映画「卒業」といえば、ダスティン・ホフマンが演ずるベンジャミンが、結婚式が行われている教会の外から「エレーン!」と叫び、エレンを連れ出すシーンが鮮烈な記憶として残る映画である。また、当時人気絶頂のデュオ サイモン&ガーファンクルが紡ぎ出す名曲の数々が挿入されていたことも記憶に残る映画だった。
※ なお、掲載した写真は全てウェブ上から拝借したものである。
2月24日(水)、 NHK・BSプレミアムで映画「卒業」(1967年制作)が放送された。それを録画しておいたものを昨夜観た。
1967年というと、私の20歳前である。私の中で「卒業」は、サイモン&ガーファンクル(S&G)の甘いメロディーが流れるラブロマンスとして記憶に残っていた。ところが、その記憶は大違い。ドロドロとした愛憎にまみれた映画だと私には映った。ミセス・ロビンソンなるご婦人が、人生の選択に迷うダスティン・ホフマン演ずるベンジャミンを大いに惑わし、誘惑するのである。そして、そのミセス・ロビンソンの娘エレンにベンジャミンは恋してしまうというストーリーなのだ。
※ 教会の外からガラス叩きながら「エレーン!」と叫ぶベンジャミンのシーンです。
※ その後、エレンを連れ出して二人で逃げるシーンです。
当時のアメリカで、この映画は大ヒットしたという。アメリカでヒットすれば、日本はそれに大いに影響をうける世相だから国内でも大いに受けたということなのだろう。アメリカでヒットしたということは映画の内容がアメリカ国内では「あり得るかもしれない」ストーリーとして受け入れられたということなのだろうが、日本国内で制作された映画だとしたら果たして私たちは受け入れることができただろうか?と疑問に思った映画でもあった。
※ ミセス・ロビンソンがベンジャミンを誘惑するシーンとして象徴的に使用されたカットです。
それはともかくとしても、当時の私はS&Gのデュオに夢中だった。彼らの「サウンド・オブ・サイレンス」で幕が開くこの映画は、それ以外にも彼らの曲「スカボローフェア」、「ミセス・ロビンソン」、「4月になれば彼女は」といった名曲が次々と流されるという贅沢な映画だった。
そのこととはまったく別な意味で、私は主役のダスティン・ホフマンに注目した。彼は実質的にはこの映画がデビュー作とされる。彼は身長167cmと大変小柄である。見栄えが重視される映画俳優としては大きな弱点とも思われる。この映画においてもラブロマンスを演ずる男優としてはやや不釣り合いに思われる場面もあったように思う。しかし、その後の彼の活躍を見れば、見事にその弱点を克服して大俳優となって今に至っている。ということは、ハリウッド映画界において彼の演技力、存在感が素晴らしいことの裏返しとも受け取れる。
半世紀以上前の映画「卒業」を懐かしく見入った私だった…。