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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

北東アジアシンポジウム Part Ⅰ

2022-04-06 15:43:16 | 講演・講義・フォーラム等

 シンポジウムのテーマは「米中対立と北東アジアへの影響~日本の外交政策を考える~」というものだったが、ロシアのウクライナ侵攻というホットな話題も加味されたため非常に興味深かった。二日間にわたってスピーカーを務めたお二人の知識人のお話を振り返ってみる。

 私にしては珍しく少々お堅い問題についてのレポを試みてみたい。

 「北海道国際交流・協力総合センター(HIECC)」主催の「北海道で考える北東アジア国際シンポジウム」が3月17日にオンラインで開催された。私は受講を申し込んだのだが、上手くアクセスできず受講することができなかった。ところが私と同じような方が多かったようだ。主催者の方で当日のシンポジウムの様子をYoutubeで配信してくれると連絡があった。そこで3月4日に改めてYoutubeでお二人のお話をうかがうことができた。

 その二人とは、お一人がJETRO(日本貿易振興機構)のアジア経済研究所の主任研究員の松本はる香氏、もうお一人は慶応大学総合政策学部教授の中山俊宏氏である。

 Part Ⅰでは松本はる香氏が「米中対立と習近平外交」と題して、主として中国側から見た米中対立について中国問題の専門家らしく多角的に論じた内容についてレポしてみる。

      

      ※ 松本はる香氏は帯広市出身ということで北海道には親しみがあると冒頭話されていた。

 松本氏のお話を短くまとめることは私にとっては困難だが、お話の最後に紹介してくれた言葉が印象的だった。その言葉とは、2018年に中国の党中央指導部が「二十一字方針」という対米方針を発表したそうだ。その「二十一字方針」とは「対抗せず、冷戦せず、開放を継続し、国家の核心的利益は譲歩しない」という意味の方針を中国語で二十一字で表したものだそうである。習近平指導部の近年の外交を眺めてみると、見事にこの言葉が反映されているような気がしてくる。2021年には時の駐米中国大使が中米関係について「我々は準備のない戦いはせず、勝つ見込みのない戦いはせず、意地の張った争いはせず、消耗戦はしない」と述べているという。中国外交の用心深さと強(したた)かさが見えてくる思いである。つまり覇権争いに名乗りを上げつつも、大国アメリカと今すぐ争うつもりはない、といいつつも執拗にその座を虎視眈々と狙っているということだろうか?

 その姿勢の一端がコロナ対策をめぐる米中間の違いに現れていると松本氏は指摘する。米中の2022年3月現在における感染者数、死者数の両国の違いであるが、中国の感染者数663,700人、死者7,505人に対して、アメリカは感染者数79,406,602人、死者963,819人とアメリカは中国に比べて二ケタ以上も上回る感染者、死者を出している。こうしたアメリカの不手際を突き、中国は巧みに国際的な影響力の拡大を試み、積極的な医療支援などによって「パンデミック対応におけるグローバルリーダー」として諸外国への影響力の増大を試みているという。

 一方で習近平は国内的には、党総書記国家主席党中央軍事委員会主席と枢要な地位を独占し「一強体制」を固め、長期政権の土台を着実に築いている現状にある。

 中国ウォッチャーの松本氏から見ると、前述したように中国は用心深く、しかし強かにアメリカにとって代わって世界の覇権を握ろうとする意欲を隠していない、ということのよううである。近い将来に生起すると言われている台湾併合問題も含めて、隣国でもある私たち日本人は中国の動静から目を離すことができないと改めて教示された思いである。

 松本氏の思いを十分に汲んだレポとはなり得ていないが、大変興味深いお話だった。

※ 明日中山氏のお話の内容についてレポします。