせてやさしい口調で
 ⑥ おだやかに、はっきりした活舌で
 ⑦ 相手の言葉に耳を傾けてゆっくり対応する。
 以上のようなアドバイスをいただいた。

 受講した私は、今や介護する立場ではなく、将来もし自分自身が認知症を患った時に、どう介護されたいのか、そのことを我が子などに知ってもらいたいという思いの方が強い。
 そうしたことも白川看護師は意識されたのでしょうか?最後に家族向けのアドバイスをいただいた。それは「認知症になる前にできること」と題してパワーポイントで示されたので、その場面を添付することにします。

    

 西円山病院の公開講座は、数ある医療関係の公開講座の中でも市民目線に立った内容が多いように感じています。これからもできるかぎり受講していきたいと思っています。

映画 「いもうとの時間」 №392

2025-03-02 18:43:51 | 映画観賞・感想
 1961(昭和36)年、三重と奈良にまたがる集落・葛尾で凄惨な事件が起こった。村の懇親会で振る舞われたぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡するという、世にいう「名張毒ぶどう酒事件」である。犯人とされた奥西勝は無実を訴え続けるも死刑判決が下され、89歳で獄中死した。弟の無実を信じ、訴え続ける妹・美代子の物語(ドキュメンタリー)である。
      
       
 2月27日(木)夜、シアターキノにおいて上映された「いもうとの時間」を観ました。事件としては半世紀以上前の事件で、私もそれほど関心を抱いた事件ではなかったのですが、昨年9月に通称「袴田事件」と称される一家4人殺人事件の犯人として死刑判決を受けた袴田巌さんの無罪判決が話題を呼び、その陰に姉の袴田秀子さんの献身的な支えがあったからとされるを知り、その共通性に興味を覚えたからでした。
 ただ、やはりこの映画に対する関心は高いとは言えず、私が観た際の観客は私も含めて僅か5人だったのは、上映しているシアターキノとしては辛いところかもしれません。

      
     ※ 94歳となった岡美代子さんは腰が90度に折れ曲がりながらも弟の墓参りを欠かしません。  

 映画制作はドキュメンタリー映画の制作では名高い東海テレビです。東海テレビは、事件発生当時の貴重なフィルムも織り交ぜ、事件の経緯、そして長い裁判の行方を追っています。本作ができるまでに、東海テレビではこの事件関連のドキュメンタリー映画を「約束~名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」、「ふたりの死刑囚」、「眠る村」と続けて、本作が4作目だそうです。

 事件の当事者である奥西勝(当時35歳)は、逮捕当時に事件の関与は否認するものの、検察官の執拗な追求によって自白してしまい、有罪判決を受けた。しかし、客観的証拠に乏しかったことから、一審判決で無罪を勝ち取り保釈されました。しかし、二審において逆転判決となり一転して死刑判決が言い渡されたのでした。
 以来、無実を訴え続けるも、ことごとく司法から跳ね返され、奥西は89歳で獄中死してしまいました。
 再審請求を引き継いだ妹の岡美代子さんは、応援する弁護団と共に、新証拠を出し続けたのですが、再審の扉は開かれず、ついには10度目の再審請求も却下されてしまいました。

    
    ※ 奥西勝さんが弁護団に託した手紙の写しです。

 私は未知でしたが、再審請求ができるのは配偶者、または直系の親族及び兄弟姉妹にしか許されていないそうです。ということは、この「名張毒ぶどう酒事件」の場合、岡美代子さんしか再審請求の権利が与えられていないのです。その岡さんも今や94歳。残された時間はそう多くはありません。兄の無罪を信じ、長生きを誓いますが、その「いもうとの時間」はいつまで続くのか…。 
 老いてなお、気丈に司法に立ち向かおうとしている岡さんの姿がいつまでも瞼の裏に残りました。

       

 映画の中には、無罪判決を勝ち取った袴田巌さんと、姉のひで子さんが度々登場します。再審請求が叶い、無罪を勝ち取った袴田姉弟と、幾度も再審請求が却下され続ける岡美代子さんが対照的に描かれています。

 司法が再審請求に対して、どのようなことを根拠をもとに再審の扉を開かったのか、その詳細については私は分かりません。
 しかし、中には相当に有力な新証拠もあったようです。せめて再審の場で審理をし直すという道はなかったのだろうか?という疑問が私の中には残った映画でした…。

歩く、歩く、歩く、…

2025-03-01 11:19:26 | JRヘルシーウォーキング
 歩く、歩く、歩く、 本当はタイトルをこのように表記したかったのですが、私の技量ではできませんでした…。私は今 ‟歩く” ことに少しこだわっています。それは自らの老いに対する抗いのようなものなのですが…。

       

 先日、我が家にレターパックが届きました。
 「何だろう?」と裏書を見てみると、「JRヘルシーウォーキング事務局」から届けられたものでした。内容物を見てみると、「歩くんネックストラップ」「JRヘルシーウォーキングタオル」が同封されていました。
 これは、昨年私が「JRヘルシーウォーキング」に取り組んだ結果、30ポイントを獲得したことによるJR北海道からのプレゼントが届いたのです。

 昨年、私はJRヘルシーウォーキング事務局が設定したウォーキングコース23コースを完歩しました。そして34ポイントを獲得したのです。
 完歩したコース数とポイント数が一致しないのは、札幌から遠距離のコースは2ポイント付与してくれるのです。(どう付与するかはJRヘルシーウォーキング事務局の裁量のようです。なお、盛岡市を歩いたときはは5ポイントが付与されました)
 結果、私は30ポイント以上獲得したためのプレゼントだったのです。
 プレゼントそのものはささやかなものなのですが、けっこう励みにはなるものです。

    
    ※ プレゼントとして届いた「歩くんネックストラップ」です。

 さて、私は昨年この「JRヘルシーウォーキング」に取り組んだことや、札幌の周囲をグルっと一周する「さっぽろラウンドウォーク」に取り組んだこともあって、確か11月頃にスマホの歩数計を確かめたところ、一日平均の歩数が一万歩を超えていたことに気付いたのです。そこでせっかくだから年間平均歩数一万歩を確保しようと12月などは意識的に歩いたものでした。
 その結果、昨年の一日の平均歩数は10,141歩とかろうじて一万歩を超えたことを確認し、ある意味での充足感を感じたのです。(その前の年は確か6,800歩前後でした)

    
    ※ 同じくプレゼントされた「JRヘルシーウォーキングタオル」です。

 さあ、そうすると私の中では「今年も!」との思いが強くなりました。
 今年に入ってからも意識的に‟歩く”ことを心がけています。とは云っても、あるコースを定めて、そのコースを毎日ウォーキングをするという形ではありません。
 講座やイベントに参加する際の往復を意図的に‟歩く”ことを心がけているのです。
 例えば札幌の中心街まで私のところから地下鉄で2駅ほどですが、最近は地下鉄を使ったことがほとんどありません。(もっとも遠方へ出かけるときは地下鉄やバスも使っていますよ)
 さらには、札幌コンサートホールKitaraまでは片道3キロ少々ありますが、ここもできるだけ徒歩で向かうようにしています。私の足で一万歩というと、距離にして約7キロですから、例えKitaraを往復しても足りません。ですから、時には帰路に何か用途を見つけて回り道をして帰ることもあります。
 こうして今年も今のところ、昨日現在で一日平均歩数が10,942歩を示しています。

 最近の情報では、健康維持に必要な歩数は6,000歩とか、8,000歩とか諸説がありますが、過日ブログを通して交流させていただいている夢逢人さん(ブログ名「夢逢人かりそめ草紙」)のブログで心強い一文を見させていただきました。
 その一文とは整形外科医・末梢神経外科医の萩原祐介先生の言葉として「1日に8000歩~12000歩歩く人は死亡率が低い」という一文です。 


※ 夢逢人さんが投稿された萩原医師の提示した理想の歩数を無断転載させてもらいました。

 私自身は‟健康”ということをことさら意識しているわけではなく、前述したように自らの老いに抗いたいという思いの方が強いように思います。数年前まで楽しんでいた低山登山も今は辛さが先に立つようになり、せめてウォーキングくらいはという思いなのです。
 今年もJRヘルシーウォーキングに参加したい、という思いで意識的に‟歩く”ことを心がけていきたいなぁ、と思って日々を過ごしたいものと思っています。
 現在、私は78歳と6カ月、老いに抗いながら、 歩く、歩く、歩く、

Kotoni Classic vol.35

2025-02-27 19:47:01 | ステージ & エンターテイメント
 それぞれがキャリア十分の4人が紡ぎ出す音は安定していて、聴いていて耳に心地良いものでした。西区はこのような上質のコンサートを定期的に無料で提供してくれているのが羨ましく思うのですが…。

     

 一昨日(2月26日・水)午後、西区役所地域振興課が主催する「Kotoni Classic」と題するクラシックコンサートが西区民センターで開催され参加しました。
 出演は「アンサンブル・クレセント」という4人からなる弦楽四重奏のコンサートでした。
 出演者名は、
  ◇第一ヴァイオリン   森本 千絵さん
  ◇第二ヴァイオリン   森 由紀子さん
  ◇ヴィオラ       猿渡美穂子さん
  ◇チェロ        山田 慶一さん

という結成3年目となる4人の方々でした。4人はそろそろヴェテランの域に差し掛かるキャリア十分の方々でした。

   
   ※ 演奏前のステージの様子です。

 例によって演奏された曲目を紹介すると、(作曲者名/曲名の順)
 ◇E.エルガー/愛の挨拶
 ◇作詞、作曲者不明(文部省唱歌)/冬景色
 ◇A.ヴィバルディ/四季より「冬」
 ◇ヒュート・パリ―/弦楽四重奏曲第1番 ト短調から 第1楽章
 ◇F.クライスラー/愛の喜び
 ◇E.サティ/ジュ・トゥ・ヴ
 ◇J.シュトラウス2世/美しき青きドナウ
 ◇P.チャイコフスキー/弦楽四重奏曲第1番 ニ長調から 第1楽章
[アンコール]
 ◇P.チャイコフスキー/弦楽四重奏曲第1番 ニ長調から 第2楽章(アンダンテ・カンタビーレ)

 ラインナップを眺めて、この種の初心者向けのコンサートはわりあい耳馴染みの曲を取り上げてくれるのが私には嬉しいかぎりです。演奏された半数以上の曲は私にとっては馴染みがあり、心楽しく聴かせてもらいました。

 一方で、アンサンブル・クレセントさんたちの思いを込めた曲目も挿入されていました。そのような一曲がヒュート・パリ―の「弦楽四重奏曲第1番 ト短調」でした。まず作曲したヒュート・パリ―という方がクラシック界ではそれほど高名ではない方のようです。ウェブ上で調べても彼の名を見出すことはできませんでした。
 しかし、クレセントさんたちは密かに彼の音楽を評価し、コンサートで取り上げ演奏しているようです。
 またコンサートの最後に持ってきたチャイコフスキーの「弦楽四重奏曲第1番 ニ長調」も彼らにとって思い入れのある曲のようです。アンコールでも取り上げたほどですから…。

 私たちクラシック初心者にとっても、そして演奏されたクレセントの皆さんにとっても充足感を感ずることができる巧みなラインナップでした。

    
※ 例によってコンサート中の写真撮影はNGですが、コンサート終了後の挨拶の場面は許されると考えて一枚撮らせていただきました。

 ところでリード文でも触れましたが、西区ではこうした催しが多いように感じています。Kotani Classicfは今回で35回目の開催というのですから羨ましいかぎりです。また、東区でも定期的に区民向けのコンサートが実施されているようですが、中央区ではこうした定期的なコンサートが見当たりません。それぞれの区の考え方もあるとは思いますが、できればこうした催しを私が住む中央区でも計画していただければなぁ、と願うのですが…。